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プロ筋confレポート~「PM転職の年収の実情」~

プロダクトマネージャーカンファレンスに続き、プロ筋confも参加してきましたので、今回の記事ではそのセッションの模様をお届けします。

弊社PM支援チーム松永山本が、「PM転職の年収の実情」と題して、誰しもが気になる年収事情を弊社実績データを交えながら語りました。

要点を先に

・全体での平均年収推移は、約+31万円(全体の約65%がアップ)
・転職後の平均年収は、約850万円
 └未経験:約700万円、ジュニア:約720万円、ミドル:約750万円、シニ ア:約1,150万円
 └SaaSやtoC等で大きな差異はなさそうだが、Cのほうが会社規模が大きいので高年収の確率高め。

・そもそものPM平均年収はここ2~3年で上昇中。300万円の年収アップ者が出るなんてことも

・未経験からの転職でも年収が維持されるのは、規模が大きめの企業(コンサル/SIer出身者等は比較的高め)

・かつ未経験からも高年収(700万円等)のオファーが出始めている。とはいえ、一般的に未経験転職は下がると思っていたほうが無難

・年収がダウンするのは、比較規模が大きめ→スタートアップへの転職。ただし、ストックオプションが付与されている場合もあるので純粋にダウンとは言い難い場合も

・シニアクラスとなると1,000万円超えの方も(スタートアップCPO候補や、メガベンチャーのマネージャークラス等が対象)

・創業初期は年収を出さなくても人は集まるが(MVV共感性の高い人)、規模が出てくると年収の整備も必要になる(MVV共感だけの人は取りきってしまった感覚)


ご挨拶

山本:弊社はプロダクトマネージャーのキャリアに特化した人材紹介で、所謂転職支援を行っている会社です。今日は「PM転職における年収の実情」というテーマで話をさせていただきます。

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松永:年収情報は人材紹介会社しか持っていないと思いますので、僕らしか出せない情報で、僕らだから話せることを短い時間ではありますが皆さんにお届けします。
転職が全てではありませんが、少しキャリアについて考えるきっかけにしていただけたらなと思います。

PM転職における年収の全体傾向

山本:弊社で直近ご支援した40名強の転職データ、年収情報になります。
年収が上がったのか下がったのかや、自分以外の人の年収がどれ位なのかという所を詳らかにしていきます。

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松永:面談の中でも、PMの年収はどれ位なんですか?って聞かれることは多いですね。PMが新しい職種だからこそ、自分がその中でどれ位なのかは気にされている方が多いです。

山本:そうですよね。ここ2~3年で職種として確立されてきましたから。
プロダクトマネージャー全体の年収相場観のトレンドはどうでしょうか?

松永:最近転職をして年収が上がる方が多いなという印象です。この表の右下をご覧ください。だいたい7割弱くらい方の年収が上がっています。

山本:プロダクトマネージャーが職種として確立されていなかった3年前と比べると、そもそもの年収の平均値が上がっているような印象も受けています。
今日は年収の実態をデータをベースにお伝えしていきます。
が、流石に個別の事情は個人情報なのでスライドには出来ません。個人情報を伏せて事例を補足しながら紹介していきます。
まずご紹介するにあたって僕らなりにプロダクトマネージャーの階層を4つに分けています。階層の紹介は松永さんから。

松永:まず未経験、ジュニア、ミドル、シニアの4つに分けています。
未経験の方はこれからプロダクトマネージャーになりたいという方。エンジニアやカスタマーサクセス、ビズデブ等の経験はあるけれどもプロダクトマネージャーという立ち位置ではやったことがないという方です。
ジュニアはPMを経験して1~2年ですという方のイメージです。
ミドルは一人で1プロダクトや1機能を任される3年目~6年目くらいの方。
最後にシニアはCPOやプロダクト責任者クラスの方。この人が入るとプロダクトが成長するよというのが見える、ちょっと有名なクラスの方をイメージしています。

山本:弊社でよくお手伝いするのはどの層でしょうか?

松永:多いのは、ミドルやシニアの方です。もちろん未経験の方もいらっしゃいます。

山本:実際この表見てみても一番多いのがミドルクラスですね。3年位経験されている方が多く、我流でやってきたけれども、そろそろもう少ししっかりした所でやりたいなという転職理由が一番よくあるケースです。

松永:僕らは2年位前からチームを作ってやっていますが、2年前当時はこのミドルの層がそのままマイナスシフトしてジュニアな方が多かったです。
PMはまだまだ足りていないですが、人口は徐々に増えてきました。

