見出し画像

途中からテンポが変わる曲とその方法1

はじめに

楽曲に変化を付けるには様々な手法がありますね。

転調するとか、リズムを変えるとか、メトリックモジュレーション、モーダルインターチェンジ、変拍子、ポリリズム、等々、挙げていけばキリがないのですが、最近特に気になっているのは、曲中でのテンポチェンジです。

そこで、具体的な曲例を挙げながら、その方法論を解説致したく存じます。


1 メトリックモジュレーション(基本編)

これが曲の途中でテンポチェンジする、最もポピュラーな方法論ではないかと思われます。

メトリックモジュレーションを簡単に説明しますと「音符の取り方(割り方)を変える事でリズムを変化させる手法」ですね。

具体的には、16分音符を5つ取りするとか、8分音符を3つ取りしたりしてリズムを変えるのですが、これはポリリズムの基本的な考え方でもあります。メトリックモジュレーションをより詳しく知りたい方は、以下の動画等が参考になるでしょう。

ではそのリズムを変える手法であるメトリックモジュレーションが、どのようにテンポチェンジに利用できるかと言いますと、例えば16分音符を3つ取りした長さを新しい1拍と考えた場合、1拍を4分割した音符(16分音符)3つ分なので、元の1拍の3/4倍になります。
曲のテンポが変わるという事は1拍の長さが変わるという事なので、この場合は元のテンポを3/4で割れば新しいテンポを算出できます。そこで仮に、元のテンポをBPM=120とすると、新しいテンポは120×4/3=160になりますね。

このように、メトリックモジュレーションで音符の取り方を変えると1拍の長さも変わる為、テンポチェンジできる訳です。


以上の基礎を踏まえて頂き、まずは最も基本的な8分音符の3つ取り、つまり8分音符を3つ取りして3連に変える事でテンポチェンジする曲として、「椎名林檎 - 神様、仏様」を解説します。

この曲のコーダと呼べる後半3分からですが、曲がゆったりとした3連(6/8拍子)に変わるのが分かるかと思います。これが8分音符の3つ取りです。
1拍の長さが8分音符1つ分伸びるので、元のテンポより遅くなっています。
具体的には、新しい1拍が元の1拍の3/2倍となる為、新しいテンポは元のテンポを3/2で割ったテンポ、つまり2/3倍になります。

歌詞の、突き落としとくれの「れ」のところから音が抜けて6/8拍子になるので、そこからカウントを取ると、ブラスがアウフタクトで入ってくるのが分かると思います。音の無いブレイクの背後にも正確なクリックが走っている訳ですね。同じく「椎名林檎とトータス松本 - 目抜き通り」でも、8分音符の3つ取りが用いられています。

こちらの曲は、2:28秒から8分音符の3つ取りによる3連の4拍子(12/8拍子)となりますが、その前に一旦3拍子を挟んでおり、3拍子の1小節は8分音符の3つ取り2拍分なので拍節の区切りが良く、よりスムーズにテンポチェンジできている感じがします。


ではもう一曲、「オメでたい頭でなにより - ザ☆キュ〜ティクルピーポー」を解説します。

開始14秒から3連の4拍子(12/8拍子)に変わっていますが、この曲も8分音符の3つ取りを用いています。当初のリズムはハネた(3連の)8ビートなので多少惑わされるかも知れませんが、よく聴いてみてください。
そして0:32秒のシンセの音が入って来たところで、ストレートな8ビートに戻しており、テンポも元に戻っていますね。

この他にも8分音符の3つ取りを利用したテンポチェンジには、楳図かずお - ビチグソロック(0:47秒〜)等、数々の類例がありますので、興味ある方は各方面探されてみてはいかがでしょうか。


以上、ここまで解説してきた8分音符の3つ取りですが、テンポを変える目的で3連にしたというより、3連にリズムを変えた結果としてテンポが変わったとも言えます。しかし、どちらにせよテンポとリズムの変化が必ず同時に起こる手法である為、今回はテンポチェンジの手法として解説した次第です。
ただ、1拍を3つ割りすればテンポを変えずに3連にする事もできるので、8分音符の3つ取りには、蓋然的にテンポを変える意図も含まれているとは言えるでしょう。


では次回の途中からテンポが変わる曲とその方法2では、メトリックモジュレーションを応用した、より複雑な手法を解説します。

サポートした翌日に憧れのあの人からLINEが!等、喜びの声が続々と寄せられています!貴方もサポートで幸せになろう!