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こどもの事故は予測可能か?

事故予防と言っても、、、

こどもたちの動きは不規則かつ、突発的です。事故をAccidentととらえず、能動的な傷害としての「Injury」と捉え、対策をといわれても何をどうしていいのやら?というかんじですね。
親御さんに「ちゃんと見ていて下さいね」といっても、見ている目の前で起こっている事故が多いこともお話ししました。つまり、注意をしていても事故は起きるのです。

事故が起きると、「ちゃんと見ていなかったらだ」と親御さんは落ち込み、それに追い打ちをかけるように「ちゃんとしていない親だ」という世間の目も生じ、親御さんは一気に批判にさらされます。

こどもは宇宙人?

新生児はあっという間に乳児になり、その行動範囲を日々どんどん拡大していきます。そのあしどりはおぼつかなく、かわいくはあるのですが、あちこちにぶつかっては物を落とし、いつ怪我をしてもおかしくない状況ですね。

次の図を見て下さい。横軸は月齢、縦軸は事故の発生件数です。何か気づくことはありますか?

「風呂」での溺水も「風呂以外」の溺水も、6ヶ月前後ぐらいから増加し、「風呂」での溺水の法が若干立ち上がりが早く、低下も早い、ということになります。米国でのデータなので、「風呂以外」の多くは庭のプールでの溺水です。何故同じ溺水なのに、このような違いが生じるのでしょうか。

こどもの発達を重ねてみます。
はいはい→一人歩きと、活動量と移動距離の拡大につれて、「風呂以外」での溺水が増えていることが解ります。

もう一つ見てみましょう。中毒の例です。

6ヶ月ぐらいから、「医薬品」「医薬品以外」とも、件数が増加します。しかし、「医薬品以外」は1歳半ごろを境に減少傾向となるのに対し、「医薬品」は3歳頃まで「医薬品以外」に比べて明らかに頻度が高くなっています。何故こんなことが起こるのでしょうか?

やはり精神運動発達をグラフに載せてみます。6ヶ月頃から、ものをつかんで口で確かめる動きが出てきます。それにつられて、「医薬品」「医薬品以外」とも事故件数が増えます。1歳半頃から自分の好きな食べ物、何が食べ物か?などを区別し始めます。これに伴って、「医薬品以外」は低下傾向になります。つまり「食べ物ではない」と認識するからです。

ではどうして医薬品は?ということになります。

ヒートシートに入った薬品と

飴やラムネやチョコ。

こどもの目から見て、区別が付くでしょうか?

たまに出かけていったおばあちゃんの家で見つけた薬入れ。
こどもには宝の山にしか見えないことでしょう。

事故は発達に合わせて一定の事故が起こっている

こどもの精神運動発達に併せて、決まった傾向の事故が起こることがわかっています。だとすれば、事前に行動を予測し、事故が起きない環境づくりができるのではないでしょうか。だからこそ、事故は「能動的な傷害である」と考えるべきだと思うのです。

ここで注意しなくてはいけないのが、月齢によっては対策になりえても、成長とともに対策にならないものもある、ということです。

たとえば、風呂での溺水を考えた場合、蓋を閉める、ドアを閉めるなどは最初は十分な対策になり得ますが、ドアを開けられるようになれば、全く対策になりません。また、こどもの成長はスロープではなく多くは階段状です。つまり、昨日までできなかったことが、ある日突然できるようになるため、こどもの発達に親の対策が追いつかない、という事象も発生します。

年齢に併せて有効な対策を、適時行っていくことが重要です。

小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン