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苦手が多い私の一日

決して、辛い日々を送っています、なんて訴えたい訳じゃない。ただ、こういう苦手な部分がはっきりしています、ということだけ。

カウンセリングでわかったHSP気質・愛着障害のほかに、中学生の頃にパニック障害と診断を受けたことがある。そして、飲食店で働き始めて自覚した嘔吐恐怖症。人より少し、苦手なことが多い。

都会へ出勤したある金曜日の一日を記録として残してみる。

朝、目を覚ますとまず歯の痛みを感じる。噛み締めが癖になって、夢見も悪い。私はよく夢を見る。そしてそれをよく覚えている方。噛み締めが酷い日は、歯が折れたりする夢を見る。いいことも悪いことも、両方。たぶん、夢のなかでも整理しようとしているんだと思う。

そして、微かなめまいが続いていることを感じる。デスクワークになったからかストレスか、自律神経が乱れちゃって。肩こり首こり腰痛も酷い。とても20代半ばじゃないな、と自分に呆れたりする。少しでも改善させたいと、ヨガに通ったり軽い筋トレをしたり。なかやまかきんに君の「世界一楽な筋トレシリーズ」がおすすめ。

そうそう、自律神経が乱れているからか、体温調節が極端にできない。外の寒さ、電車の中の暑さ、湿度の変化。汗が出ないのですぐにのぼせてしまうし、冷え性でもある。重ね着をして、首元まである服は避ける。首になにかがあるのも苦手だし、なにより暑くなってしまった時にどうしようもない。だから着る服は大概決まってくる。

会社へは電車を使う。電車の中は刺激が多い。話し声、音漏れ、ガムを噛む音、香水や食べ物のにおい、周りの人との距離、車内の温度や湿度。気になるときは本当に全てが気になる。だからイヤホンとハンドタオルは忘れずに。忘れたときの絶望感たるや…。

高校生の頃から使い慣れた電車だけど、敏感さに磨きがかかっているときは、プラスで不安と恐怖がついてくる。中学生の頃に診断されたパニック障害。正直、私自身はこの病気ではないと思っている。または、かなり軽度。というか、病名なんてどうでもいいのだ。

私は疲れると、過呼吸が出る。ただそれだけ。

この前、通勤時の電車が立て続けに止まることがあった。20分で着くはずの乗り換え駅に、1時間かかった。駅の間で止まったり動いたり。開くことのない扉。閉じ込められている状態。それがかなりキツかった。心拍数が上がる。呼吸が浅くなる。「大丈夫。いつかは着く。止まってしまったら歩いていけるだろう。いつか出られる。大丈夫」そう繰り返した。

途中の駅にようやく着いて、前に座っていた人が降りた。途中だとしても一つ一つ動いていること、そして座って一息つけたことで冷静になった。そして気を紛らわすように眠った。眠れる時点で、十分落ち着いている。私は大丈夫。ただその日から、電車に乗るのが少し嫌になった。

そういう刺激や不安とともに、会社へ向かう。

  

私は広告代理店で、制作や校正の仕事をしていた。特に校正の仕事はとても向いている。自分で言うのもなんだけど、校正の担当になってからかなり頼ってもらえていたと思う。

私が勤務していた職場は、1フロアに10名ほどの全ての社員がいた。デスク同士に仕切りがあることが、ひとつ私の心を落ち着かせる。私のデスクには、ふわふわのちいさなムーミンのぬいぐるみとか、癒しグッズがいくつか置いてある。そして、冷蔵庫にはハイカカオのビターチョコレート。イライラしたときなんかに一口食べると、落ち着く。

隣のデスクの人が一番の悩みの種。

その人は、いつも寝ている。信じられないかもしれないけど、本当にずっと。

朝9時に出勤し、10時にはすでに寝息が聞こえる。寝てはマウスを落とし、その音で起き、また寝ては上司に肩を叩かれ起き、また寝ては私のデスクの引き出しを(あえて)強めに閉める音で起き…その繰り返し。

その人は、病気なんだと思う。偏見とかではなくて、ナルコレプシーなのか、はたまた睡眠時無呼吸症候群なのか、本当にそういう「寝てしまう」病気なんだろう。病院にも通ってると噂で聞いたしね。

