駅員ペンギン

教育・心理が専攻分野でした。最近は芸術・文化全般についての本がすきです。すぐ音楽の話を…

駅員ペンギン

教育・心理が専攻分野でした。最近は芸術・文化全般についての本がすきです。すぐ音楽の話をします。生きるのが目標です。

マガジン

  • 駅の記憶シリーズ

    あちこちの駅に行ってちょっと歩いた記憶を綴ります。

  • セルフ処方箋

    ちょっと疲れたなって時に効く、ことばのお薬を自給自足するコーナーです。よければのぞいてってくださいね。

最近の記事

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名前を付けることは、枠組みを作ること

これは本当に不思議な話だが、幼い頃から「せんだい」という都市に興味を持っていた。全国版の天気予報で、センダイは雨、ニイガタは雪…みたいに言われるのを聞いて、特別耳に残ったのだと思う。SENDAI、仙台、ちょっと外国語の響きにも聞こえなくない、音の響きが耳に残る。 やがて漢字が読めるようになっても、仙台がやはり好きだった。縦線の目立つ仙の字と、文字通り安定感のある台という字の組み合わせが、日本地図の中でひときわ光って見えた。 中学校に上がって、あんまり全国版の天気予報は見な

    • 新卒で教職に就いてうつになったけど、なんとか4年目になりました。

      コロナ禍の中で就職することになり、実働6か月で適応障害になった。6か月はとても長いものだった。 夢に見た教職に就き、2年生の担任をした。初めは何をしていいかわからず、一から組んでいる先生に教えてもらい、一つ一つやっていくことはとてもストレスだった。初めてのことを失敗できない。漢字ドリルを選んで、赤色のペンで慣れない言葉をメモする。任命式で出してもらったお茶を、その日の昼には自分が先輩の顔とコップを覚えて出す。どんなクラスにしたいか問われる。「楽しいクラスにしたいです」「楽し

      • たくさんのひとりぼっちの中で

        仕事がひと段落した夏の夜、ぽんと熱が出た。実際は「ぽん」などとかわいいものではなく、だらだらと体の重さが続いてダメ押しに出たような熱で、結果はコロナだった。5日間のお休みが強制的に決まった。 部屋で朝起きては、今日もどこにも行けない日が始まると思って憂鬱になる。昼間は情報番組の楽しそうな声と、母が洗濯物をはためかせる音を聞きながら遠めの部屋でうつむいている。夜は寝つきも悪いのに九時過ぎには布団に入って、日付をまたぐかどうかの時に目覚めて、からからののどに麦茶を通しては、朝ま

        • ちいさきものは、みなうつくし

          今、子どもに囲まれる職に就いている。 子どもの感覚は本当にあざやかで、直感的だと思う。概念を知ってしまった大人が、分厚い手袋をして物事を手に取っているとしたら、子どもは素手で触れているに等しい。そんな大人よりも豊かでみずみずしい世界のいちばんおいしい部分を、惜しげもなく差し伸べてくれる。その不安定さが、子どもそのものなのだと思う。 大人はそれを受け取る準備をしておかねばならない。両手のおわんにぱらぱら注がれるどんぐりには、必要性などそぎ落とされた完璧な「for you」が

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          1本
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        記事

          自分の文章を読み返すと、案外いいなと思った。手前みそだろうか。しかし本当に欲を言うなら誰かに届いてほしい。いや、このインターネット上で一度発信して、誰の目にも留まらないことなど逆にあるのだろうか。1000年後の未来にも味噌が残っていてほしいなあ。

          自分の文章を読み返すと、案外いいなと思った。手前みそだろうか。しかし本当に欲を言うなら誰かに届いてほしい。いや、このインターネット上で一度発信して、誰の目にも留まらないことなど逆にあるのだろうか。1000年後の未来にも味噌が残っていてほしいなあ。

          いつも何かを迷っている

           2022年、明けましておめでとうございます。  朝は初日の出を見るために早起きをしたのに、もう昼になっている。自分の時間にしようとパソコンの前に座ってからはや20分。傍らに置いた、まっさらなスケジュール帳に何か書こうか迷っている。  仕事でも使うから、あまり内省とか個人的なことは書かないほうがいいだろうか。見られても困らないが、相手の目にうっかり入ったときに不快ではないか。あーこいつ、こんなこと考えてるんだ、と思われるのではないか。そもそもなぜそんなに他人に忖度して自分

          いつも何かを迷っている

          簡単に手に入るものは、また簡単に手から離れていく

          最近自分に言い聞かせている言葉だ。楽をして手に入れられるものはないと思っている。それは、無駄な苦労でもしろというわけではなく、まっとうな手段を用いたいという意味であり、自分が調子に乗らないようにするためでもある。 よく、うまい話には裏があるというが、それこそ、簡単に手に入ること自体を疑った方がいい。少しでも自分が得をしそうな話があったら、相手はそれ以上の得をしようと企んでいると疑った方がいいと思っている。 また、ちょっと褒められたり認められたりすると、自分がすごく大した人

