”シュークリーム風パン”に見る本末転倒の美学

徐々にではあるが、出社体制というものが再整備されてきている。
わたしも週3日も出社するようになった。
別に出社自体は嫌いではない。
わたしのようなずぼら人間は会社という檻の中の方がのびのびと仕事ができる。
テレワークという環境はさぼり方を覚えさせ、
脳の使用率を著しく下げる悪魔の果実だ。
スマ認(スマホ認知症)を自覚する身としてはテレワークは大敵と言っても差し支えない。
()のなかでもスマホと略してるのが滑稽。

出社に対して、寛大な心を持つわたしでも
唯一許せないことがある。
朝起きられないということだ。
8時半までには会社にたどり着かなければいけないという人権侵害。
人間は理論上、8時半には会社にたどり着けないと思う。
節約のためと朝ご飯をちゃんと家で作るようになったはいいが、
出社の日にはこいつは間に合うはずもない。
着替えて、洗顔なりなんなりをして、家を出るという工程以外は
身体が受け付けない。
嘘、時間が許してくれない。
だから、私は節約とは袂を分かち、会社の入るビルの1階に店舗を構える
誰とも知らないコンビニの門を叩くのだった。

誰とも知らないといったのは、こいつが大手3社以外というだけではなく、
その傘下にいる多少は聞いたことがあるような中堅チェーンでもなく
今、このビルでだけコンビニエントな空間を提供してくれている
名前も知らないコンビニですから。日立インスパイアザネクスト。
店内にベーカリーを持ち、焼き立てのパンを提供する粋な計らいをするコンビニでもあるのだ。
しかも、このベーカリー、サラリーマンの朝なんて食えればなんでもいいくらいのさもしい味覚しか持ち合わせていないのに、
こまめによくわからない新作パンを出してくるから憎らしい。

そんなラインナップに燦然と輝きながら新登場したのが
「シュークリーム風パン」だ。
その名の通り、パンでシュークリームを表現した怪作だ。
何においても、○○風△△とは○○の代替品として生み出されたキメラのはず。
代替品のトップランナーであるカニカマ先生は、
高級品であるカニが手に入らないから、水産加工品である練製品で代用しているんじゃないですか。
まあ、今はタラバが大量発生しているみたいですけども。

じゃあ、シュークリーム風パンはお菓子にありつけない下賤の民が
ならば、パンを食べればいいじゃないと逆マリー・アントワネットを
体現した魅惑のパンであるはず。
そんな思いを胸に、シュークリーム風パンの値段を覗きこむと230円だか。
昨今のコンビニはシュークリームも置いているが、店内のシュークリームは120~130円と低価格。
そう、シュークリームは人気商材なのか、どこのコンビニでも比較的低価格で手に入るスイーツの枠を占めるようになっている。
洋菓子が高級品だったあのころとはもう違うのです。
シュークリームの代替品であるパンはシュークリームとの価格競争に見事に敗北を喫しているのです。
これでは、シュークリーム風パンは「シュークリームっぽいパンが好き」という極めてピンポイントな需要に応える製品でしかない気位の高いちょっと変わったやつなんです。

シュークリーム風パンはわたしたちにいろんなことを教えてくれました。

  1. マネすることのコストが高いこと

  2. 洋菓子が高級品だという価値観が過去のものであること

  3. 素人のnoteはいわゆるシュークリーム風パンなのであり、例え無料であっても受容者には一般的な刊行物以上に消費するのにコストがかかるということ。

肝に銘じておきたいですねぇ。


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