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【旅】ちょっとだけベトナム(2)

ベトナム第1夜。といっても、今回の旅は第3夜までしかない。

夕食に案内されたのは、またも高級店。ベトナム料理の名店らしかった。
アジアではローカル食堂こそうまい!
と絶対的に信奉しているぼくにとっては、冷房を効かせ、
チリ産ワインなんかが出てくるレストランは不覚でさえあった。
しかし、味はいい。高いもんな。
いろいろと凝ったメニューを出してくれたが、
なんといっても春巻きにベトナム料理の実力を見た。

食後、これまた定番の水上人形演劇へ。
水を張った舞台で個性的な人形を操り、
ベトナムの農村・農民の日常的歳時記を表現するのだという。
魚釣りのシーン、田植えのシーン、鴨飼いのシーン、龍、鳳凰、神の化身。ベトナム語が理解できず、演目そのものにメリハリがなく退屈したが、
これを田舎出身のベトナム人が見ると、懐かしさがこみ上げるのではと思わせてくれる程度にはノスタルジックであった。

演劇場の前は一番の繁華街。
喧騒と男女と家族とバイクとクラクションと
風船売りたちが溢れかえっていた。

ベトナムで初めて迎える朝、5時に起床。
外では路上放し飼いの鶏が、例の声でおはようと合唱している。

日曜日だからだろうか、湖周道路をマウンテンバイクなど
サイクリング族がしゃかしゃかせわしくペダルを踏んでいる。
休日の朝、スポーツに親しむというのは気持ちがよい。
イギリスで開催中のラグビーW杯で日本が南アフリカに逆転勝ちした
というニュースのせいもあって、ぼくも勇んで散歩に出て行ったのだった。

朝から湿気がねっとり、じっとり。
路地の小さな食堂も目を覚まし、フォーのスープが湯気を立てている。
食欲に届く香りがゆるやかに、ひそやかにそよいでくる。

カメラをあちこちに向けながら歩いていると、
タクシーが乗らへんかとクラクションで誘ってくる。乗りません。

花を満載したバイクが、次々とハノイ中心部をめざしていく。
走ってくる方角に、生花の卸市場があるのだ。
わんさと花を積み、排ガスをかぶりながら、売り場へ走っていく。

花を買う、誰かに贈る、飾る。
そんな文化・習慣がある街は滅びないと、ぼくは思う。

/(つづく)

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