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経営に近いPMは、PM組織作りにどのようなこだわりをもっているのか?

はじめに

みなさんこんにちは!クライス&カンパニーの田中です。

2017年より実に26人もの「経営に近いPM」の方々にお話を伺ってきたプロダクトマネージャーインタビュー。
今回はこれらのインタビューから「経営に近いPMは、PM組織作りにどのようなこだわりをもっているのか?」を紐解いていきたいと思います!


※組織名称やポジションタイトルはインタビュー当時のもので現在は異なる可能性があります※

①ツールや制度に意図や思想を宿す

株式会社SmartHRで執行役員 VP of Product安達さんへのインタビューで、インタビュアーの弊社顧問及川から「社員全員がプロダクト視点を持つカルチャーづくり」について伺った際に、極めて透明性の高い仕組み作りを実践されているとのお話をいただきました。

周りのメンバーからの評判をもとにPdMを定性的に評価しています。その前提として、当社はプロダクトに対する目線が全社で揃っているんですね。

どのようなプロダクトが正しいのか、どのようなプロセスを踏むのが良いPdMなのか、言語化されてはいないものの全員が近しい考えを持っています。だから、周りからのPdMに対する評判がずれることなく、正当な評価に繋がっていると思っています。

プロダクトの価値を最優先するのは当社の特徴的なカルチャーだと思います。そもそも当社の代表がWebディレクター出身で、モノづくり側の人間であることも大きく影響していると思いますね。

さらにそのカルチャーを維持するために、課題特定や要件定義のプロセスをすべてドキュメントにまとめて社内に公開しており、誰もが閲覧できる。なぜこのプロダクトが生み出されたのか、みながその背景を知ることができるのでビジネスサイドのメンバーも誤解の余地が少ない。ここまで社員全員がプロダクトに寄り添っている会社は珍しいのではないでしょうか。

当社ではロードマップ策定の議論がオープンになっていて、経営陣と各部署の代表による議論の場にPdMが全員参加して傍聴しています

ですから、なぜこの機能を作るのかという意図や目的をそこで明確に把握でき、開発を担当することになった際、エンジニアやデザイナーに対してきちんと説明できる状態になっている。

また、会議で決まったものを必ずそのまま作るわけではなく、本当に妥当かどうかをPdMがお客様へのヒアリングを通して調査していきます。その意見がフィードバックされてまた議論に上り、定期的にロードマップを見直しています。


また、ユニファ株式会社でプロダクトデベロップメント本部 副本部長の西川さんへのインタビューの際に、及川から「パーパスを組織全体で共有してしっかり腹落ちさせるために工夫していることは?」と伺った際のエレベーターピッチの話はとても印象的でした。

絶えず「北極星」が見えている状況にするというか、社員全員が進むべき方向を明らかにすることがまず重要だと考えています。その上で工夫している点としては、プロダクト開発のインセプションデッキを作成する際、担当チームのPdMに自らエレベーターピッチを書いてもらうようにしています

ただ、ゼロからエレベーターピッチを起こすのは言語化能力に長けていないと難しいので、まず私がたたき台を作り、そこに手を加えてもらう形をとっています。

先日発表した「ルクミー」の新サービスも、ファーストバージョンは私が書きましたが、担当PdMに「あなたの考えで書き直してほしい」とお願いしてエレベーターピッチを作り上げました。


②多様性を意識したチームづくり

株式会社Mobility Technologiesで執行役員 プロダクトマネジメント本部 本部長黒澤さんへのインタビューで、PM組織について触れた際に、PM組織の専門性と多様性を重視する「餅は餅屋」の体制にしていることを伺ったのはとても印象的でした。

現在、PdMが12名、デザイナーが14名、データアナリストが7名、そしてUXリサーチャーが2名在籍しています。企業によってはPdMがユーザーインタビューを担うケースもありますが、当社では専門のUXリサーチャーを配置しています。

ユーザーインタビューにも経験やスキルが求められ、かつその結果をフラットに分析する必要があります。プロダクトに想いのあるPdMが担当すると恣意的な誘導や判断をしてしまう恐れがあるので、第三者の専門家に委ねています

GOでは日常的に領域をまたいで複数のプロダクト開発が並行して進められており、常に10本前後のプロジェクトが同時進行しています。こうした状況になると、リソース配分などを横軸でマネジメントする必要があり、専門のプロジェクトマネージャーをアサインしています。

PdMがプロジェクトマネジメント業務を兼務すると、開発工数やスケジュールへの忖度が働いて必ず妥協する。また、横軸でマネジメントできていない組織では、複数のチーム横断で新しいことをやろうとすると、その調整にものすごくパワーがかかり、ローンチできるのは半年後、1年後、みたいなことも往々にして起こりがちです。そもそも自チーム内で完結できる案件のほうが圧倒的に楽ですから、そんな案件ばかり手がけるようになり、全体最適が図られなくなる。

