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展示会ブース装飾/ブースデザインの依頼先は?/3つの依頼先の違いを解説

展示会に出展することが決まった。これからブースをどうするか、考えなければいけない。そんな方にとって、ブースのつくりをどうするか、自力で装飾をするか、もしくは外部にデザインを依頼するか、悩ましいところでしょう。また、外注するにしても、どこに頼むのがよいのか、何がいいのか分からない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本稿では、ブースのつくりを考える上で、どこに頼めばいいのかについて、少しお話ししたいと思います。

「ブースを装飾する」という言葉

ブース装飾を外部に依頼したい場合、どのようにすればいいのかについて、お話しいたしましょう。その前に、「ブースを装飾する」という言葉について説明しておいた方がよいかと思います。展示会業界では、ブースをつくることを、「ブースを装飾する」、または「ブースをデザインする」と言った言い方をします。装飾とは、もともとある空間に対して何らかのものを取り付けていくイメージがあります。壁面に装飾物をとりつける。ブース上部に何かを取り付ける。そのような行為です。
つまり、ブース装飾とは、事務局等が準備した基本パッケージのブース(既に壁や床などが既に準備されているブース)に、出展社が思い思いに製品を置いたりパネルを貼ったりして、ブースを作りこむ行為を指している、と言えます。一方、「ブースデザイン」とは、自分の小間位置(床に記載されたブース範囲のみ。スペース渡し、という言い方をします)だけが与えられ、壁など、ブースを一から作り出すことを指しています。本書でお伝えしている主な内容は、何もない段階、つまり一からブースを作り出すための方法を説明しているため、本稿ではブースを装飾する、とは言わず、ブースをデザインする、という言い方でお話を進めていきたいと思います。

ブースデザインの依頼先は?

「事務局推薦の設営会社に依頼する」

さて、そんなブースのデザインを依頼する先ですが、まずは「展示会の事務局(主催者)がお勧めする設営会社に依頼する方法」があります。事務局が勧める設営会社は会場全体の設営も担当していることが多いため、その展示会のことに詳しく、かつその会社の関係者が常に会場にいるための安心感があります。一方で、あまりにも多くのブースの設営を受けているので、デザインをする、というより「設営作業」をする、というイメージで、設営会社によっては、「しっかりとデザインしてくれない」「設営期間中、担当者が全然ブースに来てくれない」という声も多少あるようです。

「自力でブースデザインを行う会社を探す」

 ブースデザインを依頼する先は、事務局がお勧めする設営会社ではなくても、もちろん依頼は可能です。その場合には、出展社自ら探し出して依頼先を決めなければいけません。「ブースデザイン」もしくは「ブース装飾」などの言葉でネット検索すると、多くの会社が出てきますので、その中から自社に合いそうな会社を選ぶことになるのですが、大抵の会社はどんな展示会でも対応可能です。しかし、その設営会社の規模などによって、実質的に対応できる展示ブースのサイズ等が変わってくるので、気になった会社に一度話を聞いてみるとよいでしょう。ネット検索をしていると、それぞれの会社で何が違うのか、一見すると分かりにくいかと思います。そこで、本稿ではかなりざっくりとした分け方になりますが、依頼先の種類を大きく3つに分けてご説明したいと思います。

「広告代理店」に依頼する

まず、1つ目は「代理店」(広告代理店や自社で設営会社を持たず、設営を取り仕切る立場にある企業)です。自社で木工の工場をもっておらず、基本的に規模の小さな設営会社にブース施工を依頼して製作します。ブースデザインは、ブースデザイナーにデザインを依頼し、その他、コンパニオンを手配ししたりチラシを制作したり、といった「出展社の出展に関わる業務のほとんど全て」を代行します。主に大手企業などの大規模な企業を顧客対象としているのが特徴です。出展に関して必要なことは一貫してお任せすることができるので、非常に安心感を持って依頼することができます。
一方で、代理店に依頼した場合、担当となるディレクター(又は営業担当)の力量によって、ブースデザイナーや設営会社に意図が伝わりにくい状況が出てくるため、どのような経験を持つ人が自社の担当者になるかが、出展の成否を分ける重要なポイントになってきます。
また、デザイン、設営作業等を外注することが多くなるため、一般的には費用が高くなる傾向にあります。

