【旅】ちょっとだけベトナム(4)
ハロン湾のクルーズには、
最短3時間コースから最長1泊2日コースまであるという。
ガイドのトンさんは「わたし個人おすすめさせていただきたいのは、
6時間クルーズでございます、みなさま」と言った。
ぼくたちのクルーズは3時間コースで、
いまさら6時間コースに変更できるわけではない、というのに。
船は正午に出航。すぐに小型船が3隻寄ってきて、
魚介類買わんかね、フルーツはいらんかね、はいお買い上げおおきに、
と商売してさっさと去っていった。
木造船は2階建てで、1階がレストラン席、2階が展望デッキになっていた。
1階の船首には柵もロープもなく、けつまずいたら海へドボンである。
救命胴衣の使用説明もなく、日本だったらまず航行不許可。
しかしここはベトナム、ハロン湾。自由でいいじゃないか。
ランチの前に2階に上がると、操舵室のキャプテンが来い来いと手招きする。素直に行ってみると、舵を取らせてくれた。ツアー仲間と次々記念撮影。キャプテンはタバコを吸いながらニコニコしている。これも日本ならアウト。しかしここはベトナム、ハロン湾。結果オーライでいいじゃないか。
ハロン湾の水は緑色が深く、どの角度から見ても、
どうかき混ぜても、三角も縦も高さもない。
どんより、ねっとり、とろりとしている。
ゆっくり進む船も、やがて奇抜な岩島群に近づいてきた。
高さはそれほどでもないが、急角度に屹立し、勃起し、天を突いている。
早春のタケノコのように威勢がいい。なかなかの迫力だ。
あとで調べてみると、岩島は全部で3000以上もあるという。
主なものには名前が付いているが、ほとんどは名前がない。
もちろん、全部の先端を制覇したクライマーはいないだろう。
達成したとして、どんな名声が与えられるのかナゾだが。
ランチ冒頭に登場したエビの素揚げが秀逸で、
メンバー全員がむさぼり、うっとりとなった。
ハノイの高級店のメニューを押しのけて、堂々のメダル獲得である。
船はのったりのったりと進む。
ランチで満腹となり、2時間が経過するころ、
奇怪だった風景も見飽きてきた。
イルカが泳いでいたり、岩島にサルが住んでいたりすると
飽きることはないんだけどな。
3時間クルーズがちょうどいいサイズだった。
/(つづく)
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