それでもやっぱり、マウスを何度も落とす音、いびき、そして隣になってからより一層聞こえてくる荒い寝息。それらは私にとってかなりの刺激で。

でもその人は、その会社で何十年と働いている。きっとみんなもう呆れていて、そして気にも留めないのだろう。そのなかで私はずっとそれにイライラしている。流すことができない。私は器が小さいのだろうか。

きっと何を言ったところで、この人が寝ることは変わらないだろう。だから私は、少しでも自分の仕事に集中するため、イライラを態度に出してしまうまで溜め込まないために、その人が座っている方の耳だけに、イヤホンをして、歌詞のないサントラを大きめに流していた。片耳だけなのは、電話や他の人からの声にすぐに応答できるようにするため。

でもその対策は、早々に注意されることになった。怒られてはいないけれども、「この会社ではイヤホンは許されてないから、上に注意される前にやめようね」と。無断でやっていたのは私が悪い。でも、どうしてだめなのか。そこの理由はわからない。そこまで聞き返せなかった。怖かったから。

音楽がどうしても聞きたい訳じゃない。あの人の寝息をただ遮断したいだけだった。電話もとれるし、イライラも減って、周りに迷惑はかけていない。それなのになぜだめなのか、と。心の中で思うだけだった。

やっと言えた一言、「あの人の寝息が本当に我慢ならなくて」とだけ伝えることができた。すると上司は、すぐにまたその上に相談してくれた。が、そこがまたさらに私の悩みを増やす事になる。

  

またあの人が寝始め、そしてイヤホンを禁止された私は我慢の限界だった。イライラした勢いのまま、一息つかなきゃと外へ出た。そして気持ちを落ち着けて戻ると、一番上の上司が隣の人を会議室に呼び出し話をしているところだった。そして戻ってきた隣の人は、帰宅命令を受けていた。翌日も、休むよう言われていた。

そしてその日からその人は、遅刻早退欠勤が増えた。ある時会社の最寄駅でその人を見かけ、あぁ今日は出勤するんだと思い一足先に会社へ向かった。が、一向にその人は来ない。そしてまた休みの連絡が来た。会社へ来れなくなってしまったのだろうか。

私のせいだ。そう思った。私が我慢できないから、私が受け流せないから、あの人は会社に来れなくなっているのかもしれない。何十年と会社にいるということは、みんな我慢できているのに、私はどうして我慢できないんだろう。

会社に来ている時も、その人はやっぱり寝ている。きっと本人もどうしようもないんだろうな、と思って、私は片耳だけ耳栓をするようになった。髪で隠れるからちょうどいい。でもまだ合う耳栓を見つけられていない。合わない耳栓のせいで、圧迫感があり頭痛がする。そして片耳で音を拾い過ぎてしまうから、余計周りの音が気になってくる。自分の声のボリュームもわからない。だけどその人が来なかったら来なかったでまた、自分のせいだと泣きたくなる。私の中で、かなり毎日ストレスになっていた。

  

その隣の人は、よくいじられる人だった。何を言われても、寝ていることをネタにされても、へへへと笑って冗談で返すような人。それをいいことに、結構な言われ方をする。そして冗談ついでに、じゃぁ今日は失礼します、と帰ってしまう。

確かに寝ているこの人が悪い。私も迷惑被ってる。でも、そこまで言わなくてもいいんじゃないか、と苦しくなってくる。そりゃここまで言われれば、この人だってここにいるのがきつくて、だから帰るんだろう、と。まるでいじめみたいに。これはいじりではない。

私は何も言わずなるべく聞くこともせず、ただ無関心でいようとする。それでも加害者気分になってしまう。辛いじゃないかと、被害者気分にもなる。参加していない会話に、どっと疲れが押し寄せる。私も帰ろうかな、ふと思ったり。

  

これだけストレスが溜まってくると、苦手な範囲はもっと広くなってくる。

仲よくしてくれる先輩。とても優しくて、けらけらと笑う女性。私も大好きな先輩。でも、話しかけるのが怖くなる。その人の機嫌が伝わる。自分が敏感なときは、空気一つでその人の機嫌がわかる。他の人は平気で話しかけるなか、私は同じ作業をしているのがしんどくなって、自分の席へと戻る。