「設営会社」に依頼する

次に、「設営会社」です。規模の大小はありますが、自社で木工製作の工場やシステム部材を保管しており、ブースデザインの依頼があると、自社内にいるデザイナー、もしくは外部に提携しているデザイナーにデザインを考えてもらい、出展社に提案し、その上で、自社の工場でブースをつくる流れになります。この場合の利点は、自社で工場を持っていることで、木工ブースの場合には、細かなつくりに対応をしてもらえます。費用的には、自社で工場を持っている分、設営費を安く提供することが可能となります。基本的に、自社内でブースづくりを完結できるため、代理店・デザイン会社と比べて費用の融通を利かせやすいのです。
一方で、あくまでも設営会社なので、デザイナーの立ち位置が「工事担当者」より低い、という特徴もあります。つまり、デザインが「施工の論理」によってコントロールされるため、デザイン性を追求する、というより、効率的な製作方法が優先され、場合によってはデザイン性が低くなってしまう可能性があるのです。これは、担当となるそのデザイナーの社内での立ち位置と能力に左右されます。大手の設営会社の中には、社内でも力のあるデザイナーがブースをデザインすることもあり、そんな時にはデザイン性の高いブースが出来上がりますが、駆け出しのデザイナーが担当になると、どうしても「施工の論理」が優先されてしまうのです。ですので、デザイン性を重要視する出展社の場合、担当者によっては、不満足の結果になる可能性があります。ただし、大手の設営会社になると代理店と同じような動きも行っており、展示会出展に関係する様々な物事の手配・代行が可能となります。大手企業からの依頼も多く、しっかりと全方位的に対応ができる、という利点が大手の設営会社にもあるのです。

設営会社は自社で木工工場を持っている点が特徴


「デザイン会社」に依頼する

もう一つの依頼先としては、当社のような「デザイン会社」があります。とは言え、実は、展示会業界において、展示会ブースを専門に行うデザイン会社はほとんどありません。まして、空間デザインを行う会社としては数えるほど、と言ってもよいと思います。展示会業界では、デザイナーの立場がそんなに高くないため、独立して活動しているデザイナーのほとんどは、設営会社の下請けか外注先となっており、デザイナーがデザイン会社を立ち上げ、外注ではなく、自ら出展社からブースの依頼を受けているところは少ない、というのが現状です。
そのような状況ではありますが、デザイン会社に依頼する際のポイントについてお伝えしましょう。デザイン会社が主導の場合、メリットはとにかくデザインが優先される、ということになります。しかし、そこには注意が必要で、デザイナーの中にはブースや店舗のデザインを「自身の作品」として考え(それはもちろん当然なのですが)、その作品性の追求をクライアント(=出展者)が結果を出す、ということよりも優先してしまう、というデザイナーが時々います。これは展示会業界よりも店舗デザインの業界の方が顕著かもしれません。このような場合、店舗もしくはブースはデザイン良く、綺麗にできたけど、結果はほとんど出なかった、という状況になってしまいます。能力のあるデザイナーは結果を出しながらもデザインがよい、という空間デザインを行います。そして結果を出すことは当然のこととして、その上でどこまでデザイン性・作品性を追求できるかが、本当のデザイナーの能力なのだと感じています。そのようなデザイナーかどうかを見極めることがデザイナーに直接依頼する場合には重要になってくるのです。

デザイン会社への依頼は、デザイン主導でブース検討が可能

結局は「人」が重要

さて、ブースを依頼するいくつかの方法をお伝えしました。展示会への出展を決めると様々な会社からブースをつくるための営業が来るようになります。また、会期が始まると、設営会社等の営業が数多くブースに訪れることでしょう。その中で、今後の出展において、どんな会社にブースを依頼するべきかという課題はなかなか難しい判断と感じるかもしれません。
 個人的には、会社の規模よりも、結局は「どんな人が担当者でどんな人がデザインをするか」、だと感じています。それもできれば、プラス思考で前向きな人、です。ビジネス的にしっかりとしているのはもちろんですが、この「前向きさ」が展示会担当者には重要だと思うのです。展示会の目的はまず成功することです。展示会出展に成功するかどうかを考え、悩み、場合によっては不安に感じている出展者が、例えば「当社の商品、出展して大丈夫でしょうか?」という質問をしたとします。そんな時に、「大丈夫ですよ!」と自信をもって答えることができることが大切です。逆に、「さあ、どうでしょう・・」と他人事として答えたり、「出てみなければ分かりませんね」と曖昧に答えたり、更にはネガティブに「分かりません・・・」と答えられたら、会期を前にした出展者は不安になってしまうことでしょう。展示会ブースを考える、ということは、出展社の方々と二人三脚で展示会に向き合う、ということを意味します。そんな頼られるべきパートナーが「後ろ向き」ではいけない、と思うのです。どんな会社でも、前向きな人、後ろ向きな人はいます。どんな不利な状況でもプラスに変換して対処して、出展者を安心させることができる前向きさ。企業の大小や、有名無名ではなく、担当になってくれる「人」でブース設営を任せる先を決めるべきではないか、と常日頃感じています。


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