見出し画像

【映画】仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ感想(ネタバレあり)

単なる毎年恒例の冬映画ではなく、仮面ライダー50周年記念映画と銘打たれた今作。
藤岡弘の息子である藤岡真威人が仮面ライダー1号・本郷猛を演じる事や、50年後の仮面ライダーが登場する事など、事前情報だけでもファンの間で大きな盛り上がりを見せていた。

ゲストとしては古田新太、中尾明慶といった演技派俳優に加えて玄田哲章、森川智之、松本梨香、中尾隆聖ら超大物声優たちが脇を固めており、今作に賭ける東映の覚悟を感じた。

ただ、役者陣の好演に反して物語・演出においてはやや気になる所が目立ったのも事実だ。

良い点といまひとつな点が入り混じり感情が掻き乱された今作を、ひとつひとつ分解しながら頭の整理をしていきたいと思う。

※以下、ネタバレを含みます。

仮面ライダーセンチュリーと百瀬親子

今回の目玉となる劇場版限定ライダー・センチュリー。

過去(1971年)にショッカーの研究員として仮面ライダー1号を生み出した百瀬龍之介(中尾明慶)が事故で未来(2071年)へと飛ばされ、その後ジョージ狩崎の作ったサイクロトロンドライバーの力で精神体のみが現代(2021年)に転送されるも実体が無い為1人では変身が叶わず、同じ遺伝子を持つ息子・秀夫(古田新太)の身体を借りる事で初めて変身するというかなり複雑な設定の仮面ライダーだが、これが本当に素晴らしい。

変身の条件が厳しいので、いざ変身できた時の強さにも説得力があるし、見た目もベルトやスカーフ等は仮面ライダー1号を思わせるが体表面の一部が未来っぽい青色の素材で覆われていたり、目・触覚もしっかり初代からの"虫テイスト"は残しつつも前衛的なデザインだったりとレトロ感と未来感が混ざり合う絶妙な所を突いておりいつまでも見ていたくなる。

振り返ってみると、今作において龍之介と秀夫が絡むシーンは概ね全て良かった。

明らかに親子に見えない2人の衝突は、他者には到底分かり得ない"それぞれの家庭の事情"を一発でこちら側に理解させるだけでなく、2度に渡る時空移動を含めた壮大な物語を"単なる家族の痴話喧嘩"という身近な問題に落とし込む事で観客を置き去りにしない為の装置としても機能していた。

一緒に新幹線に乗るという約束を破り、そのまま50年も姿を消していた事で秀夫からは「家族を捨てた男」と思われている龍之介だが、実際には約束の日前日にショッカーによって拉致され、事故で2071年に行って狩崎と出会い、その後2021年にタイムリープしてきているので、恐らく100年の時を飛び越えて50年の時を遡ったのも彼にとってはほんの1日か2日間の出来事だ。
秀夫と龍之介それぞれにとっての時間経過を特急券の傷み具合で表現する演出には心底唸らされたし、仲直りをするキッカケとなった龍之介からの「この件が片付いたら一緒に新幹線に乗ろう」という約束が結局は守られないままという幕引きもなんだか大人のほろ苦さがあって味わい深かった。
また、終盤で飛羽馬がバイスにかけた「約束は破った側の方が辛い」という言葉が、そのまま龍之介と秀夫の話にリンクしているのも非常に上品な作りだと感じた。

今回キーとなった新幹線だが、1971年時点で東京-新大阪間の移動には3時間10分の時間がかかっていたようだ。
その後技術の進歩に伴い所要時間は短縮されていき、現在では2時間30分を切るまでになった。
「私の作っている新幹線はあの頃よりずっと速いから父さん驚くよ」という秀夫の言葉は、かつて龍之介が本郷猛に言われた「人の為になる事が科学なんじゃないのか?」という問いかけとも重なり秀夫が50年間、父の背中を追いながらも"正しい"科学者として生きてきた事を証明していた。

仮面ライダーセンチュリーは、仮面ライダーセンチュリーが生まれなくてもいい未来を作る為だけに生まれた。そして見事目的を果たし、悪魔に支配された未来と共に消えた。
その儚さも相まって、今後も多くのファンから愛され、語られ続けるライダーとなるように思えてならない。

仮面ライダー1号と本郷猛

藤岡弘の息子である藤岡真威人が父に代わって本郷猛を演じるというニュースは、ライダーファンだけでなく世間にも大きな反響を呼んだ。

ストーリーについては公開まではっきりとは分かっていなかった為、正直「後半にファンサービスでちょろっと出る程度なのかな」としか思っていなかったが、蓋を開けてみればしっかりストーリーにも絡んでいる上にアクションシーンも長く、「藤岡弘の息子だから」などという評価は失礼なほどにただ"本郷猛"がそこにいた。

アクションも、演出含め当時を強く意識した作りになっており(終始姿勢の良い殺陣、崖の上に登っての変身、人形に差し替えての崖落下、ライダーキック後に一度カットを挟んでの爆破など)、これを大スクリーンで見られただけでもお金を払った価値があると思える程に良かった。

個人的に見づらいと感じた点

ここまで振り返りながら書いてみると、今作、良い点は本当に良かったんだと再確認できる。
ただ、鑑賞直後には正直あまり満足感を得られていなかったのも事実だ。
要所要所で「惜しいなー」と感じ、それがノイズとなって内容が入ってきづらい場面が多くあったように思う。

