良いPMを採用するために伝えるべきこと、実は伝わっていないこと
この記事は "プロダクトマネージャー Advent Calendar 2021" の 2日目の記事です。
はじめに
みなさんこんにちは。クライス&カンパニーの松永・山本です。
これまでの記事ではどちらかと言えば求職者のPMの皆さん向けの内容を発信してきました。過去には企業がPMの選考で何を見ている?という記事も書かせていただいていますが、今回は初めて、「PMを採用したい企業向け」の内容を書いてみたいと思います。
我々がキャリア面談の場でPMの方々にお会いした際、実は自社の採用に関わっているというPMの方も多く、この内容がお役に立てるのではないかと思いました。
では、早速本題に入っていきましょう!
ありがちな求人内容
まずはこちらをご覧ください。
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弊社のビジョンの実現を強く推進するためのプロダクトマネージャーとして、以下のような業務をお任せします。
・プロダクトロードマップの策定
・プロダクトの成長のための課題の定義とその解決策の模索・実行
・新機能の企画と開発、機能改善などのプロダクトマネジメント業務全般
・エンジニアやデザイナー、営業やCS、マーケティング部署との社内連携
・協力会社との連携や調整なども含めたプロジェクトマネジメント
・ユーザーヒアリング
・アンケートやSQLなどを利用した定性定量分析
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あれ?これ、うちの会社の求人情報のコピーじゃないか?と、思われる方もいるかもしれませんが、違います 笑。
完全に私がオリジナルで手打ちしたものです。でも、そう思ってしまうくらい”よくある内容”なんです。
正直、これを見たときの求職者心理としては
「どこも同じようなことが書いてあってよくわからないな」
「何を期待されているのかわからないな」
「今の会社と同じようなことしかできないのかな」
「PMのことがよくわかっていなくて、仕事を定義できていないのかな」
など、決してポジティブとは言えない方向に気持ちが傾いていくことになると思います。
伝えるべきこと≒求職者の方が知りたいこと
じゃあどんなことを書けば・・・と思いますよね。
ここで、”我々がキャリア面談の際にお伝えすると、ググっと求職者の方の温度感が上がる内容”をお伝えします。
・PM組織は独立しているのか、エンジニア組織やBiz組織の中にあるのか
・何名くらいの組織で、レポートラインは誰か(CPO?COO?事業責任者?)
・直属の上司はどんな経歴の方か
・同僚になるPMメンバーはどんな人達で、どんな強みがある人なのか
・PMの担当はどのように分かれているかプロダクトごと、機能ごと?
・PMの担当業務ではないことは何か(これとても大事です)
PMの方々がなぜ、上記のような情報を知りたいのか。
それはPMの皆さんが、
・「プロダクトファースト、プロダクトドリブンな会社に行きたい」と思っており、かつ、その見極めに苦労しているから。
・PMの仕事の守備範囲の広さの中で、自分が活躍でき、かつレベルアップできる業務内容を見極めることが難しいことを知っているから。
この辺りは以前のnoteでも書いた、転職理由の裏返しです。今の環境で叶えられないことを叶えるために転職をするのです。
また、もちろんシニアな方の中には、スタートアップの一人目PMやCPO候補のような形で、これまで培ったスキルを活かしつつ、新たな経験をしたい、という方もいらっしゃいます。そういう方には上記は当てはまらないのか、というと、そんなことはありません。
一緒に仕事をする経営陣がどんな方々で、どこに課題があり、それは自分に解決できそうなのか。プロダクトはどんな体制で、どんなメンバーが関わっているのか。この辺りを踏まえて、ご自身がチャレンジしたい環境かを判断しようとされています。
実は伝わっていないこと
基本的にPMが転職で最も恐れていることと言っていいのは、プロダクト価値の最大化に集中できない環境に置かれることです。
我々が求人企業と採用のための打ち合わせを行うと、ほとんどの会社が「いやいや、うちはとにかくプロダクトドリブンでやっていますよ!」とおっしゃいます。
でも、それ、求職者の方に伝わっているのでしょうか?
前項でも書いたように、ここは求職者の方に差別化できる部分でもあり、またベースになる部分でもあります。ここに確信を持てれば、PMは安心して”応募する”ボタンをクリックできるのです。
例えば、以下のようなポイントでしょうか。
・意思決定プロセス:PM組織内で決定したことはCPO判断でGOが出る
・企画の立て方 :定量・定性で集まったユーザーの声を中心に開発の優先順位をPMが決める
・事業責任との関係:事業とプロダクトのそれぞれの成長を担う責任者が分かれている。
・情報共有のされ方:事業戦略がオープンにPMに共有され、プロダクト戦略とのすり合わせを随時行える
アンチケースは敢えて記載しませんが、イメージは沸くのではないかと思います。
これを全て満たしていないといけない、というものではもちろんありませんが、上記のような情報があることは転職先を選ぶ上で安心につながります。
イケてる求人情報とは?
