見出し画像

PM組織に色々聞いてみたシリーズ Vol.3 エムスリー編

こんにちは。クライス&カンパニー、PM支援チームの松永です。

早くも3回目になりました、「PM組織に色々聞いてみたシリーズ」。
今回は医療業界をプロダクトの力で前進させているエムスリーに突撃してきました!

※本シリーズの過去記事はこちら
第一回:SmartHR編(記事後半です)
https://note.com/pdm_kandc/n/na459e7c2147f
第二回:マネーフォワード編
https://note.com/pdm_kandc/n/nb53aee186336

キャプチャ2


※画面左上から
 執行役員VPoE/山崎様、グローバルプロダクト担当PM/久野様、人事/友永様

■はじめに 今回改めて実感したこと

今回の企画を終えて感じたことは、PMにとって働く環境は自身の成長や成果にとってとても重要だ、ということです。…あれ?当たり前ですね…。

もう少し詳しくお伝えすると、会社によって定義や業務範囲が違うPMは特に”どんな環境で働くか”に左右される部分が大きいと感じます。自分の頑張りではキャッチアップしきれない何かがあったり、仕組みとして実現が難しいことがあったり。

今回エムスリーさんのお話を伺いそれを強く感じたのは、同社の特徴は特に以下2点に集約されていると感じ、これはもう個人の頑張りだけではカバーできないと感じたからです。

1. 業界トップのビジネスを加速する「PMの裁量」
2. 圧倒的な学習効率/成長確度を生み出す仕組み
番外編:グローバルプロダクトも展開中!

これらを
弊社からエムスリーさんへの質問とその回答(Q&A)
 ⇒いただいた回答についての詳細解説
   ⇒そこから得られた学び
という流れで、順に説明していきます!

■1. 業界トップのビジネスを加速する「PMの裁量」


「弊社の魅力は何といってもPMの裁量の大きさです!」我々が企業とのお打ち合わせの際によく聞くフレーズですし、求職者の皆さんも目にした回数は1度や2度ではないのではないでしょうか。

とても素敵なはずの魅力ポイントですが、その根拠や背景が乏しいままだと、イマイチ深く刺さりにくい言葉になってしまうことも事実です。
エムスリーさんに今回この点を深く聞いてみたところ、具体的な根拠や背景をお話いただけました。

・Q:裁量があるというのはどういった背景からおっしゃっているのですか

A:圧倒的な事業の数と規模に対して、社員数/PMの人数が少ないことで、PM一人当たりの責任範囲が必然的に広くなることからそう言っています。

お伺いしたところ、エムスリー本体の社員は554名(2021年3月31日現在)です。数多くの事業を展開する中で、平均すると一事業当たり約20~30人という戦力配置になります。その中で、PMは25名ほどの組織。おおよそですが、1名あたり1事業を担当することになります。

言い換えれば、エムスリーは小さなスタートアップ20~30個ほどの集合体のような側面があり、PMはその一つ一つの事業を盛り立て、課題を解決していくことが求められています。いわゆる少数精鋭でクイックなチーム(ビジネスサイド10名、プロダクトサイド10名ほど)の中で、それぞれのトップである事業責任者(PMM兼任が多い)とPMが二人三脚で事業を進めていく、そんな体制になっているとのことでした。

・<この質問から得られた学び>

ここは深く突っ込まないと分からない部分だったと思います。
「PMはシニア含めて多くの人数がいる、かつ事業サイドにも優秀な方がいる」という内容を聞いただけでは想像しにくい部分ですが、事業の規模や数に対してはまだ少人数の組織であり、スモールチームで一つ一つの事業を回していく中でPMがいかに重要なポジションと認識されているか、ということなのだと理解しました。

もう少し踏み込んで、以下のような質問もしてみました。

・Q:戦略コンサル出身者などの、ビジネスサイドにも優秀な方が多いイメージのあるエムスリーですが、なぜPMにそこまで大きな裁量が与えられるのでしょうか

A:医療を変革するような優れたプロダクトを提供するには優秀な戦略コンサルの知見だけでは足りず、優れたプロダクト開発の知見が必要なことを全社員がカルチャーとして理解しているから。また、代表の谷村自身もトップレベルのPMの側面を持ち、PMの重要性を理解しているからです。そもそもエムスリーには「みなをプロフェッショナルとして尊重する」という考えが根付いているので、それぞれのプロフェッショナルが裁量を持ちながら協業するカルチャーがあります。

