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フジロック 地理的に正しいエリアマップ(=縮尺・標高が正しい地図)を作成した【FRF】

【Youtubeで詳細な内容をご覧いただけます!】
https://youtu.be/m3sB8Ent5v0
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フジロックのマップは参考にならなさすぎる

さて、今年もフジロックの季節がやって参りました。

フジロックフェスティバル。第3回(1999)からはずっと新潟県の湯沢町、苗場スキー場で開催されてます。

そんなフジロック、公式のエリアマップがこちら。

FUJI ROCK FESTIVAL'22  Official Area Map

楽しそうですね。

ちなみに去年はこんな感じ。

(なお、当記事はこの2021年フジロックの実地調査を踏まえ作成しています。)

主要なステージとか動線は毎年ほとんど同じと考えていいと思います。
間違い探しかと思うレベルで同じ。



ただこのエリアマップ、地図というよりはです。

実際に行ってみると、こんな可愛いもんじゃあありません。


実際の会場の航空写真がこちら。

ほっそい。
撮影日時が違うのか、色合いが異なる写真同士の境界線が入ってますがそこはご愛嬌。

しかも山ですから高低差があります。

この地図に標高のデータを重ねてみるとこんな感じ。


標高850m(紫)〜912m(赤)を2m刻みで色分け。
国土地理院「自分で作る色別標高図」を基に作成。

色がついている部分がステージエリアです。


上下の大部分が真っ黒ですが、これは両方とも標高が高すぎて黒くなっています。

すなわち日本を代表する山岳型フェスであるところのフジロック、開催されているのは山というよりは谷底。信濃川水系の浅貝川という川が流れる谷底で開催されています。

ちなみに縮尺はこんな感じ。

道のりの線は適当に引いた


つまり高低差60m以上水平距離4kmにわたる細長い谷底をひたすら行ったり来たりするのが実際のフジロックという訳です。



REAL MAP(ステージエリア編)



そして、(かなーり面倒でしたが、)

この地図に各主要ステージの場所を書き込み、

タイトルの通り地理的に正しいエリアマップ、すなわち縮尺・標高が正しい地図、Geographically correct map?actual map?を作成いたしました。

↓こちらです↓



TRUE MAP


できる限り頑張りました。
まあまあ拡大しても使用に耐えうると思うので、行かれる方はご参考にどうぞ。

エリアごとに詳しく見ていくのはYoutubeの方(再掲:こちら)でやってるのでここでは割愛しますが、


真ん中へん
地図右側(= 北側 = 入場ゲートから見て奥側 = 浅貝川の下流側)
地図左側(= 南側 = 入場ゲートから見て手前側 = 浅貝川の上流側)


公式マップのイメージよりは
・グリーン-ホワイト間が長く険しい
・グリーン、苗場食堂、レッドマーキー周辺は標高差がなく近接しており移動がしやすい
・フィールドオブヘヴンは最奥で標高もちょっと高いイメージがあるがめちゃめちゃ低い
・ピラミッドガーデンはやっぱりあり得ないぐらい遠い

とかですかね。

ヘヴンからホワイトに戻ってくる道で上って下るのもよく分かる



REAL MAP(キャンプサイト編)


昨年度のキャンプサイト入り口に掲示してあった公式マップ

この時点で相当ややこしそう….


これも別途、先ほどと同様に標高を設定してGeographically correct actual REAL TRUE MASTER EXTREME Mapを作成しております。


こんなかんじ

色がついている一番高いところ(赤黒いあたり)が960mです。
ステージエリア最下層のジプシーアバロンから言うと110mぐらい高い。
1フロア3mで換算するとビル37階分。

ま、谷の斜面に位置するわけで、端的に言うと入り口から距離が離れるほど標高も上がる傾向にあるので入り口に近い方が有利は有利なんですけど…


この右下端の矢印

この矢印のところからステージエリア(レッドマーキー前)に直接出る出口はめちゃくちゃ急勾配なので気をつけましょう。(Youtubeに実際の動画あり)

REAL MAP(ドラゴンドラ編)


ドラゴンドラ。

レッドマーキー裏手から別料金を払って乗るゴンドラ。

乗るとDay Dreamingというステージに行くことができます。
(ここは2021年には実地調査をしていませんが2015年に行ったことがあります)

