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名前のない感情を綴る。心の底の、さわり心地。

人間の感情というものが、単純明快だったなら表現というものは生まれなかったのかもしれない。
きれいとか汚いとか、うれしいとか悲しいとか。
そういうことじゃないから、いつも胸が詰まるような喉につっかえるような、目を細めただけで笑ってるようにも泣いてるようにも見えるような。
そういうものになってしまうんだろうな。

この短編集をひとことでいうとそんな感じだと思います。



◆作品概要

「なんとなくでも、なんとか生きてるわたしたち」2020年発行 A6/本編34p

【ざっくり紹介】
願い事なんて、意外にないものだと私は思う。
いっぱいありそうで、実はほとんどないもの。 
 
早朝の境内。ファーストフード店で夜を明かした少年と少女。少女は気楽で虚ろな今を思う。(before six o'clock)
 
甘いカプチーノが僕のひび割れを埋めていく。息苦しいくらいに。
 就職活動中の僕と、就職活動も就職もしないで遊ぶ彼。僕の努力は、いつ報われる?(春より先に、さようなら)
  
グッピーはさ。ちょっとトラウマなんだよね。
知ってる? 共食いするんだよ。
 大学構内の喫煙所の僕と彼女。春にいた、たくさんの知り合いたちにはいつの間にか会わなくなっている。名前も曖昧、希薄な僕たち。(オレンジ色、誰そ彼)
 
これは、私にとってありえた家庭だろうか。
 料理人の派遣業を営む主人公。毎年クリスマスの最後に訪れるのは、元父親の新しい家庭。娘は今年、私が父と別れた時の年齢になる。(クリスマスの終わりの家)


◆これってどんな本?



うまく言葉にできないことや、言葉にして「だからどう」がないことって、人とは話せない。共有できない。

そういうことが時々、さみしいような気もするし、どうしようもないんだよなぁって見守っている自分もいたりして。

教室の片隅で、レースのカーテン越しに教室の風景を覗き見ているような。

いつかの自分に浮かんだ、そういう感覚を思い出すような本になっているんじゃないかなと思います。

34pで、ぽつりぽつりと話すような雰囲気の短編群。
人によっては、とんでもなく刺さる一冊。

うれしい&プレッシャー・・・!


◆恋愛感情のない男女関係が好き


正直な話、私は恋愛感情がよくわからないのです・・・。
相手を大事に思ったりいっしょにいたいと思う愛情はわかるけど。

そのせいか、「好き好き!」って恋愛よりも「落ち着く」男女関係のほうがしっくりくるんです。
恋愛小説を読んでいる時も「どうして恋に落ちるんだろう???」って疑問に思ったりするし。
すでに恋に落ちている恋愛小説はともかく、落ちるところから始まる恋愛小説は苦労します。「ああこの人は恋をしているのね」って、どこか冷めた気持ちで読んでしまう。

この短編集には、男の子と女の子がでてくる話がふたつ収録されています。
私は彼らが恋に落ちるかどうか、さっぱり見当がつきません。
「今はなんとなく居心地のいい距離感にある人たち」のなかに、お互いが入っている状態。
ある意味ユートピア。
だけど、ユートピアと言ってしまうには、いささか関係が希薄すぎる。

恋愛でないにしても「ちょうどいいひとたち」のひとりじゃなくて、お互いが特別であるってことはやっぱり、幸せには必要なんだろうなぁ。。。

◆おわりに


こちらも残部少数のタイトルになります。
2024年は、文学フリマ岩手に持っていこうかなぁと思っています。
名刺代わりの一冊として増刷するのもいいけど、今のところは予定なしです。

入手ご希望の場合は
BOOTHにて。通販価格250円です。
※架空ストアさん委託分は終売になりました。

どうぞよしなに~。

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