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100.溺愛する準備はできている


妻が妊娠をして初めて知ったことがいくつかあります。そのうちの1つが「ジェンダー・リビール」です。
はじめて単語を聞いたときには何が何やら検討もつかず、「新しいクラフトビールの名称なのか?」とさえ思ってしまいました。


「ジェンダー・リビール」とは和訳すると「性を明らかにする」という意味だそうです。
(「新しいクラフトビールの名称」という推測は全くの見当違いでした。)
要は、「ジェンダー・リビール」「赤ちゃんの性別を明らかにするイベント」ということみたいです。


例えば、ジェンダー・リビール用のケーキを準備し、ケーキをカットしたときの中のクリームの色で性別を発表(男の子なら青・女の子なら赤・・など)するといった具合です。

他にも・・・

風船を割って、中の紙吹雪の色で発表。
おにぎりを作って、中の具材の種類で発表。
オムライスを作って、中の食材の種類で発表。
クッキーを作って、味で発表。



等々。


とにかく性別がわかれば、やり方の如何は問わない、といったイベントのようです。
調べてみると、まだ新しい文化のようで、2008年ごろに米国の女性がパーティーでケーキを使って赤ちゃんの性別をお披露目する様子をインターネットに投稿したのが最初とされているそうです。
何はともあれ、赤ちゃんの性別は、親としてはかなり気になるところです。


たまにドラマや漫画の描写として「絶対に男の子を産むように!」と妻にプレッシャーをかけるシーンを見ます。
「男の子が産まれやすくなる食べ物やサプリメント!」
なんて真偽のほどが定かではない記事も何度か目にしたことがあります。(逆も然りですが。)
僕らの場合、初産ということもあってか、子どもの性別については「本当にどちらでも良い!!」と思っていました。
誤解が無いようにお伝えしますと、関心がない「どちらでも良い」というわけではなく、どちらの性別で産まれてきても楽しみだ!というポジティブな「どちらでも良い」でした。


先日僕らもジェンダー・リビールを行いました。
定期健診で性別がわかり、その帰りにスーパーに行ってケーキの材料を買いました。

「夫ちゃんは、外で待ってて!!」


の一言を残し、妻はスーパーの中に消え、僕はスーパーの外でオブジェのように立ち尽くしました。
やがて妻はたくさんの荷物を抱え、スーパーから出て来ると、僕の手を取り、ルンルンで歩き出しました。
僕は自動的にオブジェから人間に戻り、握った手から、妻の幸せの気持ちが伝わり、気がついたときには僕の足取りもルンルンになっていました。


家に着くや否や妻はケーキを作りだしたので、僕は別室で待機しました。
妻はケーキ作りの経験が何度もあるので、とても手際が良いです。

「もう出来たの!?」


と思うほどのスピード感で、ジェンダーリビールパーティーが開催されました!
仕上がったケーキを見て、僕は驚愕しました。


生クリームの上に、僕の大好きな「ハリボー」が盛りだくさんではありませんか!
僕の大好きな食べ物のうちの1つがグミです。
そして、グミの中で抜きんでて好きなのがハリボーです。

まさにご褒美でした。



どうやら

「黄色いハリボー」=「男の子」
「赤いハリボー」=「女の子」


といったイメージのようです。

「ケーキを切ったら、どっちかの色のジャムが入ってるよ!」


そんな説明を受け、僕の心臓は高鳴りを見せました。


今や多様性の時代。
我が子が生きていくこれからの時代は、今よりもっとダイバーシティな世の中になるでしょう。
男だからどう、女だからこう、といった押し付けの価値観はなくなっていくはずです。
ですが、やれることが限られる妊娠中、自粛が求められる世界で、性別発表会を楽しんでも良いではないでしょうか!


ウキウキした気分でケーキにナイフを入れました。

二つに割れたケーキ、スポンジとスポンジの間に挟まれた赤いジャム。

赤。

赤の場合はどっちだ??

単純な疑問が頭に浮かび、その間、妻の拍手だけが部屋に響いていました。

すると走馬灯のように景色が流れてきました。

「パパ、好きな男の子がいるんだ」小学生になった娘が言います。
「お父さんのと一緒に洗濯しないで!」中学生になった娘が言います。
「今日は彼氏とデートなんだ!」高校生になった娘が言います。
「明日彼氏がうちに来るから!」大学生になった娘が言います。
「娘さんを僕に下さい!!」社会人になった娘の彼氏が言います。
健やかに育った娘の結婚式で、僕は一筋の涙を流します。




***



大多数のパパがそうであるように、僕は子供の性別が「女の子」だと分かった瞬間に、娘が他の誰かに取られてしまうことを想像してしまいました。

それはとても悲しいことですが、同時に幸せなことでもあります。今の僕にできること、それは妻と娘の健康を願い、少しでも負担のかからない生活環境をつくること。
あまり先のことばかり考えていても、仕方がありません。
仕方がありませんが、、どうしても娘が巣立っていく姿を想像してしまいます。

幼い頃はパパが好きかもしれないけれど、思春期には嫌われてしまうかもしれない。
僕がおじさんになったら、雑にあしらわれてしまうかもしれない。

それでも愛そうではないか。我が娘よ。

不思議なことに、一瞬で溺愛する準備ができてしまいました。


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