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【旅】ミャンマーそろり旅2/湖に彩られたくらし

シャン高原に水をたたえるインレー湖では住居や田畑、
仏閣寺院も湖上にある。だから一家に一艘、ボートは必需品。
どの家庭も高床式の居住スペースの下にボートを係留している。

湖畔の町ニァゥンシュエからボートに乗り込み、湖を目指した。

湖に通ずる運河沿いに建ち並ぶ住居の庭先で、
お母さんたちは泡まみれの洗濯物をパシパシとたたき、
子ども集団は運河にダイブしている。
こんなシーンは、ここでしか通用しない。

「ちょっと遊んでくる」
日本の少年はそう言って自転車で出かけるが、
インレー湖ではボートを漕いで友だちに会いにいく。

赤い服の少女とすれ違った。
あぐらをかいて舳先に座り、櫂を漕ぎながら笑いかけてきた。
「透明感」という言葉がピッタリ合う、やわらかい微笑みに、
思わずうれしくなる。

南北に細長い湖に出た瞬間、全身の脈流がドクンと波動した。
高原の山々から運ばれてきた有機物が湖に拡散され、
雨季でも6mにしかならない浅い水中で水草が活発に光合成している。
水は冷たく澄み、遠く白い霞の彼方へと続いている。

湖の暮らしには大別して2つの選択がある。
「漁」と「農」だ。

「漁」では小魚や小エビを狙い、水草も採取する。
水草は乾燥させて「農」の肥やし、トラクター代わりの水牛の飼料にする。
水草の採取・運搬は幼い兄弟姉妹だけで行っている場合が多く、
お手伝い項目の一つであるようだ。

湖の漁師はボートを独特の方法で操る。船尾に立ち、手を使わずに、
どちらか一方の足を櫂にからませて、器用にこぐのだ。
筒型の仕掛け網を投入し、中に包囲された魚を銛で突いていくのが、
伝統的な漁法だという。

落陽しても漁をあきらめない少年がいた。
今夜のおかずがまだ捕れないのかもしれない。
湖は生きるのに必要な厳しさも与えてくれる。

インレー湖はトマトの名産地。
湖面に水草を茂らせ、そこに土をからませて畝をつくる。
知恵と工夫で、湖が畑になる。
キュウリやスイカ、ウォータークレス(からし菜の一種)も栽培する。

滞在最終日、湖畔の主な町を巡回する市が
ニァゥンシュエに立つというので、朝六時から見学にいった。
湖各所から作物満載のボートが次々とやって来て、
市場は赤や緑のカーニバル。
色の折り重なりが朝の冷気に映え、湖の恵みの深さを知った。

/つづきます/

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