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小説 「つくね小隊、応答せよ、」

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第二次世界大戦末期。 東南アジアの、とある島。 米軍の猛攻により、日本軍は転戦(撤退)し続け、日本兵たちは、ちりじりに離散した。 そんな中出会った別々の部隊の若い日本兵の3人、…
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#昔話

「つくね小隊、応答せよ、」(壱)

昔々、あるところに一実坊弁存という旅の僧侶がいました。 弁存は旅をして、仏の教えを人々に…

「つくね小隊、応答せよ、」(弐)

「艦砲射撃っっ!!!!」 叫んだと同時に、3人別々の場所へ飛び、伏せた。 きゅるるるるる…

「つくね小隊、応答せよ、」(参)

艦砲射撃の爆発で、土の中からはるばる飛んできたモグラ。そのモグラに串を刺し、火でじっくり…

「つくね小隊、応答せよ、」(伍)

「…で?娘は、食われたのか?」 夜の闇の中で、仲村が訊く。 「ああ、そうだな。食われた。…

「つくね小隊、応答せよ、」(六)

光前寺は、信州駒ヶ根の山の麓の寺です。苔むす石垣と林の中の石畳。その長い道の先に、本堂が…

「つくね小隊、応答せよ、」(七)

夏の真夜中。 密林。 這って進む渡邉の耳には、誰かが小声で言い争って、そしてそれを誰かが…

「つくね小隊、応答せよ、」(八)

「久や、久、これ、久蔵、こっちよ」 「え、ここ人んちじゃないの?」 「うん、人様のお店じゃよ」 「え?入ってもいいの?」 「ここはね、わしが奉公に来とったからね、みいんな顔見知りなんよ」 「ふうん。あれ、お庭に神社がある。このお社、なに?」 「このお社はね、わしが奉公しとる時、毎日欠かさずお参りしとってね、お守り頂いとったんよ。こうやって年取っても、健康で歩けるのは、ここの神様のおかげだと思っとるんよ。だからね、久、おまえも、お守り頂こうと思ってね、さ、久蔵、おま

「つくね小隊、応答せよ」(十一)

三人は、密林を早足で進む。 長い歩兵銃に銃剣を装着し、繁る枝葉を薙ぎ払う。 「敵さんは、…

「つくね小隊、応答せよ」(十二)

「聴いてくれ!俺は、大日本帝国陸軍 上等兵 渡邉道雄だ!その銃は、三八だろ?貴様が敵兵な…

「つくね小隊、応答せよ、」(十参)

3人は秋月の敬礼した右手を見て、息をのんだ。 その右手は、血まみれだった。 よく見ると、…

「つくね小隊、応答せよ、」(十六)

早太郎は、かろうじて狒狒の倒す木々を避けています。 怪我をした後ろ足を痛そうに引きずり、…

「つくね小隊、応答せよ、」(十七)

「渡邉、頼みがある」 秋月が、渡邉を睨み付けるようにして言う。 「なんだ」 「…殺して……

「つくね小隊、応答せよ、」(十九)

翌日。雨が降りました。 渡邉たち三人が服を脱いで雨を浴び、清水が女風呂について語り、仲村…

「つくね小隊、応答せよ、」(廿三) 

「…大将、ちょっと…大将」 「ん?なに?」 「いや、ん、なに?じゃなくて。どうするんすか?」 「え?なにが?…ぬおっ!…それっ!」 「鹿の子さんのことですよ」 「くっ!…あ、うん。え?鹿の子さんがどうかしたの?…そりゃっ!」 津田で修行をする間、2人が宿泊している小さな屋敷。縁側で月を見上げながら、大鷹が金長に問いかける。 金長はと申しますと、畳の上に腹ばいになり、手のひらに乗せた小豆を、ねずみに化けさせる練習をしております。練習に集中するあまり、話はおろそかに