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49.「情けねえ」を繰り返す

何度見ても、何度聴いても、何度読んでも、変わらず素晴らしいものってありますよね。

たぶんそれが名作が名作と呼ばれる所以だと思います。

例えば村上春樹さんの小説なんかは、定期的に読み返したくなりますし、その度に新たな発見をしたりするものです。その時々の自分の環境や心境によっても、受け取り方が変わって、感銘を受けるポイントも変化していたりしますよね。


僕は最近ドラゴンボールを読んでいます。もう何度も読んでいます。

はじめて読んだのは小学生のとき通っていた床屋さんでした。とにかく悟空が恰好良くて、技名を覚えたり、必死にかめはめ波を出そうとしたりしてみたのを覚えています。今読んでも、ドラゴンボールは面白いなあと思うのですが、やはり感じ方は当時とは変わりました。


ストーリーだけ追うと、ドラゴンボールは単純明快です。ただ、各見せ場における「恰好良く見せる方法」が素晴らしいなと思いました。
それは鳥山明先生の絵や構図の上手さが素晴らしすぎるのが要因だと思うのですが、他の要素もあると思います。


例えば技名です。「かめはめ波」「界王拳」「龍拳」最強とされる「元気玉」
申し訳ないですが、文字に起こすと、シンプルかつダサい技名だと思ってしまいます。

ただ悟空の主人公性やキャラクター性を鑑みると、不思議なことにこれ以上ないカッコいい技名に変わります。

「ビックバンアタック」「ファイナルフラッシュ」どこか中二病心をくすぐるベジータの技名も、ベジータらしさ満点です。

あげればキリがないですが、各キャラクターに見合った、必殺技名を付けられるセンスも、ドラゴンボールの世界観を決定づける恰好よさの要因だと感じました。

何年かに1回、定期的に読みたくなる。あるあるですよね。




でも僕はこのような「繰り返し堪能する感覚」がバグっています。

例えば音楽です。Amzon prime musicで音楽を聴いているのですが、平気で毎日同じ曲を聴いてしまいます。飽きるまで1つの曲を何度も何度も聴きます。間隔で言うと短いときで1週間、長いときで数カ月くらい同じ曲しかイヤホンから流れてきません。


少し前はとんねるずさんの「情けねえ」にベタ惚れしていました。


音楽の再生履歴を見たら、スクロールしてもスクロールしても「情けねえ」を抜け出せませんでした。

その履歴を見て妻は絶句した後、苦虫を噛み潰したような表情で僕を見ました。
僕が見る、妻の初めての表情でした。

youtubeでも繰り返し見てしまいました。とんねるずさんの「情けねえ」
若い頃のとんねるずさんの歌唱姿。スタイリッシュでスマートな木梨さん。野性的でエネルギッシュな石橋さん。最高です。

「みなさんのおかげでした」の最終回、年を重ねたとんねるずさんが「情けねえ」を歌いました。
ブルーレイディスクに保存し、繰り返し見ています。
とんねるずの大きい方、石橋貴明182㎝。とんねるずの小さい方、木梨憲武178㎝。
僕たち夫婦の大きい方、夫166㎝。情けねえ。

「情けねえ」はだいたい5分ほどの曲です。
仮に100回聞いたとして500分です。(もっと聞いていると思いますが。)

非常に残念なことなのですが、

これだけ聞いても、僕はこの歌を歌えません。
他に類を見ないほどの音痴だからです。歌詞も暗記していません。ただその時々で間違いなく気持ちを盛り立ててくれました。

もちろんそれだけで十分なのですが、ふとした瞬間、「もっといろんな曲を聞いた世界線の自分」を思い描いてしまいます。

その世界線での僕はたくさんの流行りの音楽を聴いています。街で流れる歌、カラオケで誰かが歌う歌。すべて知っていることでしょう。
今まで知らなかったアーティストを好きになったり、新たな感性が芽生えたりもしていることでしょう。

そう考えると、何だかなあ~と思ってしまいます。

ただし、それらを全て犠牲にして生み出したものもあります。

時間をかけて狂ったように「情けねえ」を聞きました。再生履歴は狂気じみています。

そう、僕は引き出したのです。

妻の苦虫を噛み潰したような表情を。
軽蔑したような眼を。


同じ音楽を聴き続ける世界線でも、新たな発見、あったのです!

ちなみに今はYOASOBIの群青を狂ったように聴き続けています。
まだ1週間ほどしか経っていませんが、既に再生履歴は狂気じみています。

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