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待望のゼロゴ登場!芯が折れないオレンズネロ0.5の影には"心オレンズな男たち"がいた


折れない心。

なんて素敵な響きでしょう。
そこからイメージされるのは、確固たる意志をもって、襲いくるトラブルもあの手この手ではねのけたり、軽やかにいなしたりしながら、目的を成し遂げてしまうカッコイイ人間。あこがれます、あこがれすぎます、なりたすぎます。

でも、現実はなかなかうまくいきませんね、折れたり、凹んだりの毎日。でも、でもね、そんな私でも今すぐ手にできる「折れない」があるんですよ。それは、折れない芯・・・のシャープペン「オレンズネロ」

すみません。前置きが長くなりました。シャー研部員の藤村です。本日10月8日。シャープペン好きにはワクワクが止まらない日なんで許してください。だって、ぺんてるのシャープペンのフラッグシップ「オレンズネロ」シリーズに、ついに0.5mmタイプが仲間入りする日なんです!

画像_20200714_orenznero05_PP3005_製品チラシ_A4両面_olのコピー

芯の折れないオレンズシステム×自動芯出し機構で、
「ワンノックでずーーーーーーっとサラサラかける」を実現した、
「オレンズネロ」に待望の0.5mmサイズが登場する日なんです!!!!

先行のオレンズネロ0.2、オレンズネロ0.3の発売から2年たって私たちの手に飛び込んでくるオレンズネロ0.5。「え、ついに0.5が出るの!」とテンションがあがったオレンズネロオーナーのみなさまにも、逆に「・・・オレンズネロってなに?」そう思ったみなさまどちらにも知ってほしい。使ってほしい。

そんな思いで、オレンズネロ0.5の推しポイントや開発秘話を、オレンズネロ0.5開発チームから、開発部の若井さん、安孫子さん、マーケティング部の水口さんにうかがいました。


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若井さん(左)オレンズネロ0.5の全体的な設計・開発を担った開発チームの責任者 安孫子さん(右)オレンズネロの「連続筆記(自動芯出し)」をかなえる心臓部・ボールチャック機構のエキスパート


シャー研LETTER

水口さん ぺんてるマーケティング部 シャープペン担当

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ーーオレンズネロ0.2、オレンズネロ0.3の発売から2年の月日が流れました。オレンズネロ0.5発売の経緯を教えてください。

水口:ありがたいことにオレンズネロシリーズは非常に好評を得ました。芯が折れない、ワンノックで書き続けられる利便性に加えて、0.2mm、0.3mmという細かい線が新鮮でマニア心をくすぐる一方、シャープペンのもっとも身近な芯径である0.5mmを待ち望むユーザーさんは非常に多かったんですね。その声にお応えする形で、この度晴れて0.5mmの登場となりました。

【参考資料】orenznero説明スライドのコピー

差し替え依頼のコピー

オレンズネロの歴史〜超ざっくりふりかえり〜              
●2014年 芯が折れない画期的機構(オレンズシステム)を搭載したシャーペン「オレンズシリーズ」発売
●2017年 オレンズシステムにくわえて自動芯出し機構を搭載した「オレンズネロ0.2」「オレンズネロ0.3」発売
●2020年10月8日 「オレンズネロ0.5」新発売! (←今回はここのお話!)


――さっそくですがオレンズネロ0.5の一番の魅力を教えてください。

水口:芯径0.5mm“なのに” 書き味が良い!これにつきます。この“なのに”がカギなんですよ。


――そんなにすごいことなんですか?

水口:はい。芯径0.2、0.3と発売してきたオレンズネロは、繰り返しになりますがノック1回で芯が出つづけてなめらかに書き続けられることが大きな特徴でした。しかし芯径が0.5mmと太くなると、「なめらかさ」がどうしても損なわれてしまう側面があり、オレンズネロの持ち味との両立がとにかく難しいんです。「0.5“なのに”なめらか」を実現するまでには、紆余曲折というか、いくつもの壁が…。そのあたり実際に苦労された開発担当のふたりに話してもらいましょう。


取材日はオレンズネロ0.5発売の直前も直前。製作現場につきっきり、超多忙のおふたりは、多忙の合間をぬってZOOMでの遠隔登場です。


ーーよろしくお願いします!若井さんは、なんと入社5年目。フラッグシップシャープペン開発の担当者として想起されるイメージより、ずいぶんお若いですね。いっぽう安孫子さんはベテランとお見受けしますが、世代のかなり異なるおふたりが、オレンズネロ0.5発売という重大ミッションのもとタッグを組まれたのですね。

