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「フォークソングのアメリカ〜ゆで玉子を産むニワトリ〜(ウェルズ恵子さん著)」の読書レポート①

今回は、ウェルズ恵子さんの著書「フォークソングのアメリカ~ゆで卵を産むニワトリ~」をご紹介します。

アメリカでは、産業が急速に発展した18世紀半ばから20世紀の初めまで、おびただしい数のフォークソング(大衆の歌)が生まれました。

先住民をはじめ、イギリス系、フランス、スペイン、ドイツ、メキシコ、アフリカ、アジアなど、様々な文化の交流と融合の中で、生まれてきた歌の数々。

それらは、カウボーイの歌、鉄道の歌、岩を砕くハンマー使いの歌、炭鉱の歌・・・などなど。これだけでも、その時代の様子が目に浮かんできませんか?

この本「フォークソングのアメリカ」は、これらを体系化して紹介し、そして解説してくれます。

曲にまつわる背景を本で読んだ後、その音楽を聴く。
するとイメージだけでなく、当時そこにいたであろう人々の心までもが、より鮮明に浮かび上がってきます。

喜んだり、悲しんだり、文句を言ったり、何かに感動していたりする人々の姿。
歌の中から、今も変わらない、人間の普遍的な願いが聴こえてきます。

序文にある、文章を引用します。

私はあらゆる人の感性を、嫌悪しないで理解する努力がしたい。 星条旗の氾濫について感想を持つとするならば、まずそうする人々の感傷の根源を確かめたいのだ。 フォークソングを探してるのも、結局は、いろいろな感動に空白の心で出会ってみたいからである。

「フォークソングのアメリカ」はじめに〜より

私たちが求めているのは、とにかく心のつながりなのではないでしょうか。そして、心を表現した音楽を聴くということはつまり、「心に出会う」ことにほかなりません。

音楽の「心」と出会うためには、その背景を知ることはとても有効。
なので、このような本はとてもありがたい存在です。

しかも現代において、文中で取り上げられた曲は、Spotify等で検索しながら聴けます。なんともありがたい時代に、私たちは生きているのでしょう。

戦前に録音された古い音源は、人によっては聴きづらいものかもしれませんが、私としてはなぜか聴いていると心が落ち着いていきます。
これを心地よく感じられることは、とても幸運なことです。見つけた曲をプレイリストにまとめながら、じっくり時間をかけて読んでいこうと思います。

まずは序文で紹介されている、「リパブリック讃歌(原題”The Battle Hymn of the Republic”」を。

南北戦争における北軍の軍歌だったこの曲、"Battle"という単語もあり、どうしても暴力的なイメージがあります。

とは言え、この一冊が導いてくれる世界への旅のオープニングとしては、ぴったりの雰囲気ではないでしょうか。

ここから先に本で紹介される歌の庶民性と、相反するイメージの曲。
だからこそ、一つ一つのフォークソングに描かれる個人の姿を、より一層際立たせてくれる効果もあります。

特に印象に残った曲については、また次回書かせて頂こうと思います。

それでは、皆さんもぜひ読んでみてください。
音楽を演奏する人、音楽で心を表現したい人には、おすすめの一冊です。

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