なんかエリアマップを見るにすぐ着きそうですね。

もちろんこれも同様(こんどは航空写真でなく地理院地図ベースですが)、GeograなんとかMapを作成しております。こちら。


ドラゴンドラを除くステージエリア全体が右下の白丸。上が北。


つまりすごいヒキの写真です。縮尺が小さい地図。

めちゃくちゃ遠いやないけ。ぶっちぎりで遠い。


それもそのはず、ドラゴンドラはゴンドラとして日本最長、5,481mの長さを誇ります。レッドマーキー裏から一直線に5km半。そら遠い。

そして標高の方も1,330m

ステージエリア最高層のピラミッドガーデンで912mですからね。ぶっちぎり。論外。


REAL MAP(フジロック総論編)

そもそもフジロックフェスティバルの会場、苗場スキー場とは如何なる場所であるか。

はい、地図の作り方一緒です。一緒一緒。


見事に中央分水嶺キワキワ

苗場周辺の赤いうねうねが中央分水嶺。ここより北に降った雨は日本海に、南に降った雨は太平洋に注ぐという線になります。


フジロックを地理的に捉える

(というと大袈裟です。以下余談です)


ご覧いただいて分かる通り、会場の苗場スキー場、新潟県とはいえ群馬県ギリギリ、中央分水嶺キワキワに位置します。

苗場からさらに国道17号を群馬方面に少しだけ南下したところに三国峠(みくにとうげ)という峠があり、ここを越えると群馬県、太平洋側ということになります。(フジロック恒例ジョイントバンドのROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRAはこの国道17号から取られてます。)

冬には北から、日本海側の冷たく湿った空気がこの険しい三国山脈にぶつかり、この辺りにドカ雪を降らせると言うわけですよ。夏でもやっぱり天気は不安定で、フジロッカーも酷暑、からのゲリラ豪雨、そして夜間の急激な冷え込みと戦うことになります。明らかに難易度が高い。

さて、関東方面から車で来るフジロッカーはだいたいが三国峠を越えて苗場にやってきますが、鉄道で来るフジロッカーはそうはいきません。

上越新幹線、在来線の上越線ともに三国峠の北隣の清水峠の真下をトンネルで抜けます。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」の長いトンネルは、この清水峠の真下を抜ける清水トンネル。
(厳密には現在、清水トンネルは上越線上り(東京方面)に供用されているので、在来線利用者がフジロックからの帰りに使うことになります。行き(下り)は新清水トンネル、そして新幹線は往復ともに大清水トンネルと、それぞれ後年に掘られたトンネルを抜けることになります。)

そうやって越後湯沢駅まで出てきて、シャトルバスで苗場へ、、という行程なのです。

ま、上越新幹線を三国峠手前の上毛高原駅で降りて、忌野清志郎のようにチャリで三国峠を越えるような猛者は別ですけど。


みんな中央分水嶺を越えるのに大変なのさ


そもそも湯沢町、越後湯沢はスキーリゾートです。

中でも苗場スキー場は湯沢の中心地から見て一番奥、山側=南側=群馬に近い側に位置します。

豪雪地帯の湯沢地区のスキー場の中でも一番内陸側にあり、標高が高いため良質の乾いた雪が降る。

Wikipedia「苗場スキー場」

新潟県、とりわけこの魚沼地域と切っても切り離せないのが田中角栄ですが、田中角栄が27歳で初めて選挙に出た時、以下のような演説をしたとのこと。

「三国峠をダイナマイトで吹っ飛ばせば越後に雪は降らない。そしてその土を日本海に運べば佐渡と陸続きになる」

Wikipedia「田中角栄」

まさに三国峠こそが日本列島改造計画の原点と言えるわけですよ。
この時の選挙は田中角栄キャリア唯一の落選となりますが、その後の田中角栄の頭角の表しぶり→大暴れぶりはご存知の通り。