安孫子:実は私はすでに定年退職しておりまして、私がよく知る約40年前に開発された技術がオレンズネロには搭載されているものですから、サポートの形でチーム参加しました。

水口:安孫子さんはぺんてる技術畑のレジェンド。0.2、0.3でも開発を担当いただきました。安孫子さんが40年をかけて追い求めた、ボールチャック機構の技術があって初めてオレンズネロが世に登場できたんですよ。

若井:そうなんです。大先輩の胸を借りて「ゼロゴ」の開発にあたりました。


ーー「0.5=ゼロゴ」っていうんですね。カッコ良さが増します。ゼロゴの新登場は、時代を超えて受け継がれた技術と若き開発者が出会ったというわけですね、ワクワクします!



︎ミッションはガリガリの軽減。プレッシャーとたたかう若手開発者のミリ単位の試行錯誤が実を結んだ「先端パイプ」


ーー今回のゼロゴとオレンズネロ0.2・0.3という先行モデルとの違いはどこにあるのですか?

若井:ポイントは大きく3つ。先端パイプの改良、先端スプリングの軽量化、ボールチャック構造の変更です。


ーーうぅ、なじみのない言葉ばかり…。

若井:そうですよね。まずオレンズネロの特徴である自動で芯が出続けるメカニズムを簡単に説明します。

【参考資料】orenznero説明スライド(ドラッグされました)のコピー


①筆圧がかかった状態では、ボールチャックが芯を掴み芯が保持される
②筆記により芯が磨耗すると先端パイプも後退する。
③紙面から離すと、先端パイプは先端スプリングによって前進し、元の位置に戻る。この時、戻り止めで保持された芯も一緒に引き出される。


この動作の繰り返しによって自動で芯が出続け、ワンノックで芯がなくなるまでの連続筆記ができるんです。ポイントとなる部位が、先端パイプ、先端スプリング、ボールチャックです。


ーー「0.5mm“なのに”なめらかな書き心地」が推し。ということは、本来はゼロゴだとなめらかな書き心地が難しいということですか? 


若井:はい、オレンズネロ0.5の一番の課題でした。先の図にある先端パイプは、先行のオレンズネロ0.2・0.3では「ステンパイプ(ストレートな形状のパイプ)」を採用していますが芯径を0.5mmにすると当然ステンパイプはそれよりも太いものを使うことになります。通常のシャープペンだと問題ないのですが、オレンズネロは常にパイプが芯を保護しながら書く仕組み=芯がほとんど出ない構造が特徴です。つまり通常のシャープペンより芯が出ている部分がぐーーんと少ないので、従来の太さ0.9mmのステンパイプで筆記すると紙面にパイプがあたって「ガリガリ」してしまうんです。接触面の摩擦を減らすために角をR状の曲線に研磨してなだらかにしようとしても、0.9mm ですとそう角度をつけられずにどうしてもガリガリ、ガリガリ…。


ーーなめらかな書き心地から離れてしまうわけですね。

若井:「ガリガリ解消」は重要なミッションでした。そのため、「砲弾タイプ」という先細りしている砲弾形状のパイプでいこう、と。一般的なボールペンのペン先を思い浮かべてください、あの形です。


ーーたしかに接触面がなめらかになり摩擦が軽減されそうですね。

若井:はい。当初、砲弾タイプの採用という解決は正しく思えました。ただ、ただですね、別の問題が…。


ーー問題!?

若井:「カタチ」です。先行している他のオレンズネロはすっと直線的なペン先なのに、こちらは砲弾タイプで、造形が大きく違ってしまいます。さらにペン先が太くなるので文字の視認性が落ちてしまうんですね。シャープペンのフラッグシップ・オレンズネロシリーズなのに、これでいいのか?とモヤモヤっとしたものが。 

ーー安易な解決策で、統一感を欠いてもいいのか、と。オレンズネロシリーズのプライド問題でもあるわけですね。

若井:なんといってもフラッグシップ。正直、プレッシャーは半端じゃありません。妥協したくないのが本音で、やはり開発者としては従来のステンパイプでシリーズを揃えたいわけです。しかしステンパイプにすればガリガリが出てくる…。
色々と検討したのですが、「やはりまっすぐでいこう!」と決めました。


ーープライドの勝利! 

若井:はい。まっすぐでいくために、ステンパイプの外径を太くしようと考えました。太くすると角のRが大きくとれるので紙面との摩擦がやわらぎ、なめらかに書けるわけです。ただ、それが簡単にできるならもともと砲弾タイプを検討したりしないわけで、当初からパイプを太くする策をとれなかったのには理由がありまして。

ーーやはり問題が!?