山本:4つの階層に区分した中で、それぞれの階層の転職前後の年収差分を集計しています。
例えば、500万円から700万円に上がったら+200、600万円から550万円に下がったら-50というのを43人分データで集計して出したビフォアアフターがスライドの左です。
全体での平均を見てみると、+31万円。だいたい全体の3分の2の方が年収アップしていて、維持が2名です。3分の1位の方が若干下がっているという結果になりました。
このまず全体の結果についていかがでしょうか。

松永:年収が下がる方は何故下がっているのかという所はこの後ご説明しますが、全体としては複数内定をもらって少し年収を上げて転職先を決定していくという方が多い気がします。

山本:そうですよね。どんな人が年収が下がり、逆にどういう人が上がっているのかが一番気になると思うので、個社名をぼかしながらご紹介していきます。
ジュニアの方は平均的にも100万弱位年収が上がっていますし、最大で300万円位上がっている人もいます。
シニアな方は250万円位上がっている方もいれば、最大400万位下がっているという方もいるんですね。この方は個別の事情かもしれないですが。

松永:あくまでグラフの最大値と最小値の方はそうですね。上がり幅が最大なのはジュニアの方でした。

山本:そうですよね ジュニアで300万上げた人がいるのは驚きでした。

松永:こちらが驚いてしまうような高い年収をオファーする会社もあります。現年収が400万円台前半から、倍くらいの提示になったという方がいました。

山本:プロダクトマネージャーは以前よりもかなり年収水準が上がってきているなと実感が、マーケットに接している我々としてもあります。
松永さんはこの表を見て、どういう所が気になりますか?

未経験でも年収アップ事例あり。未経験PMの年収

松永:人数は少ないながらも、未経験から年収がアップした方の事例は是非ご紹介したいです。未経験なことをやる時は年収が下がるのが一般的なのですが、それでも上がったという事例です。

山本:未経験の中で年収が上がっているのは3名います。

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山本:この3名の場合、採用企業の規模が大きめという共通点があります。
要はアーリーのスタートアップより、上場していたり、未上場だが時価総額ベースが結構大きい会社の場合に、年収を上げてオファーをするというケースがあるかと思います。

松永:コンサルティングファームにいらっしゃった方が、業務知識をそのまま活かして転職するというケースもありますよね。

山本:最近ITコンサルや大手SIerから未経験でPMに転職される方も増えているのですが、そういった方々はもともとの年収が高く、高い水準を維持したまま転職しているケースも見受けられます。

松永:それなりに大きい会社にいけば年収は維持、もしくは上がる可能性はあるということでしょうか。

山本:一方で半分の方は年収が上がり、半分は下がっています。一般論からすると未経験の職種への転職は年収が下がると認識しておいた上で、維持もしくはアップ出来たらラッキー位に思っておいた方がいいかもしれないですね。

松永:PMでもう一つ特徴的なことがあります。未経験で年収700万円のオファーが出るのはすごいです。この水準が高いのには二つ理由があると考えます。
①PMに未経験でなれる方はそもそも能力が高い
②プロダクトマネージャーが不足しており、ある程度年収を出してでも欲しいという企業側の思惑
です。

山本:この表の平均年収を見ても、850万円というのは結構高いですね。
最近の採用企業のオファー傾向を見てみても、プロダクトマネージャーの年収を企業が出し渋らなくなってきたという印象です。
Wantedlyさんのレポートでも、今エンジニアの次にプロダクトマネージャーが足りていないとあります。どこの会社さんもプロダクトマネージャーを何としても採りたいというのが伝わってきます。
松永さん、他に気になるところはありますか?

取りに行きたい経験と年収はトレードオフ!?年収ダウン事例

松永:年収がダウンしている方にも触れていきましょう。
シニアの方で400万円ダウンしている方や、ミドルの方でも最高150万位ダウンしている方がいます。その方々の年収が何故ダウンしているのか?

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山本:ダウンしてしまった方は表で13名いらっしゃいます。見ていると元の会社が大手という傾向があります。先ほどの話の裏返しで、大手に行けば年収が上がる、大手から出れば年収が下がるという傾向はあると思います。
例えば某大手IT情報サービス系の会社さんであるとか、ITコンサルやSIerも大手です。そのような大手からベンチャーに行くと、年収が下がっているかもしれないです。

松永:大手の方が年収を出しやすいということや、プロダクトマネージャーを評価する仕組みがある等は傾向としてあります。

山本:一つ注意したい点として、今回のデータはストックオプションが金額換算できないのであくまでオファーされた現金の年収をベースに集計しています。シニアの方の場合スタートアップに転職するとストックオプションも付与されるケースが多いです。
例えばもともと1500万円貰っていたけれども、1000万円+ストックオプションで転職した際に、見かけ上の年収は下がりますが、会社が上場してガツンとキャッシュが入れば、必ずしも年収が下がったとは言えません。

