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愛しているよの在るところ

むかーしむかしから
あるところに
愛しているよは住んでいました。
愛しているよは
見えたり見えなかったり
いたりいなかったりなので
知っている人は知っているし
知らない人は考え及んだこともない
という有様でした

むかーしむかし
愛は
発明だったと言われています
果たして本当にそうなのか
いつの世も生きにくいのは同じ
家族の愛
男女の愛
愛なくして
どうして生き抜いていけましょうか

そもそも
愛とは何でしょうか
取って食べてしまいたい
気持ちでしょうか
いっしょにいたいという
気持ちでしょうか
はたまた
セックスを容易く得るための
言い訳でしょうか
おそらくそのどれもが
答えとは似て非なるものと
思われます

愛しているよは
山を登ります
えんやこらさ
えんやこらさ
汗をかきかき登ります
くぐってもくぐっても
緑の葉が空を覆います
時折、葉は陽を透かし
愛しているよの心の底に
陽の光が届きます
山鳥は綺麗な声で
愛しているよがここにいるよと
遠くの鳥に知らせ
川のせせらぎは
チョロンチョロントポポポポ
と歌を歌います
愛しているよ
チョロンチョロン
愛しているよ
トポポポポ

愛しているよは
自分がどこに向かっているのか
何を求めているのか
分かってはいません
何故なら
ここが終着点と知るやいなや
愛しているよのからだは
腐り始めてしまうから
愛しているよを探しても
見つからないのは
そのためです

ただ
ただ
柔らかな陽の光を感じながら
美しい音と事柄に耳を澄まして
心に映し
目と手と足と頭を以って
想いを象ることに
歓びを感じながら
ただただ、
歩き続けているのです



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