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自動車産業の未来2

はじめに

カーボンニュートラル実現に向けて自動車産業の地殻変動が加速しています。

今日本を見渡せば日本車であふれていますが、電気自動車であるEVの分野で出遅れている日本の自動車メーカーは生き残りに苦労することでしょう。

改めて、少し今の状況と未来を考えてみました。

※以前、以下のような記事を書きました。もうあまり何を書いたか記憶に残っていませんが、自動車産業について考えるのは2回目ということでタイトルに「2」をつけました。


EVは本当に普及するのか?

EVについては、日本で以下のような意見をちらほら見かけます。

「EVはトータルで考えれば二酸化炭素排出量の削減にはならない。だから、ガソリン車はなくならない。」

「充電ステーションが普及してないから、EVは普及しない。EV車ばかりになったら充電するところがない」

「充電に時間がかかりすぎる。ガソリンだと給油に数分くらいで済む」

「EVだと日本のガソリン車で必要だった下請け企業や工場がどんどんつぶれる。だから日本を守るためにガソリン車はなくせない」


などEVに否定的な意見が根強いです。

個々の意見はそれぞれ個々の観点では、たぶん間違ってないと思います。きっと正しい意見でしょう。

ただ、視点を変えて「それで日本の自動車産業は生き残れるのか?」

という視点で考えると正解なのでしょうか?


「EVはトータルで二酸化炭素排出量は減らない。製造過程でガソリン車よりたくさん二酸化炭素を排出するから」

そうですね。言ってることはわかります。おそらく間違ってはないのでしょう。
でも、車買う人は製造過程の二酸化炭素排出量なんか気にしますかね?

もし、カタログに製造過程の二酸化炭素排出量が書いてあったら見るでしょうか?


車を買う人は、なぜ車を買うかというと、車を買うメリットがあるから買うのです。

昔は車を所有する事自体がステータスでした。
車を持つことがあたり前になると、高級感のある車、外車、家族向けのミニバン、燃費のいい車など購買意欲をかきたてる要素は時代ごとに変わってきました。

人はコトを得られる対価としてお金を払います。コトか得られないのにお金は払いません。若者の車離れの話題も一時期よくありましたが、何百万とする車でコトを得られなければ、わざわざ高いお金を払う必要が無いのです。

モノ、コト理論でいうと、「モノ」が売れるのは「コト」があるからです。
「モノ」を買うことによって、「コト」が得られれば「モノ」を買います。

ふつうの車にステータスを感じない人は、積極的に車を買い換える欲求もあまりわかないと思います。
車を買い替えても得られる「コト」が少ないからです。
せいぜい、「新車だからきれいになったなー。」とか「デザインがちょっと今どきのデザインになったなー。」とか「カーナビとか進化したかなー」くらいではないでしょうか。
「でも、あんまり最初に車買った時のように感動するほどもなかったなー」という気持ちになるはずです。

EVはその点ではどうでしょうか?
ガソリン車と違って家で充電する事もできます。
これだけで今までにないコトが得られます。
ガソリンスタンドに行く必要がなくなります。ガソリン入れるのって意外と面倒くさいですよね。
「たまに入れるくらいだし、数分で終わるんだから、そんなの気にしない」

という人が多いかもしれませんが、やっぱりガソリン入れるのは面倒くさいのです。

面倒くさいが解消できるだけでも一つコトが得られます。

クドいですが、コトが得られるから人はお金を払うのです。

ガソリン車はエンジンだったり、ガソリン車ならではの部品がたくさんあります。今の車はガソリン車をベースにして設計されています。

ハンドルがあってシフトレバーがあって、ボンネットの中には、なんだかよくわからない装置がたくさんあります。
これがEVになると、極端に言うとモーターとバッテリーとケーブルがあればいいので、デザインや設計の自由度が圧倒的に違います。

今まで使えなかった空間を自由に使えるようになるので、ディスプレイも大きな画面が用意できて、収納スペースもたくさん作れるので、今までの車より自分の部屋という感覚が強くなるでしょう。
自動運転も段階的に現実のものとなっていますが、そのうち自分の部屋がそのまま移動するような感覚になるかもしれませんね。
電気なので、汚くて臭い廃棄ガスも出ないので、自分と家の部屋との境界がなくなってくるかもしれません。
ロボット掃除機のルンバのように家のピットに自動的に横づけして、充電も自動的に始まって、ドアを開けたらもうそこが家の部屋の中とか未来的でいいですよね。

そこまではまだ少し先の未来だと思いますが、最近ホンダとソニーで共同で車を作る話題がありましたが、コンセプトは従来のガソリン車からガラっと変わって、ワクワクするコトがたくさん盛り込まれています。

ガソリン車では、これ以上コトを求めても費用対効果が薄いのです。

これはスマホの初期の頃と同じですね。iPhoneもモデルが変わるにつれて、欲しい機能がどんどん増えているうちは次々買い換えたくなりますが、今ではやり尽くした感があって、買い換えでコトを得られることも少なくなってきました。
iPhoneでステータスを感じてる人は、それ自体でコトが得られるので新しいiPhoneを次々買うと思いますが、特にステータスを感じない人は頻繁に買い換える必要性を感じないでしょう。

