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[PHASE]ー2|展示会技術の可能性

2020年9月末に開催された半オンライン・半リアルの展示会[PHASE]‐2。この展示会でお伝えしたかったもう1つのことは「展示会技術」の認知度拡大。

「展示会技術」とは?

展示会業界にいる方にとっても、「展示会技術」と言われてもピンとこないのでは、と思います。ましてや一般の方にとって「展示会技術」と言われても全く理解できないと思います。では、展示会技術とはなんなのでしょうか。

ここで言う展示会技術とは、展示会場を瞬間的に構築するそのスピード感のことを指しています。通常建築やインテリアデザインなどによって「空間を作る」場合、ある一定以上の日数を必要とします。しかし、東京ビッグサイトなどで製作されている「展示会ブース」が約2日間で製作されていることはご存知でしょうか。しかも2日目は出展者が商品などを並べるため、実質的にはほぼ1日で作り上げてしまいます。もちろん展示会の設営会社は、事前に製作できるものについては、事前に作っておきます。それでも、ほぼ1日で作り上げるのです。これは、同じサイズの空間をつくる内装会社や建築会社にしてみれば驚異的な早さです。

実際私も初めて展示会ブースに携わり始めたころ、壁紙を貼る職人さんのスピードを見てびっくりした経験があります。それまで、建築の世界にいた私は、壁面を1面貼り終わるためには早くとも数十分、下地処理まで含めると数日という感覚でいました。しかし展示会では同じ面積をほんの「数分」。ジッと見ていても、よそ見をしている瞬間に施工が終わってしまうのです。

展示会の施工はスピードが勝負なのです。

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今回の[PHASE]‐2のプロジェクトでは、この展示会施工会社の持つスピード感。これを会場にお越しいただいた方にも体感してもらおうと、施工(設営)は敢えて会期当日の朝8時から開始し、その日の午後15時には終わらせる、というスケジュール感で敢えて行いました。

その際のタイムラプスが下記になります。(撮影:Vidya)

今回の会場設計には敢えて、長さ9mの展示台と壁面を入れてみました。会場にお越しいただいた一般の方々もまさかこの巨大な展示台と壁面が、先ほど作り上げた、なんて思わないと思います。

しかし、展示会業界にいらっしゃる方なら、この光景って「日常」ですよね。でも、この「スピード感」って、立派な「特殊技術」と言えるのではないかと思うのです。我々には慣れ親しんだ「いつものこと」でも、業種を変えると「特殊技術」。そう言った事項って社会には多いのではないでしょうか。

貸会議室×展示会技術

これまでにも、貸会議室でこのように展示会を開催することは、実際にはあったと思います。しかし、今このようになった状況で、改めてこのことを見つめ直してはいかがでしょうか。今のこのコロナの状況下における「貸会議室」の可能性。そしてそこにこのような「展示会技術」が重なると、さらに多くの可能性が感じられるのではないでしょうか。これまで、貸会議室で展示会を行う場合、会議机を並べて、白布をその上にかけて展示会、といった様が多かったのではないかと思います。しかし、お越しいただいた来場者への訴求力、他の展示会との差別化、展示する製品のブランド訴求等を考えた場合、このような木工+経師(壁紙)貼といった会場や商品を高品質に見せる手法は今後増えてきてもよいことなのではないかと考えています。

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「展示会技術」の展開の可能性

一定サイズの空間を最速で構築する技術としての「展示会技術」

この本質を、社会のより多くの方々に知ってもらえれば、展示会以外でもこの技術の活躍の場はありそうな気がします。例えば下記のように。

1.災害による「避難所」での空間構築に

災害等によって一時的に非難する体育館等の避難所。ここでも展示会の技術は活躍しそうです。約1日あれば、床・壁等の最小限の構築(施工)を行うことが可能。各施工会社にある「リースパネル」等を用いれば、避難された方のプライバシーや最小限の居住環境を整える一助になることが考えられます。このスピード感がもっと行政の方などに認知されれば、きっと活用可能でしょう。

2.家庭内での簡易家具として

家庭内でのインテリア構成。既製品だと、微妙に合わない。かと言って作り付け・オーダー家具だと高すぎて手が出ない、と言った時に、展示会の施工方法だと、価格的にも可能性があります。DIYとプロの家具職人の中間的な位置づけの施工、という感覚で家庭内の作り付け家具に携われば、展示会設営会社にとって新しく業務の幅が広がってくることでしょう。

3.商業施設での簡易店舗造作として

既にポップアップストアのような形では展示会技術は採用されていますが、実際の店舗でももっと活用されてもよいのでは、と思います。展示会で通常採用される壁紙が、長期の使用には不適切ですが、短期間の使用にのみ耐える作り、という点では、現在よりももっと展示会技術が活用されてもよいのでは、と感じています。

大切なことは「展示会技術」の認知度拡大

どのアイデアも、実は展示会業界関係者の中では、誰もが考えているごく「当たり前」のことです。ですが、実際に社会のどれだけの人が、この展示会設営会社の技術のことを知っているでしょうか。先日当社の[PHASE]がテレビ等の取材を受けましたが、どの媒体の方も展示会に関しては何も知らない方が多く、「そもそも、展示会とは・・・」ということから説明しなければいけませんでした。それが現実です。展示会業界が持っている技術を、もっと社会に広めることで、展示会業界関係者にとって、より多くの業務が発生する可能性を持っている、と思うのです。

今回のこの[PHASE]‐2では、このような「展示会技術」のことをより多くの方に知っていただきたい、と考えて、会場のデザインを行いました。

今後、様々な場所で、このような展示会の技術が活用されることを願っています。

ちなみに、今回の[PHASE]‐2の会場を僅か短時間で設営してくださった設営会社様は「because」様。当社も東京ビッグサイトなどでの展示会ブースの設営をよくお願いしているとてもいい会社様です。




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