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コーヒーの「香り」がもたらす脳への効能

お久しぶりの投稿です。

今回は、コーヒーの「香り」についてお話したいと思います。
皆さんコーヒーを飲むときに香りを楽しんでいますか?
深煎りのコーヒー豆からは、スモーキーな香りやダークチョコレートな香りがしたり、浅煎りのコーヒー豆からフローラルな香り、シトラス系の香りなど様々な香りが楽しめると思います。
この香りがコーヒーを味わうときに非常に重要となるのはもちろん体感されていると思いますが、実は香りは脳への効能にも違いがあるのはご存知でしたか?

1. 「香り」がもたらす脳への効能

まず、コーヒーだけでなく「香り」全般が脳にどのような影響を与えるといわれているのかをご説明します。
以下は「香り」が脳に与える主な影響と事例です。

  1. 情緒と記憶への影響

    • 香りは感情と深い結びつきがあり、特定の香りが幸福感、リラックス、ストレス軽減などの感情を引き起こすことがあります。例えば、ラベンダーの香りはリラックス効果、レモンの香りはリフレッシュ効果をもたらすといわれています。

    • 香りは記憶にも強い影響を与え、過去の出来事や場所を思い出すのに使用されます。この現象は「嗅覚による記憶」として知られています。例えば、特定の香りが特定の場所やイベントを思い出させることがあります。

  2. 集中力とリラクゼーション

    • 香りは集中力を高めるのにも役立ちます。例えば、ローズマリーの香りは認知機能を向上させる効果があるとされています。

    • 逆に、カモミールやバニラの香りはラベンダーと同様にリラックス効果があり、ストレスを軽減するのに役立ちます。

  3. 食欲への影響

    • 香りは食欲にも影響を与えます。特定の香りは食事をより美味しく感じさせ、食欲を増進させます。

  4. ストレス管理

    • アロマセラピーなどで香りが活用され、ストレス管理に役立つことがあります。ラベンダーやユーカリなどの香りはリラックス効果を持ち、ストレスを和らげるのに使用されます。

  5. 睡眠の改善

    • 特定の香りは睡眠の質を向上させるのに役立ちます。例えば、ラベンダーの香りが睡眠を助けるとされ、枕や部屋に香りを拡散させることで質の高い睡眠をサポートします。

2. コーヒーの香りが生み出すリラックス効果

ここまでで香り全般の脳への効能について、解説しました。

それでは、コーヒーの香りについては、どのような脳への効能があるのでしょうか?
コーヒーの香りは具体的には脳に2つの影響を及ぼすことがわかっています。まず1つ目が「リラックス効果」です。

この効能については、以前全日本コーヒー協会においても取り上げられていた杏林大学医学部の古賀良彦教授の実験結果を用いて、ご説明します。

実験内容としては、20代の女性10人に5分間隔で6種類のコーヒーの香りを数十秒間ずつ嗅いでもらい、その間の脳波を分析するというものでした。
コーヒー豆はブラジルサントス、グアテマラ、ブルーマウンテン、モカ、マンデリン、ハワイコナの6種類を使用し、
無臭の蒸留水も使用して、それぞれ中挽きにした豆を90℃の熱湯で抽出したそうです。
実験中は、被験者の頭に小さな電極を貼って「脳波」を調べたそうです。
指標としたのは「α波」というものでした。α波は脳が円滑にゆるゆると働いている状態、すなわちリラックスしているときに後頭部で多く出現します。

https://coffee.ajca.or.jp/webmagazine/health/health69-2/

コーヒー豆別に脳のα波を測定したものが、以下の画像になります。

コーヒーの種類によるα波の比較

暖色の部分、つまり赤色や茶色がα波の量が多いことを表しています。
α波が最も多く出現したのはグアテマラとブルーマウンテン
この2種の香りにはリラックス効果があることが立証されました。

しかし、マンデリンやハワイコナではα波があまり見られませんでした。無臭の蒸留水と比べても少ないです。
つまり、コーヒーの香りすべてにリラックス効果があるわけではなく、豆によってその度合いが異なることが明らかになりました。

この実験では、これほどはっきりした差異がありながら、なぜこの差異が生じるのかについての科学的な原因は分かりませんでした。
しかし、古賀教授が行ったほかの実験で、コーヒーの香りが秘めるもう一つの効果が明らかになります。

3. コーヒーの香りが生み出す集中力向上の効果

コーヒーの香りがもたらすもう1つの脳への効能が「集中力の向上」です。

次の研究で、古賀教授はα波ではなく「P300」という脳波に着目して実験を行いました。

P300とは、人の集中度を図る指標のことです。正しくは「情報処理能力」と呼び、P300の値が低いほど情報処理スピードが速いことを示します。
物事を見極めたり聞き分けたりするときに脳は活発に活動しますが、そのときに出現する脳波がP300です。
ここでは、コーヒーの香りによってP300がどう変わるのかを調べました。

実験は、α波と同様の条件で用意した6種類のコーヒーの香りを、被験者に嗅いでもらうというものでした。

こちらが実験結果の画像です。

コーヒー豆ごとのP300の値

この結果から、ブラジルサントスやマンデリン、ハワイコナは情報処理のスピードが速い事がわかります。
これらの香りには脳の働きを活発にする効果があるといえます。

この実験結果は、α波の実験とは逆の傾向を示しています。
最初の実験でα波が多く出現し、リラックス効果が高いと認められたグアテマラやブルーマウンテンは、P300の値が低い結果となりました。

4. 得たい効能によってコーヒーを選ぶのも1つの楽しみ

この2つの実験結果について、6つのコーヒー豆を「リラックス」×「集中力」の2軸で整理すると以下のようになります。

コーヒーの香りが脳に与える効果は豆の種類によって異なることがわかりました。

コーヒーも苦みの強さや酸味の程度、風味だけでなく、コーヒーの香りを通してどんな効果がほしいか?という観点を加えてみると、また1つコーヒーの楽しみが増えていくなと思いました。

ぜひ、「在宅で仕事に集中したいからブラジルを淹れよう。」「リラックスしたいからグアテマラのコーヒーを淹れよう」みたいな感じで、効果を求めてコーヒー豆選びをしてみてください。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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