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「線がつながる」ために、必要なことは何か

2005年に、膵臓癌を克服した直後のApple創業者であるスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチがある。大変有名なスピーチなのだけど、もう16年前のスピーチなので、高校生や大学生は知らない人も多いだろう。

まずは、その動画を紹介したい。

今回取り上げたいのは、彼の前半生における人生経験を語った部分で、特に重要なのは、以下のセンテンスだ。

Again, you can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backward. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. 

私なりに訳すとするなら、「後から、人生における点と点がつながっていると、分かるのであって、今の時点では分からない。だから、いつか、何かしらで、線がつながると信じよう」という意訳になるだろうか。

ジョブズは、とても前向きで、探索的なキャリアや人生に関する考え方を持っていた、あるいは持つようになったんだろうなと分かる。

余談だけど、アメリカにおいては特に、学位授与式・卒業式は、commencement  という呼び方になっていて、この意味は「始まり」である。そして、そこで行われる先輩や有名人のスピーチは、カリキュラムという枠がなくなる卒業後に、自分で判断しなければならなくなる「人生」や「向き合い方」についてのものが多い。

自分は、そういうスピーチを聞くのがとても好きだ。順風満帆じゃなかったんだな、深い意味で生きるってこういうことなんだな、と思うことができるからだ。

本線に戻ると、実は最近、「線がつながる」ということを実感することが多くなっている。

7年前に津和野に来た時は、以下のインタビューで紹介されるように、自分が教育に関わって、高校生を中心に伴走しているなんて思ってもいなかった。

これは、津和野着任後1年半のインタビューだけど、今も自分の中で色褪せていない。このインタビューをしてくれた2名は、地域おこし協力隊時代からの大切な友人で、改めて感謝している。

私的に一番大事な部分を再引用したい。

現場をどう解釈して、自分にとって意味があるものに変えていくか。これはすべての職業人に通じることかもしれませんが、馴染みの土地を離れて地方にやって来る人にとっては、とりわけ重要になるんじゃないかと思います。

この「解釈」という行為がポイントで、たぶんそれが「線がつながる」ために必要なんじゃないかと思う。後付けでいいから、現場で起きていることを受け止めて、「解釈」していくことの大切さを最近、強く実感している。

「自分の経験や知識が、この現場で活かせるかもしれない」。そういったひらめきは、必ずやってきます。しかし、それは現場で業務をこなす中からしか絶対に出てこないのです。

私は、大学院時代までに、自治体の総合戦略やマニフェスト作り、討論型世論調査の研究、政治哲学など等、政治学・行政学畑の研究をかじってから、教育畑へ転じた。

「経験や知識が活かせる」とは、津和野に来た当時思っていなかったけど、実は時事ニュース講座をやったり、生徒の小論文を指導したりする中で、それがまずはある個人に向き合うという点で、つながってきた。

だが、今は、教育と地方創生がどうつながるのかということを津和野町や島根県、あるいは別の自治体等を事例に探究したり、実践したりすることが増えた。いろいろな機関に向けた、申請書を書くのをお手伝いすることもある。その意味で、津和野に来た時とは違うレベルでの「つながり」を肌で感じている。

それはなぜなのか。たぶん、時間軸を長くとって見て、動いてきたから。そして、その時々で、上記のような「解釈」をしてきたから。さらに、多くの関係者や時にはあまりこの分野と関わりのない人、特には専門家と議論や対話を続けてきたから。

時間軸を長くとることで、自分自身や現場の変化を焦らないで済む(もちろん、私はせっかちで、すぐ動かないと気がすまないので、大変焦って、多くの関係者にご迷惑をおかけしていることを自覚しています汗)。時間軸を長く見れるようにしていこうというのは、本当にここ最近2カ月くらいの新しい感じではあるんだけども。

そして、議論や対話の中で、知的なレベルでも人的なレベルでも「つながり」を実感し続けてきたことが、自分での「解釈」を加速させてきたんではないかと思う。

以上を振り返る時、まとめるなら、「線がつながる」くらいに、時間軸を長く、人との関係性を大事に生きると、結構面白いよなあ、と改めて思う。もちろん、そう思えない時期もあるし、自分の体調や状況、そして地域や社会が置かれていることもあるけど。

最後に、ジョブズのスピーチの全文は、以下のスタンフォード大学のサイトでも見ることができます。是非最初の動画で見るか、全文を読むかしていただけると、何かとの「つながり」を感じられると思います。


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