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【妖可視〜あやかし〜】研究レポート② 人の心は妖怪に影響を与えるのか

こんにちは。ペンシルの研究開発機関、ヒューマナライズマーケティング研究室です✍️

今回は、以前ご紹介した「妖可視(あやかし)プロジェクト」の研究第二弾。そのレポートをお届けします。

要約

実際は存在しない妖怪であっても、その情報を現実で遭遇する現象と結びつけることで、妖怪を意識させることが可能であるかの実験を実施。実際は存在しない情報としての妖怪であっても、想像される見た目・特徴の共通認識度を高めることで、存在を意識させることができる可能性が示唆された。また、物理的干渉を伴い、原因が不確かな現象ほど妖怪の存在を感じる可能性も示唆された。

図2

⇒今回は「二.人の心は妖怪に影響を与えるか」

[調査]  - どうやったの?

【対象】
人数  :14名
年齢範囲:23〜40歳

【方法概要】
●日常的に遭遇する機会の多い不思議な現象を提示
●その際、架空の妖怪を作成し、その不思議な現象は作成した妖怪のせいだと説明

 以下、提示した現象と妖怪

『すきま』
現象:夜家に帰り着いたとき、閉めていたはずの扉やふすま、窓がいつの間にか少し開いていたり、すきまが急に気になったり、すきまからの視線を感じる
妖怪:人の家を転々とする妖怪で、押し入れや食器棚など大小様々な空間に住まう。人がいない間に出てきて遊んでいる。たまにその妖怪はすきまからこちらをじっと見つめている。目が合ってしまうと…
『手遊び』
現象:手近にあるものを触ったり手遊びしたりしてしまう
妖怪:その妖怪は、人から可愛がられることが好きで、ものに乗り移ってかわいがってもらおうとしている
『触られた感覚』
現象
:寝ているとき、体になにかが触れた気がして起きるも何もいない
妖怪:その妖怪は夜中に人と遊びたくて人を寝かさないようにいたずらする。しかしその妖怪と一緒に遊んでしまうと…
『探しもの』
現象
:ふとした時に探しものが見つかる。探してるときは見つからないのに
妖怪:気まぐれな妖怪で、人のものを隠すイタズラをしたり、探しているものを見つけてくれたりする
『物音』
現象:寝ているとき、乾いた音が突然鳴り響く
妖怪:その妖怪がいるときは乾いた音は響く。他の物音は聞こえない。その時誰かに話しかけられても返事しないでください。もし返事をしてしまうと...
『匂い』
現象:帰宅してドアを開けた時、いつもと違う玄関の匂いがする
妖怪:その妖怪は自分が好んだ場所に自分の匂いを残していく。自分が好んだ場所に住まう人間には幸せをもたらすという

●1週間の間、不思議な現象にどれくらい遭遇したかを記録するよう指示
●1週間後に、アンケートで以下を質問した
 ・「どの程度遭遇したか」
      (0:全く遭遇しなかった[0回]、1:少し遭遇した[1回〜3回] 、2:遭遇した[4回〜6回]、3:とても遭遇した[7回以上 ] )
 ・「その際、どの程度妖怪を意識したか」(0:全く意識しなかった 〜 5:とても意識した)
 ・「その際、どの程度妖怪の存在を感じたか」(0:全く存在を感じなかった 〜 5:とても存在を感じた)
 ・「その妖怪はどのような見た目をしていると思うか」(自由記述)

[結果]  - どうなったの?

要約統計量を以下に示す。

妖怪2_要約統計量

【分析の結果】

①意識度&存在度/回数
遭遇した人のうちどの程度の人が「少しでも意識」「少しでも存在を感じたか」の集計結果を以下に示す。

妖怪2_割合 (1631774783683)

現象の遭遇者の数による「意識度」と「存在を感じる度」に一定の共通点は見いだせなかった。

②遭遇回数が増えると意識もするし存在も感じやすくなるかも…?
「どの程度遭遇したか」「どの程度意識したか」どの程度存在と感じたか」で相関分析をおこなった。

妖怪 (1633497266835)

●「どの程度遭遇したか」と「どの程度意識したか」に弱い相関が認められた
●「どの程度遭遇したか」と「どの程度存在と感じたか」に弱い相関が認めれた
●「どの程度意識したか」と「どの程度存在と感じたか」に強い相関が認められた

③意識するのは遭遇がトリガーか
各現象に遭遇した人としてない人で意識度・存在度に差があるかを明らかにするためにt検定(welch)を行った。

<どの程度意識したか>

妖怪2_意識要約統計

妖怪2_意識t検定

●『すきま』のみ、1%水準で有意な差が認められた

<どの程度存在を感じたか>

妖怪2_存在要約統計

妖怪2_存在t検定

●『探しもの』に、5%水準で有意な差が認められた
●『物音』に、5%水準で有意な差が認められた

⑤想像する見た目はある程度は一致するかも…?