          簡単に手に入るものは、また簡単に手から離れていく

          妄想出力装置

          絵を描くことが好きだ。趣味で描くにとどまっているが、うまくなりたい、という思いはある。 幼少期からクレヨンをもっては同じような人ばかり描いていた。架空の女の子だったのだが、誰かに「その子になりたいの?」と聞かれて、幼いながらにはて?と考えてしまった。別になりたくはないし、フリフリでリボンたっぷりのお洋服とは縁がなかったので、自分がそれに憧れているかどうか考える機会もなかった。ただ、お友達の描く女の子がかわいくて、女の子を描き始めた。髪の毛をくるくるにしたり、ウインクをさせた

          妄想出力装置

          氷山の一角

          ということわざがある。氷山は大きいが、見えている部分は一部で、残りの大部分は海の中に隠れているという。表に現れている物事は全体のほんの一部分にすぎないという意味で使われ、割とマイナスの使われ方が多いイメージがある。 イメージはさておき、言葉通りに捉える。表に見えている部分がすべてではない。隠されている部分が大部分かもしれないこと、自分が知らないだけで存在しているかもしれないものがあることを忘れないでいたい。これを忘れると、さながらタイタニック号のごとくひどい目に合う。 見

          中学生とパラダイムシフト

          なんでこの時代に生きているんだろう、とふと思うことがある。原始時代に生まれてた可能性だってあるし、なんなら時代が現代であっても、すぐたたかれて死ぬ蚊とかに生まれていた可能性もある。蚊が抽象的な思考をしなさそうなことはさておき、この時代に人間に生まれてよかったなと心底思いたいがためにこんな思考をする節はある。 しかしたまに、この人がもしもあの時代に生きていたらどうだっただろう、と考えると感慨深い。私には中学時代友人がいた。絶対に仲良くならないだろうと思っていたらめちゃくちゃ仲

          中学生とパラダイムシフト

          人のふり見て

          たまに、怒りがこみ上げたり腹が立ったりすることがある。穏やかに生きたいのにこれではどうしようもない。怒りに自分を乗っ取られたくない。アドラー心理学によると、人は「怒りたくて怒っている」のだという。どんな物事も、そのもの自体が腹立たしいのではなく、自分がそれに対して「怒る」という反応を、選んでいるに過ぎない。旅先の電車にマフラーを忘れても、傘を持たない日に雨が降ってきても、友人から1時間遅刻する連絡が来ても、それらは「私」を「怒らせる」のではない。「私」が勝手に「怒っている」。

          人のふり見て

          まねぶ

          中学生の時、合唱祭があった。伴奏をしてくれるクラスメイトは、習い事でピアノをやっている子たちだった。ほとんど疑問はなく過ごしていたのに、一度だけ「なんで学校ではピアノの弾き方なんぞ教えてくれないのに、学校行事ではピアノを弾く機会があるのか」と思った。外で習ってピアノが弾ける子にただ乗りしてるみたいに感じた。正直、家でピアノに触れる機会のなかった私は暗黙の了解で選ばれるその子たちがうらやましくて、悔しくて、劣等感を感じていた。 学校では、文部科学省が10年ごとに見直している、

          どどめ色

          前述のとおり、最近はもっぱら藤井風さんばかり聴いている。永遠に味わっていられるスルメというか、無限に飲めるアイスコーヒーみたいなそんな音楽だと思う。 その、風さんの曲に「青春病」がある。この歌詞に、 ”青春はどどめ色” という箇所があって、私はすごくこれが好きだ。どどめ色というのは、打撲でできた鬱血のような、どす黒い紫のイメージがある。濁音のある響きからも、なんとなくおどろおどろしくて、ぞくっとしてしまう。どどめ色はこの意味以外にも、もとの意味として桑の実の濃い紫を指す

          フリーク

          最近、藤井風さんを聴き始めてすごくはまった。 はじめに曲を聴いた。初めての曲が、懐いた野良猫のようにすり寄ってきた。聴き続けられるなあと思った。さて、どんな人だったっけと思ってyoutubeでMVを開いて、そこからの記憶があんまりない。ずっとMVを見てストリーミングでも聴いている。車でも聴きたくてアルバム「HELP EVER HURT NEVER」を買ってしまった。曲だけを聴いた時とは違って、身体表現をしながら動く風さんを見ながら聴くと段違いでしみこんでくる。この音楽が、こ

          星が綺麗なのは

          最近、欲しいと思うものは、常軌を逸していない限り、なるべく手に入れようと思っている。今は幸いお金は稼げているのと、いつどうなるかわからないということは2020で身に染みたので、つかめる物は今つかめという気持ちで過ごしている。 しかし、お金のあまりない学生生活を過ごしてきたから、100円以上の買い物は常に迷っている。商品と値段を天秤にかけて、釣り合っているかものすごく考える。時間の無駄だなあと思うこともあるけど、はじめの若干冷静さを欠いた決断が覆ることがあるから、これはこれで

          星が綺麗なのは

          今はいつも何かが起こる前

          (このnoteには、震災遺構の写真が含まれます) 朝から、東日本大震災から10年が経ったと報道されている。今は2021年3月11日の午前中。10年前の今頃はまだ生きていた人がいる。とても胸が締め付けられる。 ただ感情を話してもいいのなら、私は今でも震災が悲しくて、考えると涙が出てしまう。何もできなかったことが情けないし、今だってのうのうと生きているのがたまに申し訳なくなる。もし自分が逆の立場だったら、幸せな人を恨んだり、やけくそになって大切にしたい人たちを悲しませたりした

          今はいつも何かが起こる前