確かにEV車には課題がまだまだたくさんあります。

ただ課題をクリアするからこそ価値があるのです。課題がなければ、あっという間にレッドオーシャンになって飽和するでしょう。

充電ステーションが足りなければ増やす政策を考えればよくて、航続距離の課題があればその課題を解決するのが新しいビジネスになります。

EVは使用済みのバッテリー廃棄の課題もあります。再利用する技術が実現できればこれもビジネスチャンスになるかもしれません。

大きな課題は一企業では解決難しいと思いますので国が率先して戦略を考えて推進していくのが現実的かもしれません。
EVシフトは欧州が仕掛けた戦略という話もありますが、日本も自動車産業どうするか?
という戦略がないと家電メーカーと同じガラパゴスの道をたどることになります。

EVといった電気自動車の分野は日本はすでに周回遅れです。
安価で航続距離の良いEVは中国メーカーも力をつけてぐんぐん伸びています。

補助金があるから今だけという意見もありますが、補助金があるから売れるということは安くなれば今のレベルのEVでもどんどん売れるということです。

車を買うときはガソリン車じゃないとダメという人は、もうほとんどいないでしょう。

マニュアル車が好きとか、エンジンの音が好きとか、そういったことにコトを感じる人たちくらいだと思います。

「コトのポテンシャルはガソリン車と電気自動車のどちらが大きいか?」

という視点で考えるとどちらが正解かわかりやすいですね。

「二酸化炭素排出量を削減するためにはどちらがいいか?」
では無いのです。
環境問題はもちろん大事です。
ただ、それと同時に「どうすれば日本の自動車産業は生き残れるのか?」も考える必要があります。

企業が生き残れなくなって、日本人の失業率がどんどん高くなり、中国企業がどんどん日本市場に参入して、環境問題まるで無視している企業が大手を振るって日本に定着している世の中になると元も子もないのです。


では、日本の自動車メーカーはEVに全集中すればいいのか?


かといえば、それが正解かは今時点ではわかりません。
もちろん、今すぐにEV全集中はリスクが大きいです。

ただ、今の延長線上でコトが低下していく車を作り続けるのもリスクを先送りしているだけで、徐々にリスクが大きくなると考えています。
そして、ある時に既に手遅れだったということに気づくのです。気づいてからはもうどうすることもできません。

さらに、上場している株式会社であれば株主のことも気にしなくてはいけません。

誰も将来性のない株など買いたくないですよね。自分の資産を増やしたくて株を買うのですから。

でも、トヨタほどの大企業は舵取りがすごく悩ましいですね。
EVに集中するのもリスクが大きく、今までの財産、強みを捨てることになります。
かといって全方位戦略だと、EVの分野は他のメーカーに出遅れているのにますます離されていくでしょう。


モリゾーさんが好きな、

「僕はね、ガソリン臭くてね、燃費が悪くてね、音がいっぱいでる、野性味あふれるクルマが好きなんです」

という方向に舵をきるのはどうでしょうか。

たしかに、この方面の車も車好きな人たちには、一コトを提供してくれますので、一定のニーズはあるでしょう。
ただ、トヨタという大きな企業を養っていくには分母が少なすぎます。

マツダなどは車好きをターゲットにコトを提供する車づくりをターゲットにしてもいいかもしれません。
実際、運転の楽しさを重視していると思いますので、トヨタほどの規模は得られないですが、一定のファンは付いていると思われます。

大企業ほど小回りがきかないのです。何でもそうですが大きくなればなるほど環境の大変動に弱くなります。恐竜も大きくなりすぎて絶滅しました。

変化に適応するには小さくなるしかありません。


では、トヨタはどうすればいいのでしょうか?
「モビリティ」というキーワードを使って「車づくり」の枠から視野を広げようとしているのは理解できます。

残念ながら「モビリティ」の分野でトヨタはどうすべきなのか? という答えまで見えません。

ふと思い出しましたが、トヨタは「トヨタホームズ株式会社」という会社もあったでしょうか。

先に書いたように、自分の家の部屋の一部がそのまま移動できるような感覚の車を実現するには、住宅メーカーとも協業する必要があるかもしれません。トヨタホームズという会社があるので、その強みを生かして連携して共同開発したらおもしろそうですね。

「トヨタ」というブランドは、庶民的なイメージがありますので、住宅の分野でコトを見出すのも一つの方法ではないでしょうか。

少なくとも「モビリティ」の分野は、ドローンや電気自動車など家電化が進むと考えていますので、「モビリティ」の分野でトヨタが生き抜くのは難しいような気がします。

「住宅の一部をモビリティする」のであればよいですが、「移動」だけを主眼にするときっと行き詰りそうです。

「トヨタ」は高級ブランドでもなく、庶民的なイメージがあります。考え方によってはブランドイメージが無く、ブランドの強みが見いだせないと思われるかもしれませんが、庶民的であればそれ自体が強みにもなるでしょう。

「トヨタ」=「庶民の生活になくてはならない存在」という価値を深く考える必要はありそうです。

あとは、トヨタとパナソニックとの提携の話もよく聞きますが、バッテリーだけではなく、ソニーとホンダのようにコンセプトカーを作ってもいいのではないかと思います。
なんとなくパナソニックも庶民の暮らしに寄り添っているイメージがありますので、ブランドイメージとしてはトヨタと共通するものがありますよね。

まとめ

結局何もまとまらないまま終わることになりましたが、最近ますます日本の自動車産業が心配になってきています。

自動車産業の人ではないので、余計なお世話かもしれませんが、日本の製造業の屋台骨の自動車産業が壊滅すると、日本の未来も怪しくなってきます。

日本に住んでいるからには、明るい未来がある日本になってほしいと思っていますので、引き続き考えていきたいと思います。


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