『すきま』

妖怪2_すき間一致

●57.1%が、目に言及した見た目を想像した
●35.7%が、小さい姿を想像した

『手遊び』

妖怪2_手遊び一致

●50.0%が、小さい姿を想像した
●35.7%が、かわいいイメージのある姿を想像した
●21.4%が、形がないと想像した

『触られた感触』

妖怪2_触られた感触一致

●35.7%が、人形を想像した
●28.6%が、なにかしらが長いと想像した

『探しもの』

妖怪2_探しもの一致 (1632130398560)

●35.7%が、小さい姿を想像した

『物音』

妖怪2_物音一致 (1632130411302)

●28.6%が、無形を想像した
●28.6%が、男性を想像した
●14.3%が、小さい姿を想像した

『匂い』

妖怪2_匂い一致

●42.9%が、小さい姿を想像した
●28.6%が、動物・獣の姿を想像した
●28.6%が、匂いにまつわる特徴を想像した

想像する見た目の全体としての傾向としてはブレはあるものの、28.6%〜57.1%の間で姿・特徴の一致が認められた。

[まとめ]  - まとめると?

●現象の遭遇確率の高低で「意識度」「存在を感じる度」に違いはなさそう
●『すきま』に関しては現象に遭遇した人の方が遭遇していない人に比べて妖怪の存在を意識した
●『探しもの』と『物音』に関しては現象に遭遇した人の方が遭遇していない人に比べて妖怪の存在を感じた
●妖怪と結び付けられた現象との遭遇回数が多いほど、妖怪を意識する程度、存在を感じる程度が高まる可能性がある(相関関係であって因果関係なのかは不明)
●偽りの妖怪の現象と説明だけの情報を与えた場合でも、人が想像する見た目・特徴はある程度は一致する可能性がある

[考察]  - それでそれで?

目立つ特徴を考察していく

『すきま』に関してだけ、現象に遭遇した人の方が遭遇していない人に比べて妖怪の存在を意識してたが、これは『すきま』から想像される見た目・特徴の一致度が最も高く、57.1%と過半数を超えていることが原因である可能性が示唆される。イメージしやすい情報ほどその存在を意識しやすくなるのではないだろうか。

また、いちばん想像する見た目・特徴の一致度が高かった『すきま』の「目」に言及したもの(57.1%)に関しては、説明として「視線を感じる」という具体的に「目」を想像させる文言が入っていたことが原因であろう。このことから、想像させたいもの直接的ではなく間接的に表現し提示することで一定数は同様の特徴を想像させることができる可能性が示唆された。

これらのことから、想像させたいもの(目的)を間接的に表現することで、その目的を一定数の人に共通認識として想像させることができ、その共通認識の一致率が高いほどその目的を身近に感じやすくなるという可能性が示唆された。

しかし、「視線」というかなり「目」に寄った表現であっても、約6割の人しかイメージしないという点は予想に反していた。この一致率をより高める要因、また下げてしまう要因については今後さらに研究を推し進めていく余地がありそうだ。

これらが明らかになることで、今後の広告やコピーライティングなどの戦略に活用することができるようになるだろう。

また、「存在を感じたかどうか」に関しては、『探しもの』と『物音』に関して、現象に遭遇した人の方が遭遇していない人に差が認められた。この結果となった原因として、この2つが他の現象に比べて現実世界に「物理的に干渉してきて、原因を特定しにくい」という特徴を持っていることが考えられる。

『触られた感触』も物理的に干渉してきているが、説明が「寝ているとき」と限定してしまっているため原因と「布団などの布」に求めることができてしまう。

また、『手遊び』も物理的に干渉してくるが、『手遊び』に関しては自由記述にて「無意識におこなっているから、かなりやっているのは分かるが回数が分からない」などの意見が多くみられた。無意識下では存在を感じるには至らないのだろう。

このことから、原因の想像の余地を残し、無意識でない現象のほうが妖怪の存在を強く感じさせることができる可能性が示唆された。

理論的な飛躍しているともいえるため、この実験結果から得られた新たな仮説の裏付けの強化と、新たな実験を行うことが必要だ。

[課題]  - とはいえ…

今回の実験には課題、問題となる点も多々存在はしている。とくに、楽観的想定から調査設計が甘くなっていた点は、実験結果の信頼性や確度に大きな影響を与える結果となった点は反省すべき点である。今後の実験にあたっては、計画・設計を吟味しその信頼性をより高いものにしていく。

しかしながら、妖怪が人に与える影響についての認識を改め、次の仮説構築にもつながる気づき・視点を得られたという点では有意義な結果であったといえる。

[今後]これからどうするの?

実在しない妖怪であろうとも情報としての妖怪を事前に提示しておくことで、事象と結びつけて意識させることができる可能性人がその情報によって共通の特徴・姿を想像する可能性を垣間見ることができた。

つまり、偶像としての妖怪を生み出すことができる可能性があるということだ。(まだ断言できるものではないことは重々承知だが、浪漫として言わせていただきたい)

よってこれからも妖怪の研究は継続していくつもりだ。

次回は「三.妖怪は人の心の写し身なのか」を明らかにするべく、人の感情等によって、そのときどきに気になる妖怪は異なってくるのか?などのアプローチから実験を進めていく。
(実験に参加したいという強者がいれば、是非コンタクトをはかっていただけると幸いだ)

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