若井:パイプを太くして角のRの角度をなめらかにする=加工技術開発が必要なのです。通常の0.5mmシャープペンは0.9mmのステンパイプを使用してきたので、それ以上に太くした場合の加工技術蓄積がなかったのです。しかし、今回をいい機会にして、いっそR研磨技術の向上にも取り組もうと決意したんです

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そのあとは、ここではお話しできない企業秘密を積み重ねまして(笑)、まず通常より0.3mm太い1.2mmのステンパイプで試作し、なんとか成型できるまでになって。さらに0.1mmだけ太い1.0mmのステンパイプにも取り組んでいったのです。最終的には、数字はこれまた企業秘密ですが、1.0mmのステンパイプで砲弾タイプと遜色のないRの角度を研磨するまでになったのです。

ーーおおおおお、技術革新! 

若井:がんばりました(笑)。結果として通常のステンパイプより太さわずか0.1mmUPだけのすっきりとした造形が完成でき、ガリガリ感も解消。なんとも感無量でした。


“芯が出続ける”ヒミツ「ボールチャック」。そこには、構造&若手開発者を同時にアップデートしたレジェンドのチカラが!


ーー先ほどから若井さんの話を聞く安孫子さんの表情がとてもうれしそうですね。慈愛が満ちているというか、親のまなざしというか。

若井:実は、安孫子さんは僕にとって、オレンズネロの先生なんです。先行モデルのオレンズネロ0.2、オレンズネロ0.3が開発されている頃は新入社員の身で、携わっていなかったので。それでもオレンズネロの革新性は新米開発者だった僕にも明らかでした、細いボディに驚くような高度な技術が凝縮していますから。その仕組みのキモとなるのが安孫子さんが担当されたパーツで、おこがましいですが「本当にすごいな」と。

安孫子:ありがとう(笑)。

水口:自動芯出しを特徴とするオレンズネロ0.2、0.3を製造できたのは「ボールチャック機構」という技術があってこそですが、安孫子さんはこのボールチャック機構の技術を数十年も追い続けていまして、先行のオレンズネロ0.2・0.3では2年もの時間をかけて開発を成功させたレジェンドです。今回のゼロゴ開発でも、定年退職されていた安孫子さんにお願いしてチームに入ってもらった次第です。

若井:今回ゼロゴ開発の責任者として白羽の矢が立って、実はすごく緊張を感じていたんです。安孫子さんが構造や仕組み、成り立ち、構造をイチから教えてくれ、当初は机に向かってまさに教室。
そこで最初に言われたのが、「同じ出すなら、他にない、イイものを出そう」という言葉で。

安孫子:製品を開発する時に、開発者自身がやっぱり「ワクワク、ドキドキ」する製品じゃないといけないとずっと思っていまして。自分の胸がときめくもの、自分がほしいと思うものを作ってほしいな、と。

若井:開発がうまくいかずに気持ちが折れそうになるたびに、安孫子さんの言葉は支えとなりました。

ーーフラッグシップの開発をまかされてのハラハラが、ワクワク、ドキドキに変わっていく…素敵です。そして安孫子さんの研究成果が「オレンズネロのボールチャック機構」なんですね。

安孫子:はい、自動芯出しは「ボールチャック」という機構があって初めて可能になるものです。シャープペンの芯出しは、製品内部で芯を保持して、固定する役割を果たす「チャック」というパーツがポイント。「3分割チャック機構」が一般的でして、ノックをしないと芯が前進しない仕組みですが、一方、ボールチャック機構はチャック外周面の溝とボールで構成していまして、まったく別の構造なんですね。芯の後退は制御し、芯の前進は許容するという特殊な機構で、これをオレンズネロには搭載しています。

そもそもこの特殊機構は昔からぺんてるにあった技術です。

「テクノマティック0.5(82年発売)」

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「テクノクリック(83年発売)」

【参考資料】orenznero説明スライド(ドラッグされました) 3のコピー

「プロッターシャープ(85年発売)」/自動製図機用シャープペン

【参考資料】orenznero説明スライド(ドラッグされました) 4のコピー

「QX 0.5(90年発売)」

【参考資料】orenznero説明スライド(ドラッグされました) 6のコピー

これらにも搭載していました。当時、若手開発者だった私はその開発に1980年頃から関わっていまして、オレンズネロシリーズの開発にお声がかかったというわけです。

ーー当時、そのボールチャック技術が搭載されたシャーペンは0.5mmですか? 