松永:一番下がっている方は、大手から一人目のプロダクトマネージャーとしてベンチャーへ飛び込んだ方ですね。取りに行きたいものがあり、それと年収がトレードオフになっているのは、シニアの年収ダウン額が大きい特徴だと思います

山本:最近一人目PMやCPO候補を希望される方も増えてきています。

松永:一時期は希望として「師匠が欲しい」一色だった(過去note参照)のが、一人目にチャレンジしたいという方も増えてきました。ここ数年で大分傾向が変わってきています。

年収1000万円以上のシニアPMの転職

山本:一人目PMやCPOの年収相場も良くなってきました。

松永:シニアPMの転職先も、一人目プロダクトマネージャーがメジャーになってきたと思います。
年収1000万以上でご転職される方も増えてきました。

山本:年収1000万クラスがこの中で10名いらっしゃいます。5分の1、20%位。結構いらっしゃいます。
シニアの平均年収が1150万円で、シニアクラスになると結構年収が出るんですね。

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山本:そういった方々の所属は、大手企業のケースもありますが、メガベンチャーや未上場のスタートアップのケースもあります。一人目PMやCPO候補に1000万円以上のオファーを出しています。

松永:そうですね、シニアクラスで年収を上げている方も多いです。

山本:弊社が求人を頂く際に、ジュニアからリーダークラスのPMと幅を持たせて依頼を頂くこともあれば、シニアやCPO候補で一人すごい人が欲しいですという募集も結構あります。
そういったポジションで決まると年収が1000万円を超えてきます。

松永:何故今そのクラスの方が必要か?や、その方がいるとどうなるのか?という、候補者の採用後のイメージが解像度高い企業ほど年収をしっかり出すという印象を受けています。

山本:それってどういうことですか?

松永:その方がいることでどうプロダクトの成長に寄与するのかが会社の中でイメージ出来ていると、その方がいるとプロダクトがこれ位伸びるというのが、自社の中で仮説が立てられていると思うんですよね。
採用企業にとって、この解像度の高さは凄く大事なんだろうなと思っています。

山本:そういう方は、再現性をきちんとお話出来て、僕が関わったらこれだけいけますよと話せる方が多いです。
且つ、そういったすごい方がいるとジュニアの方も採りやすく、良い循環が産まれますよね。

(セッション終わり)

Ask the Speaker

カンファレンス運営のAsakoshiさんも交えた、セッション後のAsk the Speakerの模様もお送りします。

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質問者Nさん:この平均年収データは、Saas系PMのみのデータなんでしょうかね?

山本:SaaS系のみではないです。大半はSaaSでホリゾンタル、バーティカルなところが多いですが、一部IoT系やハードウェアが絡むものやtoC向けも含まれています。感覚的に8割位がSaaS系企業でしょうか。

Asakoshiさん:業界の違いによって年収に差が出たりしますか?SaaS系が高い低い等。

山本:そういった切り口で分析はしていません。が、昔からやっているウェブメディア等toCは比較的大手さんが多く、比較的会社としての給与水準が高いです。
一方でSaaSで大手と言っても、そこまで歴史が長い会社はなく、人事労務や会計周りでいくつかメガベンチャーがあり、そのような会社だと比較的年収が高く出るところもあります。歴史が浅い会社も多いのでSaaSだけで見ると、年収の高低はバラついているのではないかと思います。

Asakoshiさん:割と会社の規模によるものが大きい感じでしょうか?

山本:そうですね。規模とビジネスモデル、利益率、資金調達額などだったりします。
資金調達額が多いから年収が上がるかと言うと、経営者のポリシー次第という会社もあります。

松永:どこにお金をかけるかは会社によります。年収を上げたい場合には、大手企業の他、一人目PMやPMの中でマネージャーを目指す等でしょうか。 
採用に思いきりべットしていい人を取ろうとしている会社を見極めることも大事かなと思います。

山本:採用側の論理に立つと一人目PMやCPOクラスは年収を惜しまないで出します。
メンバークラスの場合、規模が小さいと年収じゃなくても集まってきてくれる人もいます。アーリーアダプターというか会社のビジョンや世界観に共感して一定数集まってきます。
ただ、一定数を超えてくると集まってこず、そこから先の優秀人材を集める際には徐々に年収を整備していかないと人が集まらない傾向にあるので、規模と比例関係にあるのかなという風には思います。

Asakoshiさん:リアルですね…会社の成長に伴って、というところが。
自分が入社した際の再現性の説明が出来た方が年収が上がりやすいといったお話があったかと思います。
個々のPMがこう語れると再現性が上がるというコツはありますか?