ここからは、鑑賞中気になった点をまとめて書いていく。

①センチュリーのアクション
設定、デザイン共に素晴らしかった仮面ライダーセンチュリーだが、アクションに関しては少々尻すぼみ感が否めなかった。
というのも、センチュリーの未完成体である仮面ライダーセンチュリーブレイク登場時のアクションにおいては瞬間移動のような能力が多用されておりこれが本当にかっこよかったのだが、完全体となってからその力が使われる事はなく、それと引き換えに謎の巨大な歯車が出現してCG頼りの戦闘スタイルに移り変わってしまった。


②リバイス組の影の薄さ
百瀬親子問題が上映時間の多くを占めていた事に加え、セイバー組の人数が多かった事もありリバイス組に明らかに活躍の場面が少なかった。
心の闇がテーマのリバイスだが、今回は作品のテーマ的にそういった要素を入れる隙もあまり無く、結果としてメンバー全員がただ物分かりの良い爽やかな若者に見えてしまった。
逆にアギレラ率いるデッドマンズ陣営は不気味な存在感含めて良い味を出せていたように思う。


③戦闘箇所の分散
ソードオブロゴスのメンバーが多く苦肉の策だったのかもしれないが、今回はクライマックスの舞台が富士山、氷山、エジプト、イースター島、シベリア、アラスカ、そして未来の7箇所に分散されていた。
その結果場面の切り替えが頻繁に行われる事となり途中から全く展開についていけなくなってしまった。
敵の特徴もいまいち説明されず、個性的な戦い方や武器もないままやたらと寄りの多いカットでゴチャゴチャとアクションが展開していくので、本当に今どこで何が起きているのかが分からないのだ。
海外の場面に関しては当然現地ロケの予算などある筈もなくほとんどが安っぽいCGの背景合成となり、自然とどのシーンも広大な土地で戦うだけになる為地形を活かすゲリラ戦のような工夫もなくただただひたすらにもっさりとした殺陣が別のライダー、別の敵で繰り返されるのみ。
正直、今回はセンチュリーブレイク登場時とライダー1号まわり以外で特筆するようなアクションが無かった。
変身できる人数が多い為変身シーンも引きの画ばかりになりいまいち迫力に欠けた。
せっかく巨大スクリーンで見るライダーなのだから、最低限アクションや変身シーンはもう少しメリハリをつけて欲しかったというのが本音だ。


④ディアブロのデザイン
今回のラスボス枠であったディアブロだが、敵の幹部よりも存在感が薄いデザインで少々噛ませ犬感が出過ぎていたように思う。
自身はほとんど動かずバリアやビームを多用する戦闘スタイル(そもそもかなり動きづらそうなフォルム)なのも残念だし、奇しくもデザインが現在放送中の機界戦隊ゼンカイジャーに登場する量産型キカイノイド【クダイテスト】に似ている点も小物感を増すのに一役買ってしまっている。
結局大した見せ場も無いまま退場していく彼を、こちらも何の思い入れもないまま見送るのみだった。

↑画像中央がディアブロ

         ↑クダイテスト



⑤デビルライダー
未来の世界に現れたデビルライダー。
狩崎曰く「見た目は歴代ライダーだが中身は悪魔」との事だが、未来の悪魔が一体何の為にそんな事をしているのか全く理解ができない。
昔のライダースーツが劇場版で使い回されるのはもはや定番であり、予算の都合上仕方のない部分もあるのだろうがせめてもう少し納得のいく説明がほしかった。


今後のリバイスに関して

あくまで劇場版は劇場版として独立した話であり、見ていないと今後のリバイスの展開についていけないという事はないが、今回の映画から一点予想できるとすれば、「狩崎は敵ではない」という事だろうか。

彼は2071年、世界が悪魔によって支配されても地球を護る為にただ1人ライダーの研究を続けていた。
これにより狩崎ラスボス説等は否定する事ができるのではないかと考察する。

とはいえ、歴代ライダーのクローンを生成・培養していたりと"やばい"行動も取っている為、まだまだ完全に信用はできないと言ったところか。

あと一つ、映画ではなくパンフレットから一点有益な情報が取れた。
それは、若林優次郎の人物紹介だ。そこには「本物の若林は命を落とした」と明記されており、これによって若林生存の線が完全に消えた事になる。

非常に残念ではあるが、今後本物の若林司令官が戻ってくる事はないようだ。


最後に

単なる素人の個人的な感想でしかないが、今回の映画「仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ」に点数をつけるとすれば50周年記念作品としては75点、リバイス/セイバーの劇場版としては60点といったところだろうか。

バランスとしては歪だし納得のいかない部分も多い。
ただ、前述したように良かった所は本当に今後何度も思い出すぐらいに良かったし、特に本郷猛のシーンに関しては是非とも多くの人に劇場で見てほしい。

2071年になっても仮面ライダーシリーズが続いている事を願いつつ、この感想を締めくくりたいと思う。


(仮面ライダービヨンドジェネレーションズ公式サイト)
http://kamenrider-winter.com/sphone

(仮面ライダーリバイス公式サイト)
https://www.tv-asahi.co.jp/revice

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?