これは思い込みでもなくて、確実にその人はいつもとちがう。なんて説明したらいいかわからないけど、ちがう。

ほかにも、誰かの咳払いが気になったり、誰かのカバンを乱雑に置く音にびっくりしたり、誰かの香水に気分が悪くなったり、誰かが怒られている声に怯えたり、日常の刺激に慣れることはなかった。

  

そうこうしてなんとか終業時間までたどり着いたものの、そこでまた仕事を振られる。断ることもできる和やかな職場だけど、本当に外せない用事がある時以外は、性格上断ることができない。ただこの日は金曜日、用事はなくとも、絶対に早く帰りたい理由がある。

人に言うと「気のせいだ」と「みんなそうだ」と言われてしまう嘔吐恐怖症。朝まで営業する(だいぶカジュアルな)バーで働いている間に、自分がそうなのだと自覚せざるを得ない状況に何度も出会した。そして週末の遅い時間の電車に乗るのが怖くなった。

嘔吐恐怖症を「ただの気の持ちよう」だと言う人も多い。だけど気なんかでどうにかなってるならこんなに悩み怯えることはない。運良く?姉も同じく嘔吐恐怖症なので、わかってくれる人が身近にいてよかった。よく二人で、あれがしんどいとか、こんなときこうなるよねとか話している。

これに関連して、全ての人がそうだとは言わないけど、私はかなり痩せている。胃下垂ということも相まって、今までダイエットとは無縁の人生。逆に痩せ過ぎて危ないことはある。自分の骨が当たる感覚が痛くて寝れない。体力がないからすぐに疲れる。車窓に映る自分のつり革を持つ腕にぞっとする。健康診断では体重のところにのみD判定がつく。BMIで言うと16とか。痩せすぎて不健康。

拒食症というわけではないけど、吐くことが怖くて「お腹いっぱい食べる」ということができない。いつでも腹6分目。だからすぐにお腹が空いて、間食して補って。なまものや今まで食べて調子が悪くなったものは避ける。北海道旅行に行ってもおいしそうだと思ったものを満足に食べることができない。全ては吐くことが怖いから。

だから週末は、どうしても早く帰りたい。終電を過ぎたこともあるけど、それはそれで自分のタクシー酔いが怖くてまた神経を尖らせる。

 

なんとか切り上げて早めに電車に乗れた。でもまためまいがやってくる。だから揺れの強い車両の端にはいられない。端の席が空いていても、真ん中で立つ。そこににおいがきつい人がいれば、車両を変える。乗り換えた先の電車は新しい車両らしく、照明がやけに明るく頭が痛い。アナウンスが頭に響く。扉の開閉時になる音が耳障り。気を紛らわすためにつけたウォークマンのお気に入りの音楽でさえ、耳に入ってくるのが疲れてくる。

 

こうして家に着くころには、へとへとになっている。毎日が必ずそうかというとそういうわけではないけど、そんな日が多い。だからできる家事は休みの日にまとめて最低限。家が多少汚れても、それよりも明日また家を出られるように気を抜くことが最優先。わ、韻踏んだ。

それにもっと言うと、集合体恐怖症、ピエロ恐怖症なんかも持っていて、制作のために調べものをしていると、そういうものに意図しないところで出会してびっくりしてしまう。これらは意識すればするほど強くなってしまうらしいので、出会したらすぐに目をそらして、なかったことにしている。

そして生理1週間前〜3日目にはPMS/PMDDで心身ともに、肌の調子まで絶不調になる。号泣する夜の翌日には生理が始まるという謎のルーティーンも把握できている。排卵痛もあるから、生理に関することだけでも月にどれだけ振り回されているかわからない。

自分で書いていて、そりゃ疲れるわな、と今思った。でも、今の自分はそうなんだよな。どうにかしようともがくエネルギーさえ残っていない。まぁ、でもいいじゃないか。こんな自分でも。これだけたくさん苦手なものがある代わりに、CM一つで泣くことができたり、人一倍芸術を楽しんだり、場の空気を読めたり、綺麗な夕日を見ただけで泣いたり、長所もたくさんある。

苦手なもんは苦手。そんな一面もある。それだけだ。今日も疲れちゃったな。辛い、ではなく、疲れた。それだけ。

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