さて、上記踏まえて、どんな求人情報がイケているのか?を例示してみたいと思います。
※こうでなければいけない、という内容ではなく、あくまで視点の話です。
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弊社のビジョンの実現を強く推進するためのプロダクトマネージャーを募集しています。
・PM組織は独立した組織で、弊社の4つのプロダクト群を横断する組織となっています。その中で今回は〇〇を担当していただく予定です。
・エンジニア組織は別にあり、PM組織と同様にプロダクト横断型の組織です。同じプロダクトを担当するバーチャル組織としてPM1人に対して平均してエンジニア4-5人が一つのプロダクトを作っていくチームを構成します。
・プロダクト組織には、CPOを筆頭に6名のPMが在籍しています。ご担当いただくプロダクトの〇〇は弊社の稼ぎ頭となっているプロダクトのため、先輩社員2名と共に3名体制で担当いただくことになります。
・先輩社員2名は元々エンジニアの出身で、技術に強いメンバーです。またCPOは~~のような経験があり、基本的にはプロダクトにおける最終意思決定はCPOが行っています。
・事業計画の立案や売上利益などはPMではなくビジネスサイドが見ています。また、広告出稿などのマーケティング業務は別のマーケティング部隊が行うため、本ポジションの管掌範囲ではありません。
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いかがでしょうか。大分もりもりになってしまいましたが・・・
採用側という視点を一旦横に置いておいて、「求職者」としての目で見てみてください。その時に、応募してみようかな、話を聞いてみようかな、という気持ちが少しでも高まりそうであれば、是非求人内容を変えてみてはいかがでしょうか。
企業様との打ち合わせで確認したいこと
ここからは、実際に我々が採用される企業の方々とのお打ち合わせや初回アポの際に、どんな点を確認しているか(=PM候補者は何を知りたがっているかと同義)をお伝えしていきたいと思います。
たまたま先日、SmartHRさんとのお打ち合わせ(座談会)内容が公開されたので、そちらを参照しながら解説していきます!
①とにかく具体の話を聞いていく
まずはこちらのキャプチャを御覧ください。
こちらはSmartHRさんに画面共有いただいたスライドになります。こういった資料を見せていただけるだけでもう大満足なのですが、大変僭越ながらいくつかの質問をこの後させていただきました。
まず、
という質問をさせていただいたのですが、「なぜこの質問をしたか」の前に企業打ち合わせ時の「あるある」をご紹介します。
企業様からのプレゼンや説明を伺っている際に、
「うちは◯◯があるんです」
「弊社は◯◯が得意なんです」
というポイントをよく聞くのですが、エージェントの視点で見ると、
「この間別の会社さんも言ってた・・・」
「このまま候補者の方に伝えても、たぶん響かないだろうな・・・」
というシーンが数多く存在します。とてもとても多いです。。。
このギャップがなぜ生まれるかというと、基本的に企業様は自社の事例のみしか知らないことが多いためであり、何気なく説明している「特徴」が、実はあまり「特徴」として刺さっていないことが発生しています。
(偉そうなことを言っていますが、自社の採用となると弊社も上手くなく伝えきれておりません・・・)
そういった背景を前提に、「情報の透明性」について、
・具体事例が知りたいな
・どうやってその透明性を担保しているんだろうな(言うは易しなので)
・その透明性が自社の従業員にどう刺さっているんだろうな
という追加での深堀りをしたくなる、というのがエージェント心理です。
そして重要なのは、これらは「エージェントが単に知りたい」のではなく、「これらの情報をベースに候補者の方にお伝えすると、非常に納得度が高く、数ある求人の中から選んでもらいやすい」という点に尽きると思います。
それほど人気PMには求人が集まりやすい状況が続いており、いかに彼らのショートリストに入るか、が鍵になっているためです。
②「良いこと」を実現する仕組み/カラクリを聞く
続いて我々から質問させていただいたのが、
となります。
この質問は個人的に多用しているのですが、伺っている根底には先程と同様、
「みんな(他社も)同じことを言うから、それだけ聞いてもなぁ」
「入社後に『あぁ実際は違った・・・』ということもあるよなぁきっと」
という候補者心理にあります。しかしそういった際に、
「◯◯企業は、★★という仕組みがあるから、この運用が担保されているようです」
「▲▲という背景があるので、これが変わることはないと思われます」
といったように、その文化や施策・運用ルールの背景だったり仕組み/カラクリを伝えることで、非常に説得力が増し、
「なるほど、それだったらきっと大丈夫ですね!」
と腹落ちしていただける可能性がグーーーっと上がります。
ですので、「なぜ実現できているか」という点を言及いただくだけで、エージェントからの提案力は一気に強くなることが多いです。
③ジレンマへの姿勢/取り組みを聞く
これまでは比較的、PMだけではなく全般的な職種に通用するお話でした。以下の2つの質問は、ことPMに絞った質問となります。
これらは、実際のPMの方々の声や転職理由を聞いたことから、想起された質問になります。
最近のPMの方は、あまりの求人の多さに選びかねているとともに、
”Product-Led Growth”を体現している企業をいかに見極めるか、を重視していると感じます。
そのため、PM開発における「あるあるジレンマ」のシチュエーションにおいて、
・そのPM組織がどう立ち振る舞うか
・経営者はどう考えているか
・Product-Led Growthを担保するためにどんな仕組みがあるか
といった点を伺うことで、
「安心してください!◯◯企業は、★★という理由でProduct-Led Growthですよ」
とお伝えができるようになります。
単に「◯◯企業は、Product-Led Growthですよ!」とだけ伝えても、真に腹落ちはできないので、この「★★」という理由の部分が非常に大事になってくるのです。
終わりに
いかがでしたでしょうか。
最近は本当に多くの企業からPM採用の支援依頼をいただくことが多いのですが、PM採用難のこの時代、すべての企業に十分なご紹介が出来ているかと問われると、自信をもってハイと言えない状態で、心苦しい限りです。
今回のこの内容が、PM採用にお困りの皆さんに少しでもお役に立てば幸いです。
プロダクトマネージャーの採用にお困りの企業の方はこらからどうぞ!
もちろん、求職者として転職・キャリアについてのご相談もお待ちしております!
※2022年5月31日追記
PMキャリアに関するポッドキャストも始めました!
是非ながら作業中などにお聞きいただければ!
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