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様子を見ましょう?

"ER・集中治療室" と "一般外来" の違い

一般外来にいらっしゃる患者さんは、「つらい」「苦しい」など何らかの訴えがあるにせよ、基本的には症状がある一定期間継続しているという意味で、「定常状態」にあることが多いです。一方で、ERや集中治療室にいらっしゃる患者さんは、ダイナミックに容態が変化しつつある、あるいは変化しうる患者で、一般外来とは時間のスピードが異なります。

このため、

上図のように、サイクルを回しながら診療をすることが大変重要です。

つまり
評価:患者が今どんな状態にあるか?
判定:何が原因でこうなっているのか?
介入:で、どうするのか?
の順に、再度、介入の結果を評価するというサイクルです。

しばらくベッドで様子を見ましょう?

救急の現場で、「原因の特定ができないものの、現時点で介入できるポイントがなさそうだ」と「経過観察をする」という「介入」されたときに、よく聞かれる言葉です。

でもちょっと待って下さい。その後どうするんですか?

なにをもってそう判断しましたか?その根拠は?
様子を見られなくなるのは、どのような症状が出現したときですか?
悪化する場合にどんなリスクがありますか?命の危険はないですか?
その場合、どんな介入をする予定ですか?
それは現時点のリソースで可能な介入方法ですか?
その情報は誰と共有しておくべきですか?
治療効果はどれくらいで現れて、それによってどんな指標がどう改善するのでしょうか?
改善しない場合に次のプランは?

「介入」に含まれること

初学者の段階では、たとえば吸入をする、点滴をする、という方針を決める「介入」をするだけでも大変なことだと思います。しかし、ER・集中治療室では複数の患者さんの病態が、同時に、刻一刻と変化します。これらの患者さんを同時にマネジメントしながら、安全かつ確実に診療を行っていくために、何かに「介入」する際には、是非以下のフレームを意識にあげて考えてみて下さい。

介入によってえられる望ましい結果は何か?
望ましくない結果(=リスク)は何か?
   → それぞれの場合、指標として「何が」「どうかわる」のか?
     次の評価は「いつ」行うのか?
リスクヘッジはできるか?そのための準備はできているか?
これらの情報を、「誰」と共有しておく必要があるか?

ちなみに、患者さんを帰宅させられるか?入院先は一般病棟でよいのか、集中治療室が良いのか、まだ動かすことができないのか?は、どうやってきまるのでしょうか。

私自身は

「次の評価」のタイミング
   → 評価し続けなければいけないのか、何時間あけられるのか?
    ※ 病棟の看護師が訪室できる頻度をある程度見積もること
  想定されるリスクとリスクヘッジができるかどうか?

に重点を置いて判断しています。

"一般外来" に潜む隠れた前提

冒頭で【基本的には症状がある一定期間継続しているという意味で、「定常状態」にあることが多い】とお話ししました。
実はここには隠れた前提が潜んでいます。

原則に則れば、全ての患者さんに、

というサイクルを適応すべきです。

そう考えると、一般外来では、「評価」「判定」の結果、「定常状態にあって、時間的緊急性はない」と、問診票と診察室に入ってきたときの様子から、「判定」し、じっくりお話を聞くことから始めるという「介入」に出ていることがわかります。この「判定」が隠れた前提である、と認識できるかどうかが、「外来での予期せぬ急変」を防ぐことにつながる肝だと考えています。

「評価」→「判定」の流れを隠れた前提とせず、意識的に行うことは、患者さんにとっても、医療チームにとっても大変有用なことだと考えています。

小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン