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ダウン・ツ・ヘヴン

積んでいた『ダウン・ツ・ヘヴン』を読み始めたら面白く、サササッと読み終えてしまいました。

本書面白かったのですが、何がどう面白かったと感じたのかが、いまいち表現できません。
グイグイと読み進められるということは、面白いと感じているからこそなのですが「何が?」と考えてみても、具体的に言葉に表せないのがもどかしい。

ストーリーはとてもシンプル。
エースパイロットで有名になってきたクサナギが会社の中でも特別扱いを受けるようになってきて、以前のように戦闘機に乗って飛ぶことが出来なくなってきてしまいます。
会社としてはエースで広報にもなるクサナギを戦闘で失いたくはない、なのでなるべく出撃の機会を減らしたいらしい。
「楽しい時は空にいる時、楽しくない時は地上にいる時」と断言するほど、戦闘機で空にいるのを好むクサナギなので、ちょっと鬱憤の溜まる日々を過ごしています。
そんな中、尊敬するあるパイロットと1対1の模擬戦をする機会が出てきて、ご機嫌になってくるクサナギさん。そのエースVSエースみたいなドッグファイトシーンがクライマックスに描かれる流れです。
この小説は、もうそのシーンのための1冊、と言っても過言ではないものでした。

面白さでひとつ思うのは、1作目2作目と読み進めてきて、登場人物や世界観にも慣れてきたという点。
スカイクロラシリーズは、ちょっとファンタジーな小説であり、掴みどころが無いキャラクターばかり。2作目まではフワフワと読んでいたかもしれません。
3作目のストーリーはラストシーンに突っ走っていくようなシンプルさがあるので、グイグイと波に乗るように読めたのでしょう。
その波に上手く乗れた理由が1.2作目を読んでいたからだとすれば、シリーズものとして優れている小説なんだろうなと思います。
ただ、もしこの3作目『ダウン・ツ・ヘヴン』が最初に読む小説だった場合、最後クサナギが生きて帰れるのか?と先の読めない中でページを捲れるので、それはそれで楽しめそうです。

(時系列では1作目は3作目の後の話。1作目にもクサナギは出てくるので、ダウン・ツ・ヘヴンの戦闘ではクサナギは死なないと把握しつつ読める)

印象に残ったセリフがひとつありました。
戦闘機は大丈夫なのに、ジェットコースターがダメなのは何故か?と質問されたクサナギが「ジェットコースターにはレールがあるからあんな無理な動きができる。戦闘機はレールが無く、周りには空気しかない、無理な加速度はかからない。空気のクッションに囲まれているようなもの」と答えるところでした。
スカイクロラシリーズにはテーマとしていくつもの対になる事柄が設けられている気がします。
空と大地、子供と大人、空想と現実、生と死、などなど
このクサナギのセリフには、それらテーマに紐づくクサナギの考え方が詰まっているような気がして、印象深く残りました。


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