風は雲を打つ

わかみどりの山の尾根を
白い雲がのりこえようと
山肌をけぶらせる

こんな日が来る
なんて思わなかった
坂道に逆らった景色で
めぐりあった君と
春荒れの風を見送って
昼食をとる

野菜たちは
美味しいままで
彩りよく幾何的になって
ゆでたりつけたりやかれたり
こしたりまぜたりつぶされて
スパイスの風に巻かれて
発酵の宵をすごして
こっぽりとソースを纏ってる
コックさんの
仕立て屋みたいな計らいで

風が走り抜ける
あの山の雲と出会うはず
風は地の上を転がって
雲を打つ
白い雲は霧になり
霧は粒になり
粒とは雨つぶで
葉のおもてから
艶々と滑べり
滴りおちる

翅をやすめて
虫たちは雨宿り
濡れ羽を着た鳥たちは
薄目を閉じて
むねの綿毛であたたまる
雨をたたえた花々は
空を映した蜜をもつ



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