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エルマーのぼうけん

幼稚園の年長さんのとき、たぶんほし組だった気がするけれど、私はエルマーのぼうけんを読んでもらう時間が大好きだった。
エルマーのぼうけんは絵本じゃなくって、文字だけが書いてある。そのことが大人になった証のような気がしていてとても嬉しかった。

先生は椅子に座って、私たちはその周りに座る。絵本じゃないんだけど、背表紙には物語に出てくる地図が描いてあって、先生は時々そこを見せてくれる。エルマーのぼうけんは、竜が出てくるお話だった。はずだった。

つい最近久々にその本を手に取った。小さい頃読んでた本って今でも結構覚えてるよね、と友達に言われたけれど、私は本当にそう?と答えた。
この本読んでたな、大好きだったな、懐かしいな、という記憶はある。けれど、その本の内容はさっぱり覚えていなかったりする。

ネズミくんのチョッキという本を読んでいたのは本当にそうなんだけど、あの本は私の中でこんなに悲しいお話じゃなかった。
お母さんに作ってもらったチョッキを、いろんな動物に貸すんです。どんどんどんどん大きな動物が着るもんだから、最後、びろんびろんにのびたチョッキを着るネズミくんの悲しすぎる後ろ姿。こんなに悲しいものはありません。だってだって、お母さんが作ってくれたチョッキだよ。たぶん1回しか着てないのに。

エルマーのぼうけんだって、私の中ではりゅうに乗って冒険するお話だった。なんか、途中仲間に会ったりなんかしてね。たぶんそれは間違いじゃないんだけど、今日読んだ冒頭部分、出てきたのは、え、猫?竜じゃなくて、猫??なんと、エルマー少年はまず歳とった猫を助けるんですね。その猫が、竜の話をしてくれるんです。

あれから月日がたってしまった今、長いしっぽ、と言われればまず長いしっぽを想像して、体は赤と黄色のしましまと言われれば赤と黄色のしましまを想像する。なんか、考えないと読めなくなったな、と思う。竜の住む島の構造なんかも描写してあって、意外と複雑で、たぶん幼稚園生は理解してない。でも、今の私より、もっと直接的に理解していたような気がする。楽しいだろうな、そんな世界観。

商業施設の七夕の短冊に「大人になりませんように」と書いてしまう小学1年生はきっと、子供らしくなくって、その願いが中途半端に叶ってしまった今の私は、大人になりきれないのに、エルマーのぼうけんにわくわくしてたあの頃にはもう戻れない。もっとわくわくしてたいな、いつでも。

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