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チルドレンゴッドの裁き 制裁⑦ こどものかみさま

ついに最終話です。
...結構わけわからんくなると思うので、来週解説の記事上げます。
あと最後に重大発表

「十月十六日、午後二時五十三分、現行犯、逮捕!!」
宏司はまだ計画がどうたらこうたらと言っている。そんな宏司が連れて行かれるのは、なんだか愉快だった。
しばらくして、横田さんが戻ってきた。
「この度は、操作の協力、ありがとうございました」
「あ、いえいえ、こちらこそ、『チルドレンゴッド』、捕まえることができてよかったです」
「あのままだと、もっと被害が広がっていたかもしれませんね...」
横田さんはジャケットのポケットに手を突っ込んで、どこか遠くを見ていた。私も同じ方向を見てみた。だが、そこにあるのはビルが立ち並ぶ街の風景だけだった。
「長かったような、短かったような---」
「結構短かったですよ」
「そうですね。すぐに事件が解決できてよかったですよ」
ブーッ、ブーッ、と音をたてて、横田さんのポケットが震える。横田さんは震えるポケットの中からスマホを取り出した。
「あ、日村から電話だ。...もしもし。...そうか、助かったか!...おう...わかった。伝えておくよ」
横田さんは電話を切った。
「日村さん、なんて言ってました?」
「子供たちみんな、助かったようです。筒井も捕まえることができました」
「本当ですか!!じゃあ大司も...」
「助かりましたよ!」
私はほっと胸をなで下ろした。ここまで頑張ってきてよかったぁ...。

その日は、ママ友同盟のみんなで飲んだ!宏司のことをなんか言われるかと思ってたけど、何も言われず、いっぱい楽しめました。きっとみんな、自分の子供が助かった嬉しさでいっぱいなのだろう。

次の日、宏司の親に話をしにいった。もちろん、離婚の話。ふたりとも涙を流していた。
「私がっ...あんなことをしたからっ...!!それの復讐でっ...!!」
泣きながら言葉を絞り出す宏司の母。そういえば、宏司も復讐がどうたらって言ってたような...。
「復讐って、何なんですか?」
思い切って尋ねてみたが、二人は声を上げて泣いているだけで、何もわからずじまいだった。
サスペンスドラマとかだったら、ちゃんと真相は明かされるもんだけど、現実はそううまくはいかないよね。

少し肌寒くなった十月。「チルドレンゴッド」殺人事件は、幕を閉じた。



なんて、私の勝手な妄想に過ぎない。ただ、宏司の手にある黒い拳銃で頭を撃たれる寸前に考えただけの、理想の結末。
ああ。そうだよね。現実はフィクションじゃない。あんなにうまいこと事が進むわけじゃない。
私の人生は、バッドエンドだ。
意識が薄れていく。最期に見えたのは、ママ友同盟と警察二人の死体の山だけだった------

-------------------プツン----------------------------------------------------------
二千二十一年、十月十六日、午後三時、藤村三日子、ママ友同盟、そして、横田と日村の人生が終わった。
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『「チルドレンゴッド」殺人事件、終わる。

長きにわたって世間を騒がせた「チルドレンゴッド」殺人事件は、
一般人の死者 二十一人
子供 一人
警察関係の死者 二人
という結果で幕を閉じた。かと思われたが、二日後の十月十六日、一般人と警察らの遺体が見つかった場所から二キロほど離れた廃工場で、「チルドレンゴッド」が誘拐したと思われる九十八人の子供の遺体と、共犯と思われる警察の遺体が見つかった。』
(ネットニュース 『NEWSカンパニー』の記事より引用)

オレは親にすべてを決められていた。
主に進路について。
小学校の頃、クラスである漫画が流行っていた。題名は忘れたが、みんなが「面白い!」と言っていたので、オレも少し気になっていた。だがもちろん、そんな漫画を読むことなど許されていなかった。
オレの母はいわゆる毒親だった。口を開けば「あなたは研究者になるのよ」と言われる。大量のドリルの山。オレはロボットのように、言いつけどおりにドリルをこなした。いい中学、いい高校、いい大学。世間が決めた「いい場所」に、オレは少しずつ染まっていた。
そんなオレはついにストレスが爆発し、犯罪を犯した。と言ってもただの万引きだ。
最初の方に書いた、流行りの漫画を本屋から盗った。幸い、誰にもバレなかった。大きな高揚感に包まれたとき、悟った。ああ、オレは犯罪の面白さに目覚めたんだ、と。
漫画は母に見つかり、怒鳴られた。そこからオレは、友達を一切作らずに勉強に励み、(励むように強く言われ)俗に言う陰キャになった。
オレはある野望をいだいていた。「こどものかみさま」になること。
オレのように苦しんでいる子供を救いたいと、そう思っていた。
幸いオレは犯罪に成功していた。(と言っても小さい犯罪だが)そして地震に満ち溢れていた。オレなら成功できる。そう確信していた。
持ち前の頭脳を生かして、クローンを作れるまでに成り上がった。
何年の時間を使っただろう?まあ何年だとしても、熱が冷めることはなかったのは確かだ。
そして見事に成功を収めた。
「こどものかみさま」になったのだ。「チルドレンゴッド」になった...。
オレの計画は成功するはずだった。子供を人質に取り、親へ恐怖を植え付けるはずだった。でも、邪魔が入った。三日子。アイツのせいで無駄な死体を出してしまった。
まあいい。おかげでより多くの人に、オレの苦しみを伝えられた。
オレの人生を苦しめた親、
オレの計画を狂わせた三日子、
ママ友同盟やなんやら馬鹿な名前のグループの奴ら。
オレはお前らの思い通りにはなんねえぞ!!

オレの人生は、ハッピーエンドだ。

(匿名で投稿された掲示板の記事より引用)

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「ねえねえ、『チルドレンゴッド』って知ってる?」
「ああ知ってる知ってる。『こどものかみさま』がどうたらこうたらって言ってたやつでしょ?」
「そうそうそう!」
「なんで急にそんなこと思い出したの?」
「いやね、今日はさ、『チルドレンゴッド』殺人事件から一年の記念日じゃん」
「それ、記念日なの...?」
「まあ、いいから聞いて。それでなんか被害者を弔うための式とかやってるじゃん。それがニュースになっててさ」
「へえ、依頼したいの?」
「するわけ無いじゃん!私別に改心したいわけじゃないし。あと、依頼って親がするもんでしょ」
「いや、なんか今は子供の方から『親の改心』の依頼ができるらしいよ」
「...するの?」
「なんで?」
「イヤ、だって毒親なんでしょ?」
「私の親?そうだけど、それでそんなこと言ってんの?」
「依頼、なんか...しないよ、ね?」
しばらく沈黙。
「さあ、しないんじゃない?」
「良かったあ!信じてるからね?」
「どうだろね。わかんないよ」
「ちょっとなにそれ、怖いんだけど」
「私は何するかわかんないよ~」
「ええ、ちょっと、ほんとにやめてよね!!」
「どうかなあ~?」
「信じてるからね!なんかあったら私に言ってよ!」
「わかったわかった」
ハハハハハハ!......
(『チルドレンゴッド』殺人事件から一年後にあった、女子高生の雑談)

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物語は、ハッピーエンドで終りを迎える。

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チルドレンゴッドの裁き 完

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