「PMと事業責任者がタッグを組んで事業を推進していくことの重要性を組織として理解しているからこそ、プロダクトマネジメントの観点や意見が非常に尊重される環境である」ということでした。
戦略コンサル出身者だけでは最先端のテクノロジーを活用した優れたプロダクトやそれが前提となる事業を伸ばすことはできず、エンジニア、QA、デザイナーらとアジャイルにスピード感をもって開発していくためには、PMに裁量があり事業責任者と同等の立場でタッグを組むことは不可欠であるという考え方です。
また、山崎さんが、同社の代表取締役谷村格さんもまさにプロダクトマネージャーのような方、とおっしゃっていたのも印象的でした。
「昔は海外有名MBAを卒業されたようなビジネスマンは戦略コンサルタントや投資銀行へ、という流れが一般的でしたが、今はシリコンバレーでプロダクトマネージャーを目指す方も多くいらっしゃいます。谷村は後者のイメージです」
谷村さんは戦略コンサルを経験した後に、起業されて「MR君」や「m3.com」という大ヒットプロダクトを生み出しています。そういった意味で谷村さんは「エムスリーにおけるプロダクトマネージャーのトップとしての側面を持っている」とのこと。

・<この質問から得られた学び>


事業責任者とタッグを組みつつ、同等の立場でリスペクトしあいながらプロダクトを成長させる重要性が代表のお考え含め、カルチャーとして浸透している、
つまり経営陣を含めたPMでない方々がいかにPMの業務を理解し、ビジネスとプロダクトの成功にコミットする姿勢があるかが大切だと感じました。

以前、弊社顧問の及川と話していた際、プロダクトドリブンな組織とは?というようなテーマで意見を聞いたことがあります。その際の及川の見解が

「プロダクトに直接かかわる仕事をしていない人、営業や、もっと言えば社長がどれだけプロダクトを理解しているかは一つのポイント。」

というものであったことを、このお話を聞いて思い出しました。

■2. 圧倒的な学習効率/成長確度を生み出す仕組み

次に現在グローバルプロダクトやAIプロダクトのPMを担当している久野さんから、同社でPMとして働く魅力をプレゼンいただきました。

無題

この中で特に弊社のアンテナが立ったのは、「高い成功確率」について。
エムスリーでは、10本の新規事業を立てるとそのうち8~9本は成功するという非常に高い成功率を誇っています。それを実現できている理由について質問をしていきました。

・Q:なぜエムスリーでは、高い成功率を担保できているのでしょうか

A:課題の設定が正しくできるからです

ここは「それが出来れば苦労しないよ」、と思われるかもしれませんので、エムスリーさんがいかにそれを実現しているかも聞いています。
ここから見出しになっている、「圧倒的な学習効率/成長確度」に繋がります。

・Q: なぜ課題の設定を正しくできるのでしょうか

A:プロダクトマネジメント手法の基本に忠実であること、成功企業の取り組みについての研究や、PMのオンボーディングと学びへの注力などにより、「勝つべくして勝つ」ことを徹底しているからです。

まず、エムスリーではプロダクトマネジメントについて独自の経験だけに頼ることなく、教科書通り、基本に忠実なプロダクトマネジメントを行っているそうです。名著「Inspired」などにある、シリコンバレーで行われている優れたプロダクトマネジメント手法を徹底し、成功している企業についても徹底的に研究しながら、取り入れられる部分は取り入れています。

また、PMのオンボーディング体制も非常に魅力的で特徴のあるものでした。ジュニアなプロダクトマネージャーには、なんと山崎さんをはじめ役員クラスの方がメンターとして伴奏することで、まず成功を体験する、ということをされているそうです。成功体験を持っているシニアなプロダクトマネージャーが手本を見せながら、勝ち方を教えていくことで、PMとして正しく成長出来るという考えです。

