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自然エネルギーは地球に優しいのだろうか?


「エジプトはナイルの賜物」とは、ギリシャの歴史家ヘロドトスの言葉である。ナイル川の運ぶ沖積土によってエジプトの土地はつくられた。ナイル川が運ぶ肥沃な土のおかげでエジプトの文明が築かれたのだ。

カイロ市内

エジプトは乾燥地で雨がほとんど降らない。ナイル川は元々、洪水を定期的に起こして農作物へ肥沃な土をもたらしていた。人々はナイル川沿いの土地に住み、その恵みに頼って生きてきたのだ。

ナイル川

だが、アスワンハイダムなどの建設によって海水が逆流するようになってしまった。下流域のカフルシェイク県では、塩害が発生して作物が育たない。保たれていた海と川のバランスが崩れてしまったのだ。

アスワンハイダム

川の水というのは、土砂を削りながら上流から下流へと流れていく。水力発電のために作ったダムは、土砂で次第に埋まってしまう。ゲートを作ったとしても、排出口は真っ黒となって下流地域の環境は侵されてしまう。

川におけるエネルギーによって平野ができ、都市が生まれる。新鮮な水が流れているから魚も生きていける。水力発電により川からエネルギーを取ってしまうと、下流の魚や植物の数もその分減ってしまう。

自然のエネルギーというのは、ほとんどが太陽エネルギーである。温められた大気の気圧差で風力になるし、海水の蒸発でできた雨が山に落ちて水力となる。生物はみんな、太陽のエネルギーで生かされている。自然からエネルギーを大量に奪うと、奪った分だけ環境は乱れたりしてしまうのだ。

大きな風力発電所を作れば、風エネルギーは電力に変えられる。だが、変えた分だけ風の力は弱くなり、大地はじめじめとして樹木は枯れてしまう。自然を守るために、自然エネルギーを多く使ってはいけないことになる。

バイオマスは、太陽光で育てた穀物を燃やしてエネルギーにすることである。バイオマスは食料1に対して燃料は5倍も使う程に効率が悪い。穀物の値段が上がってしまい、貧しい人々たちよりも先進国の豚が優先されてしまう。まだまだ、石油を使っている方が合理的であったりする。

自然エネルギーの話が出てくる時、たいていはビジネスの話である。利権による自然エネルギーの使用というのは、決して地球に優しくあるまい。


(参考)
もうだまされない! 「身近な科学」50のウソ(PHP文庫)  著. 武田 邦彦

アスワンハイダム CC 表示-継承 3.0
File:AswanHighDam Egypt.jpg 作成: 2002年12月1日

風車 CC 表示-継承 4.0
File:Nishi-hen-na02.jpg 作成: 2007年9月1日

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