さすがに三国峠をダイナマイトで吹っ飛ばしはしませんでしたが、早々と上越新幹線を新潟に通したり、関越トンネルを掘り抜いて関越自動車道を全通させたり。角栄が居なくともいずれは実現したかもしれないけれども、角栄の力で非常に早くから新潟、とりわけ魚沼地域は東京との時間距離がぐっと縮まり、そして越後湯沢は良質な雪を持ちながら関東圏からのアクセスの圧倒的に優れたスキーリゾートとして、押しも押されぬ地位を確立させて来たわけです。


だからこそフジロックが安定的に開催できているとも言える。

苗場スキー場・苗場プリンスホテルを直接的に開発したのは当時の西武グループ、その総帥・堤義明ですけどね。ですけど、難地形にも拘らず穴ぶち抜いてアクセス良好の一大スキーリゾートたらしめ、湯沢を現在の形に至らしめたのはやはり政治であり交通インフラであると言わざるを得ない。

上越新幹線・浦佐駅の駅前には功績を讃えるように角栄の銅像が建っている
銅像の屋根は、娘・田中真紀子が「冬に雪をかぶって可哀相だ」と要望し取り付けられたとか。

昨年2021年、他のフェスが次々と頓挫する中でフジロックが(国内アーティスト限定の縮小開催とはいえ)開催できたのは、地元・湯沢町の全面的な支援があったことも大きかったと記憶しています。

対照的に、ロッキンジャパンフェスティバルの会場であった茨城県ひたちなか市からは残念ながら開催支援の動きは観測できませんでしたよね。

結果的に、ロッキンジャパンフェスは本年から会場を千葉県に移しました。20年間ずっとひたちなかで開催してきたのに。

そしてこれはひたちなか市にとって、多分痛くも痒くもないと思います。ひたちなか市は人口15万人の言わば一大都市。産業もあるし。別に大型フェスが一個吹っ飛んだところで影響は微々たるものでしょう。

湯沢町の場合はそうはいきません。規模的には小さなこの町にとって、数万人を集める野外フェスの中止は大きな痛手となったかもしれない。このことが町によるフジロック開催全面支援につながったという側面もあると思います。

逆説的なことを言うようですが、これは湯沢が経済的に一本立ちできていたからということも出来ます。

魚沼地域に元あった市町村はことごとく、平成の大合併の波に飲まれて南魚沼市だとか魚沼市だとかになってます。

湯沢町だけが合併せずに済んだ。小規模で、バブル崩壊後は景気的にも決してイケてるわけではないけども、町として一本立ちはしていた。もし湯沢町も南魚沼市に合併されていれば、市の中の湯沢地域のしかも奥の奥のスキー場に何万人が来ようが大した問題ではなく、「南魚沼市として全面支援しよう!」とはなってなかったんじゃないかと思うんですよね。


日本の中山間地域の中でも極めて政治的な開発が入った、もう記念碑的なこの地域この場所で、フェスの中でも割とフリーダムな雰囲気のあるフジロックが開催されているというのは数奇なことだなあと思います。

(田中角栄を賛美する意図は一切ありません。)


それから、2015年にもフジロックに行ったことがあるんですが、この時は京都に住んでたので京都から直江津まで夜行バスで出て、そこから北越急行ほくほく線で越後湯沢までアクセスしました。

ほくほく線はほくほく線で、土木史に残る大難工事(21年11ヶ月かかったらしい)の末にブチ抜いた鍋立山トンネルというトンネルを抜けるんですよ。

ほくほく線の実現にもやっぱり角栄が噛んでいるらしい


フジロック、凄いとこでやってますよ。ほんと。どんな立地やねん。

上越線、国道17号、上越新幹線、関越自動車道、ほくほく線…。
「自然の中で」と言いながら、近現代の日本人がまさに自然と格闘してきた場所です。そういう思いで苗場に立ち、音楽を聴いていたいものです。



ま、僕は今年は行かないんですけどね。
行く皆さんは、ぜひこのREAL MAPを公式エリアマップと照らして、上手に回っていただければと思います。


よいフジロックを。



ご参考


このリンクから直接、フジロックのステージエリアを2m刻みで色分けした国土地理院地図(航空写真)をご覧いただくことができます。地図の種類を変えることも可能ですし、標高は好きな色に色付けし直すことも可能です。もちろん地理院地図なので場所を動かすことも可能です。いろいろ遊んでみてください。


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