そのため、当社では常にプロジェクトマネージャーをアサインして、横軸でしっかりと全体を把握しながら、優先すべき案件を最適なタイミングでローンチするためにリソースをダイナミックに再配分しています


MNTSQ株式会社のFounder / CEO 板谷さんへのインタビューの際にも、プロダクト開発に携わるメンバーの多様性を意識されているエピソードを伺いました。

いまプロダクト開発に関わるメンバーで、入社時に法律に詳しかった人材はほぼいません。みな六法全書とは無縁で、プロダクトが面白そうだからと当社に参画した人がほとんどです。他方、及川さんのご指摘の通り、ドメインエキスパートを社内で抱えるのは非常に重要であり、私を含めて弁護士資格も持つ者が3人いて、さらに法律に精通した7~8人がリーガルチームを組み、お客様へのコンサルタントにあたっています。全メンバーのうち20%弱ぐらいがリーガルのメンバーですが、法律を学んでいない他のメンバーはまっさらな気持ちで、契約業務がどうあるべきかをむしろ批判的にディスカッションしてもらうことを奨励しています


③ビジネスとアラインさせるカルチャーづくり

セーフィー株式会社の執行役員 植松さんへのインタビューでは、コンフリクトが起こりがちなビジネスサイドとのアラインに言及されており、一体感をどのようにつくっていくかの点で、とても示唆に富むお話が印象的でした。

営業からの声はとても貴重で、プロダクトにも色濃く反映されています。だからこそ、営業との信頼関係を継続していくことが非常に大事ですし、同じお客様に一緒に向き合うことで、信頼関係が醸成されているように思います。

具体的なコミュニケーションとしては、ビジネスユニット合同で全体会を実施し、事例紹介やプロダクトの詳細を一緒に発表したり、営業からのVOCをどうプロダクトに反映させるかを伝えたりしています。

また、ビジネスユニット単位で毎月懇親会を行うなど、コミュニケーションの機会を作り続けています。

私は「プロダクトは売ってくれる人がいてこそ」だと考えています。営業は今のラインナップで頑張って売ってくれていますし、「プロダクトとして不足している部分は申し訳ない」という意識です。

日々の業務においては、ネガティブなことはなるべく早く伝え、営業からの要望に対してベストな対処が難しい場合はベターを提示することを心がけています。


株式会社estieの取締役CTO岩成さんとプロダクトマネージャー中村さんにお話を伺った際も、SLGに見えがちな領域ながら、「事業ごとにチーム型組織を構成していて、ビジネスとプロダクトの間に境はない」というとても印象的なお話が伺えました。

estieは、ポジションに関係なくチーム全体で事業計画を達成しようという意識で動いています。事業ごとに構成されたチームの中で、プロダクトマネジメントトライアングルを最大化することを意識しており、PdMはそのバランスを見て、弱いところを引っ張っていくことが重要な役割となります。場面に応じて、ビジネス側に立つことも、開発側に立つことも、ユーザー側に立つこともあります。そのなかで、どのような課題をプロダクトで解決すれば事業計画を達成できるのか、その優先順位をつけて実行していくことがPdMのミッションです。

estieでは事業ごとにチームを組んでおり、セールスとプロダクト開発がきわめて近い距離にあります。当社のセールスはユーザーと密な関係を構築しており、導入初期の段階からPdMをはじめエンジニアやデザイナーなど開発メンバーもユーザーとの定例会議に出席しています。セールスが不可能なレベルの期待値をユーザーと調整するようなことはなく、開発メンバーも含めてユーザーの課題を解決していく体制となっています。

おわりに

今回は、これまでクライスPMチームが6年弱の中でお話を伺ってきた、CPOクラスの方々からの示唆に富むインタビューから、「経営に近いPMは、PM組織作りにどのようなこだわりをもっているのか?」を紐解いてみました。

・ツールや制度に意図や思想を宿す
・多様性を意識したチームづくり
・ビジネスとアラインさせるカルチャーづくり

改めて振返ってみると、とてもシンプルなワードが並びますが、実際に組織に実装し、かつ発展し続ける中で継続的にコンディションを整えていくことは極めて難しいことではないでしょうか。
それほどの想いやパワーをもって組織に向き合っているPMであり経営者がいる企業は、PMにとってとても幸せな環境なのだと思います。

これからも、なかなか表立って出てこない各企業のPM組織の実態やPM組織にかける思い等、PMキャリアを志すみなさんにお役に立てる情報を提供していきたいと思っています!
今回もお読みいただきありがとうございました。


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