安孫子:そうです。ですので、ぺんてるの歴史で考えますと、まず0.5mmのボールチャック機構の技術があり、それをより細い芯で対応できるよう研究・改良して先行のオレンズネロ0.2、0.3に搭載。そして今回あらためて0.5にも搭載という流れです。

ーーまず0.5の自動芯出し技術があって、0.2・0.3に応用する研究をおこなって、今回あらためて0.5に再搭載したと。40年前の技術をそのまま流用できたのですか?

安孫子:いえいえ。もちろん継承する部分もありますが、チャックの芯を噛む歯型が非常に重要でして、当時とはずいぶん変わっています。社外秘なので詳しくは申し上げられないのですが、今回は先行のオレンズネロ0.2・0.3とも、40年前の0.5mmシャープペンとも異なる機構を開発したのです。


ーー復活して、さらに進化させる。ベテランになっても、常に革新へのチャレンジを怠らない。さすがレジェンド!


荷重の微細な差が書き心地に差をつける「先端スプリングの荷重」

ーー他に、「0.5mmなのに書き味が良い」をかなえた秘密はあるんですか?

若井:先端スプリングの荷重です。先端スプリングというのは、先端パイプを押し出すパーツですが、この荷重が意外に筆記感に影響をおよぼします。オレンズネロ0.2のものですが「ボールチャック機構」の動画をみてください。

この動画の黄緑部分が「先端スプリング」です。具体的な数字は申しあげられないんですが、ここの荷重を、書き味をよくするために数グラム(1ケタ)単位で調整しています。

ーー数グラム! それが書き味に関係するんですか?

若井:そうです。スプリングが張ることでパイプが前に出るので、スプリングが強い(=重い)と紙面との抵抗が大きくなるのです。まさか数グラムでと思われるでしょうが、書いてみると差が出るので、とにかく書き味をよくするために微細な調整を重ねました。

カギは「国会の年日」!? 使って、書いて、確認しまくる書き味の良さ。


ーーそもそも書き味の良さって、どうやって判定するのですか?

若井:紙面との摩擦具合を数値化した「筆記抵抗」という判定基準があるにはあるんですが、最後は「人の手」です。とにかく、いろんな人に、実際に試作品を使ってもらって、ヒアリングして、改良して。その繰り返しの末です。

水口:話の途中ですみません、ちょっとよろしいですか? 実は私も筆記テストに協力しましたが、ぺんてるではなぜか筆記テストは「国会の年日」と書くと決まっているんです。

ーー「国会の年日」!? なんですかそのワードは! 

水口:それが私も知らなくて長年の謎なんです。とにかく筆記テストに協力するたびにひたすら原稿用紙に書くんです、国会の年日、国会の年日、国会の年日……

ネロ05筆記試験画像「国会の年日」

安孫子:(笑)。それはね「25画」だから。4回書くと100画、原稿用紙の文字数と画数が計算しやすいからです。プラスして縦横斜めの線、トメやハライといった筆記時の様々な動きも入っている、それゆえの「国会の年日」なんです。

ーーさすがレジェンド! きちんと意味があるんですね。ちなみにゼロゴはワンノックで芯がなくなるまでどれくらい書き続けられるんですか?

若井:個人差はありますが、9000〜12600文字程度、原稿用紙に換算すると22〜31枚です。

ーーカチッ、サラサラサラサラサラサラ・・この着き心地の良さがほぼ延々続くイメージですね。

若井: 精魂こめてつくったこだわりの一本。これからみなさんのお手元に届くと思うと、喜んでいただきたい期待が半分、ユーザーさんになんて言われるだろうとドキドキ半分です。

安孫子:オレンズネロ0.2、0.3で連続筆記シャープペンはずいぶん認知いただけました。今回もっともみなさんになじみのある芯径0.5mmでお届けする「オレンズネロ0.5」。ご自分だけの一本、大切に使いたいと思っていただける一本になったと思っています。ぜひ手にとっていただきたいですね。

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ーー世代を超えた開発者たちの想いがつまった一本。今日10月8日リリースします。ぜひ多くのみなさんの手に届くことを、シャー研部も心から祈っています!


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ついに誕生したオレンズネロの0.5(ゼロゴ)。お値段は1本3000円(税別)。ちょーっとお高く感じるかもしれませんが、手にすればその価値が手から伝わるはずです。

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みなさんも、ぜひご自分の手で確かめてみてください。
(書く文字は、もちろん「国会の年日」で!笑)