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木々は生きている


木々は生きている。

人間と同じように呼吸をしながら日々を生きているのだ。

そこから動くことはできないけれど、深く根を地面に張りながら、この世界の営みや歴史をじっと見守り続けてきたのだろう。

世の中が混沌としていろんな情報が錯綜していたとしても、木々は動じることもなく、ただそこに立って世界と我々を見つめている。


森の中を歩く時、木々の精霊たちは僕に語りかける。

「今を精一杯生きているか?」

「今この時間を思う存分楽しんでいるか?」


僕はためらいながら答える。

「完璧ではないかもしれないけれど、自分なりに精一杯今を生きているし、今この一瞬を楽しむための努力はしている」

彼らとは違って、大地に根を張ることはできない根無し草のような旅人の僕ではあるけれど、いろんな世界でいろんなことを経験しながら、未来に向かって進んでいくのが僕のミッション。

人間の一生なんて、宇宙の歴史から比べればとるに足らないものだし、数百年も生きてきた木々は今生きている人間よりもずっと大先輩。

森の中は平和に満ちあふれている。枝も葉も幹も根も、すべてがバランスを保ちながら一本の木の生命を維持し続ける。そんな木々が集まる深い森の中で、僕はさらに木々の精霊たちの声に耳を傾ける。確かに、ここでは時間は流れていかない。蓄積される時間が確実に存在している。そして、ここでは今この一瞬が既に永遠なのだということを教えられる。

時折見る夢の中で、僕は深い深い森の中をさまよっている。

深いといっても、それこそ赤ずきんちゃんや白雪姫が迷ってしまいそうなくらい深い森の中だ。

そんな深い森の中で、僕はひたすら瞑想に耽る。

何を考えるのでもなく、何かを感じ取るために。

答えのない問いを一生懸命に自分に問いかける。

深い森の中では、答えなんてむしろどうだって構わない。

研ぎ澄ませておくべきは感性のチカラ。

感性のチカラが鈍ったままでは、自分らしさを見失ってしまいがち。

ただ「暮らす」だけでは不十分。生きることの真髄を心から堪能できるように。

町の暮らしではなかなか難しい。

だからこそ、木々の精霊たちが棲む深い深い森の奥深くに、僕自身も身を潜める必要があるのだろう。




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