松永:自分のプロジェクトの中で上手くいかなかったことを思い出していただくのが一番いいかなと思っています。その時に戻れるなら、今だったらどうするかを自分に問うて答えられることでしょうか。これは弊社顧問及川から聞いた方法です。

山本:タイムマシンで戻れたとしたら何をする?っていう思考法ですね。
あとエムスリーの山崎さんがこの間PMカンファレンスで仰っていたのが、PMチーム内でパフォーマンスをどう出していたか?や、エンジニアやデザイナーやCS、ビズデブ等PM以外のプロダクトチームとどうやり取りしていたか?や、どういう人がチームの中でどういう動きをするのかを喋れるとイメージしやすいと仰っていました。

Asakoshiさん:実際の動きが見えると、再現性に繋がっていくということですね。

松永:より実践に近くしていくと、受ける会社のプロダクトを自分で触って、「自分だったらこうする」、「ここが課題だと思った」、と話せる状態にまでしておけば、再現性を感じやすいですよね。兎に角ロールプレイだと思います。

Asakoshiさん:再現性のリアルさが伝わっていくということですね

山本:面接で「弊社のプロダクトを改善するとしたらどうしますか?」という質問はよくされますね。優秀な候補者さんだと、先んじてデモを触らせて下さいと面接前に依頼を受けたケースはありました。

松永:企業側は喜びますよねそんなこと言われたら。本気じゃん!と。
触れる環境であれば触らせてくれる会社もあります。全然要求して良いことだと思います。

質問者Hさん:非マネージャーのシニアPdMの次のステージは、どういったものがありますか?
他職種だとマネージャー職だと思うのですが、PMのマネージャーの席は非常に少ないように感じています。

山本:マネージャーはVPoP的な所謂ピープルマネジメントをやるというのもあれば、CPOのC職は目線が違うと思っています。単純にプロダクトチームのトップというより、中長期的な会社の経営を考えた時にどういうプロダクトでやるべきかや、どこから開発すべきかや、ロードマップを短期ではなく中長期で引いてみる、そのためにどういうエンジニアチームが必要かというところまでを考えるC職は非連続的にあるんじゃないかと思います。

松永:組織を作れたり、育成出来る方はどの企業からも喉から手が出るほど欲しがられます。
組織としてのマネージャーであるシニアPMだけでな無く、育成が出来るPMを目指していくのはあると思います。

Asakoshiさん:単純にプロダクトを1個を作るというところから、会社全体をみるC職みたいなところとか、成長をマネジメントする等に領域を広げていくことがありえる感じなんですね。

山本:あまりプロダクトづくり専門職人みたいな方は聞かないです。

松永:プロダクトマネージャーは職能範囲を考えるとそれがあまり起きにくいかもしれないです。
シニアPMになっても自分が足りていないところを引出しを広げに行く方が多いです。

山本:やったことがないところに行くというのもありますね。
toBからtoCへ、ウェブからアプリへ、ホリゾンタルからバーティカルへ。逆も然りで、その幅が広い程PMは強くなると常日頃顧問の及川が言っています。
純粋に上に上にというだけではなく、幅を広げるだけでもPMとしてのキャリアアップと言えるんじゃないかなと思います。

Asakoshiさん:修羅場をくぐったり、安全なところから出ていくのが大事だと言いますもんね。

松永:何を取りに行くのかをはっきりさせた上で取りに行くのが大事で、スタンプラリー的になるのは良くないです。この引き出しを増やしたい!と意志をもっていかなければ、それこそ何者でもなくなってしまう怖さはあると思います。

Asakoshiさん:難しいですけど大事ですね。

山本:エムスリーの山崎さんはMVPではなくPMFする過程、量産フェーズになる過程でPMがKPIを持つことになるので、その経験を経て色々なことが身につくのではないかと仰っていましたね。

Asakoshiさん:リリース後の改善や、その後で学ぶことが多いということですね。

(Ask the Speaker終わり)

おわりに

いかがでしたでしょうか。
PMに関するキャリア記事や情報発信は近年どんどん増えてきていますが、年収のリアルに迫ったものはあまり多くはないと思っています。
ただでさえ、PMの方々は孤独にキャリアと向かい合っているイメージがあるので、少しでもこういった発信によってリアルなマーケット感を知っていただけると嬉しいです。

また、PMの年収自体が上がってきたことはとても喜ぶべきことである一方、最近は需要過多のため獲得競争が激しくなってきている(誰でもいいのではなく、こういったシーンでは二極化します)ため、1~2年後にはまた違った様相になっている可能性もあります。

今後もリアルなマーケット情報をお届けしてまいりますので、乞うご期待ください!

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※2022年5月31日追記
PMキャリアに関するポッドキャストも始めました!
是非ながら作業中などにお聞きいただければ!


クライス&カンパニーPM支援チーム


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