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結婚してくれ

プロポーズされた。彼女のいる男友達に。

二つ前の記事で出した、距離をとった男友達(Aとしよう)と飲んできた。会うのはおおよそ一年振り。他にも仲のいい男友達(こちらはBで)を交えて三人で、久しぶりに顔を付き合わせた。

「女」として見られていることを感じて距離をとったことを説明したくて、あのとき感じた「女として見られている」という感覚が真実だったか確かめたくて、この話題は絶対にしようと決めていた。

でも、聞くまでにいろんな感情が動いて、それは手が震えるほどで、三軒目で相手が相当に酔うまで聞くことができなかった。長時間人と喋ると身体にくる私は、帰宅し3時間以上経過した今も頭が痛いしへろへろ。

男友達二人に同じように聞いた。私は「女」として見られているのか、「女友達」という感覚ではないのか、と。

二人とも、「すごく近い、古い友達。でもあるけれど、そこと女としての境はとても薄い。あくまでも女性である」らしい。

でもその先は少し違う返答。Bは「ぺんとはこの距離感でいることが心地よくて、同士のような感じがする。これより離れるのも寂しいし、かといって近づくのもなんか違う」とのこと。

一方Aは、「限りなく友達の範囲だけど、いつだって彼女になり得る。ぺんほど深く話せる相手もいない。結婚するならぺんがいい」とのこと。

その流れでようやく聞くことができた。一年前、私を女として見ていなかったか、と。実際にはそんなかっこいいセリフを言える人間ではないので、「私でいいかと妥協した瞬間がなかったか」と聞いた。

Aは「自分の波はあるけれど、確かに不健全な時期があった」と答え、すぐに逃げるように煙草を吸いに行った。あれはあえてあの時吸いに行ったんだと思う。

今の彼女とは、「結婚はないな」と感じるらしい。三人で話しているなかで、やっぱり「話ができる」ということが共に生きていくうえで最も重要であるという答えになり、そして「だから俺はぺんと結婚したいんだ。結婚してくれ」というAからのプロポーズにつながった。

あまりにもカラッと言い放つプロポーズだから、誰しも冗談だととるんだと思う。

私の受け取り方としては、冗談半分本気半分。そんなところだと思う。今すぐの結婚なんて考えてはいない。彼女と付き合っているのも楽しい。でもいずれ結婚するのであれば深く話せる私。そんな感覚をぼんやり持っているんだろうな、と推測してみる。

私もそう考えることがあったから。元恋人と別れる前、自分の感情を出せない元恋人よりも、なんだってさらけ出せるAとだったらきっと楽に、楽しく過ごせる気がしていた。恋人と別れてしばらくして、外に連れ出してくれるAと何時間も深い話をして過ごして、やっぱり気の置けない、本当に楽な相手だと感じた。

それでも私は、男の部分が見えた途端に怖くなってしまうし、連絡も取れなくなるほど引いてしまう。今日だって、帰り道にちょっと調子に乗ったAが物理的に距離を縮めてきて、「やめて」と本気で冷静に声を出した。

そもそもこの私に注意が向いている時間、彼女がどう思うだろうか、と私は彼女に申し訳なく思ったし、私だったら嫌だな、とそんなことを考えていた。

でもAのなかで、完全に別物なんだろう。恋愛と結婚は。背負ったリュックのなかには、私たちと合流する前に買った、彼女へのクリスマスプレゼントが入っていて、「彼女の喜ぶ姿が好きだ」と言っていたから。

大事にしていないわけではない。それはそれ、これはこれ。そういう人なんだと感じた。

でも、AもBも私のことは「あくまで女性」と認識していたから、私は距離感にはこれからも気をつけないといけないなと思い知らされた。私のことを「同士」だと、「言い方次第では傷つけてしまうかもしれないけど、恋愛対象ではない」とさえ言ってくれたBだけど、結局、男はあくまでも男で、女はあくまでも女。

かなり紳士で、真摯な態度で接してくれるBでも、本当の腹の中は誰にも覗けない。なんなら、カラッとプロポーズしてくるAの方が、わかりやすくて別の意味で紳士なのかもしれないな、なんて。

そんなこんなで、すっきりはしたかもしれない。自分ではとても「女として見られている」なんて思えないけれど、でも男から見たら私は「女」である。どんなに古い友達だとしても、そこは変わらない。

AもBもすごくいい奴だし、それに私のことをすごく褒めてくれる。純粋に、私は大丈夫だと認めてくれる。距離感さえ誤らなければ、私にとって必要な人であることには変わりない。そんな深い話をしても、決して嫌いになったりしない。お互いに。

やっかいなのが、愛着の問題がある私は、そういう理解に至った相手に対しても、「ハグされたい」という欲求が湧いてしまうこと。相手から距離を縮められると本気で拒否するくせに、あたたかさはどうしても求めてしまう。

実際にはしない。どうしたって相手には私の意図とは異なる意味になってしまうことがよりはっきりしたから。性的な意味ではなくて、あたたかさがほしい。でも男性がいい。でもでも「女」としてではない。きっとこれを理解してくれる人はごく一部。

今もわずかな頭痛とものすごい身体のだるさが引かないけれど、書かずにはいられなかった。いつも以上に長くなってしまったけれど、読んでくれたあなたに深いお礼を。

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