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空き店舗対策。避難所。簡易家具。「展示会技術」の応用「3つの可能性」

展示会技術」という言葉について。

展示会の業界にいる方もそうでない方も、「展示会技術」という言葉を聞くと「?」となると思います。
ここでお伝えしている「展示会」とは東京ビッグサイトなどで行われている商談会としての展示会のこと。今はオリンピックやコロナの影響であまり行われてはいませんが、通常では毎週のように様々な業界の展示会が行われています。

ここでいう「展示会技術」とは、私が使っている自前の用語なのですが、展示会関係者が持っている「展示会を実現するためのノウハウ」、というような意味になります。この言葉も、今の展示会ブースデザインの仕事をするようになってから考えるようになりました。

では、その「展示会技術」とは何なのでしょう?
特筆すべき大きな特徴は「スピード感」です。

建築・インテリアの業界から展示会の業界に移ってまず驚くのは、「施工の速さ」。
通常、展示会は2日間の準備日と3日間の会期で構成されています。
準備期間は2日間ありますが、2日目は出展者の方々が商品などを並べるため、実質ほぼ1日でブースを作り上げるのです。

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例えば、上記の写真は2021年2月に開催されたホテル・レストラン・ショーでのブースです。サイズは、幅12m×奥行3m×高さ4m。
このブースを実質1日で作り上げ、2日目は出展者の方が商品陳列を行います。会場にはもっと大きなブースもあります。
これらを実質1日で作り上げようとすると、設営会社の方にはかなりのスピード感が求められるわけです。

そのスピード感は建築・インテリアの世界と比較しても格段の速さとなります。
例を挙げると、6畳の部屋の壁面に「壁紙」を貼るとしましょう。
インテリアだと、初めにパテ処理を複数日に渡って行った後にビニルクロスを貼ることになりますが、6畳の4方向の壁全面にクロスを貼ろうと思うと、何時間かかるでしょう。
1人で1日、と言わないまでも数時間は掛かります。
しかし、展示会だと10分から20分。いや、もっと短いかも。
このスピード感は、十分に「特殊能力」と言ってもいいのではないか、と私は考えています。

最近、この施工(展示会では設営と言う言葉をよく使います)の「速さ」や壁面などの(簡易な)「つくり」自体、今の社会の様々な場面で応用できるのではないか、と思うのです。

展示会技術の応用

例えば、商業施設内にある店舗。
通常のように作らず、展示会ブースのように作る、という考え方も「有り」なのではないかと思います。
試しに、商業施設のワンフロアを想像してみてください。
土日の営業が終了して、月曜日が休み、と仮定しましょう。
火曜日にお客さんが来た時、「全ての店舗が入れ替わっていた」ら。
面白くないですか?
1か月単位で店舗が入れ替わる商業施設、とか。
展示会ブースが3日で終了することを考えると決して非現実的なことではなく、将来はあり得るかもしれません。
とは言え、「1日の作業時間だけではさすがに無理です!」という設営会社さんの声が聞こえてくるようですが・・。
そこは、少々誇張して書いてます(笑)

他にも、展示会技術で「簡単な家具」をつくる、という発想も。
展示会ブースは全てを簡易に作ります。
基本は20×30の小割(棒状の木材)で骨組みをつくり、その両面に2.5㎜の薄ベニヤを貼ります。そうしてできた「パネル」で壁面をはじめ、展示台などを構成していくことになります。

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当社はブースで使用する商談机もその展示会ブースに合わせて作ってしまいます。例えば、上記の写真は商談コーナー。椅子はレンタルですが、机は木工で制作しています。
この発想を活かせば、家庭内の家具も、簡単でいいなら展示会技術で作ってしまう、という発想も有りなのかな、とも思います。
造作家具とDIYの間くらいの位置づけで。
オリジナルの家具を作るほどじゃないけど、オリジナルでほしい、という時って、意外に多いと思うのです。
実際、当社の事務所は、知り合いの施工会社さんにシンプルに作ってもらいました。また、展示会で実際に使用した小物類も捨てずに使用しています。展示会施工会社による簡易家具サービス。そんなものもあってもいいかな、と。
こんなこと言うと、造作家具屋さんから、「やめて」と言われそう、なのですが。真意としては「オリジナルでつくる」という行為を「もっと身近に感じてもらう」。これを意図しています。

他にもあります。
例えば、災害時の避難所、とか。
なんせ、一日で空間作ってしまう、そんな作業に慣れているわけですから、災害時の体育館での避難場所の「瞬間的な構築」などにも向いていると思うのです。これはビジネスになる、というより社会貢献としての観点のものですが、うまくシステムができれば社会の多くの人にとって影響があることなのでは、と考えています。

この展示会技術でつくる避難所。作るのであれば、ただ床と囲いをつくるのではなく、避難された方同士のコミュニケーション手法やプライバシーのあり方などにも配慮すべきと考えています。ある程度「型」を作っておけば、展示会関係者であれば、比較的容易に対応できると思うのです。

この避難所計画は近いうちに私自身も携わってみたいと考えています。
正直なところ私は避難所での生活をしたことはありません。ですので、実際に検討するには、避難所を経験された方へのヒアリングが必要でしょうし、その上でコミュニケーション手法、そしてプライバシー確保の方法を検討した方がよいかと思います。
そして、どこかの体育館をお借りして、事前に実験と検証を行う。
そうしてできた「仕組み」を、全国の自治体と展示会関係企業に共有して連携しておけば、日本中どの地域でも避難所が必要な時に迅速に動けるようになることでしょう。

と言ったようなイメージで、展示会業界関係者が持つ「技術」は、展示会だけでなく様々な場所で応用可能だと考えています。
もちろん、実際に実現していくためには、様々な課題があるでしょうが、どれも不可能なことではない、と思います。

これ以外にも「展示会」業界ならではの特徴で、今の社会、他の業界で役に立つことがあるのではないかと考えています。
展示会の業界は、まだまだ社会的な認識が薄い業種ではありますが、その展示会の認知を広めるためにも、他の業界とのコラボレーションが今後行われていくといい、と感じています。


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