更には組織としての学びの共有も徹底しています。毎週金曜に、エンジニアやデザイナーも含めたミーティングを行い、”PMチームでその週に何を学んだか”や”最近抱えている課題について”を共有し合います。

「PMFした電子カルテサービスがさらに売れていくためには」「患者向け決済サービスがPMFするためにどんなことをしたらいいか」など、自分が担当していないプロダクトの話も聞くことができるので、様々なフェーズのプロダクトの課題や学びを得ることができます。お互いに知見を共有しあうことで、バーチャルにたくさんのプロダクトの課題を解決する経験が出来るという魅力的な共有会です。

上記のような力強いオンボーディングや学びの共有を経て、エムスリーでは課題の設定を正しくできる力を持ったPMを育てることができ、刺激しあいながら成功を連発しているのだそうです。

・<この質問から得られた学び>

各社各様のプロダクトマネジメント組織があり、手法の試行錯誤、場合によっては独自手法の研究などもなされている中で、何が正解なのか分からなくなってしまう【プロダクトマネジメント迷子】になってしまっている方も多いのではないでしょうか。
奇を衒わない王道のプロダクトマネジメント、シニアなPMの方から直々に伝授されるオンボーディング、そして同じくレベルアップしてきたPM同士で頻度高く行われる学びの共有会。このように当たり前のことを丁寧に、高いレベルでやり続けられることこそが企業としてのプロダクトマネジメントの強さに直結するものであると感じました。

一方で、ちょっと意地悪な、こんな質問もしてみました。

・Q:成功からだけでなく、失敗からも学びはあるのではないでしょうか。

A:ないとは言えないが、成功体験を多く積む方が的確に、かつ素早く学べると思っています。

山崎さんは料理に例えて回答してくださいました。
「料理を作ろうとしたときに、失敗経験を繰り返すだけではおいしい料理にたどり着けない。まずおいしい料理の作り方を一緒に覚えて、それを繰り返していくことでしか安定しておいしい料理を作れるようにはならない」と。

分かりやすく納得感のある回答に、弊社一同、唸ってしまいました。

■番外編:グローバルサービスも展開中!

これは学びとは別なのですが、同社の大きな特徴として、グローバルサービスを積極的に展開している点も挙げられます。

グローバルプロダクトを主導している久野さん(なんと新卒入社4年目!)から、どんなお仕事をされているのかをご紹介いただきました。

実はグローバルでも多くのNo.1サービスを運営しているエムスリー。世界1200万人の医師のうち、600万人は何らかの同社グループのサービスを使っています。ただ、600万人が統一して使えるプロダクトはまだない中で、20代の久野さんがそのプロダクト作りをリードしています。

2021年2月から複数のプロダクトを企画、4月にプロダクトを絞り込み、チーム組成からわずか2か月でMVPの提供のスピード感です。これは時間のかかるインタビューや仮説検証などを行う前に2週間でプロトタイプを作成し、イギリス・インド・アメリカに展開。そこでユーザーインタビューとUX調査を行いMVPをリリース、さらに同年9月には正式プロダクトとしての1stリリースを迎えています。さらには現在、EUに向けたプロダクト開発も進めているとのことでした。

また、特徴的なのは以下のスライドです。

無題

代表取締役の谷村さんや山崎さんをはじめとした役員4名+新卒入社4年目の久野さんというチーム編成で、この大きなミッションを任されています。また、海外グループ会社CxOクラスとの折衝も久野さんが中心となり行っています。
他社であれば事業責任者やCxOクラスの方が行うような業務ですが、これをいちプロダクトマネージャーの方が担当されているというのは記事冒頭にも紹介した同社ならではの特徴ということが出来そうです。

■終わりに

今回はエムスリーさんのPM組織や環境について、弊社から掘り下げて質問をして得られた回答、そこから得られた学びをまとめてみました。
第3回が終わりましたが、ここまでお話を伺った企業に各社各様の魅力があり、我々にとっての学びもあり、非常に手ごたえのあるコンテンツとなっております。

今後もシリーズとして発信していきますので、楽しみにお待ちください!

最後になりますが、
求職者として転職・キャリアについてのご相談はこちらでお待ちしております!
プロダクトマネージャーの採用にお困りの企業の方はこちらからどうぞ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?