桃の皮
夏の終わりを認めたくなくて、桃を2つ買ってきた。
本当に桃が美味しい季節には高いからって買わなかったのに、意地張ってたら反動で食べずにはいられなくなって、結局余計に高い桃を買うはめになる。
桃は美味しかった。甘くて、ちゃんと夏の味。
でも、するする剥けない皮は、もう夏じゃないよって私に教えてくれた。
まだまだ暑くても、ちゃんと皮は秋だった。
芸術は美しい嘘なんだって。
かの有名なサラダ記念日だって、本当はカレー味の唐揚げ記念日だし、7月6日でもないらしい。
目に見えなくても風は秋だなあなんていう古今和歌集の歌だってもしかしたら、桃の皮が風になったのかもしれないし、そんなわけないかもしれない。
秋来ぬと 私にはさやかに見えねども 桃の皮にぞ おどろかれぬる
たぶん、そんなわけない。
過ぎ去るものを嘆く私とは違って、変わりゆく季節の中で、今の季節を感じられる人だった、はず。
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