No.968 フォーカシング勉強会でこころの整理法を学ぶ
7月下旬に鹿児島で心理療法を実践している団体”ゲシュタルト.アート.フォーカシングネット”でフォーカシングの勉強会を実施した。
とても充実した時間だった。
フォーカシングとは、まだ言葉にならない漠としたカラダの感じに意識を向けて、気づきを得る方法である。
そのカラダの感じは、私たちが意識的にカラダへ意識を向けなければ感じられない、微細で薄っすらとあるものだ。
しかし、私たちのカラダのその感じはとても大切な感覚である。
それは、私たちがどのように行動すべきなのか、どのように考える必要があるのか、など、私たちが次に何をすべきなのかを教えてくれる、生まれながらに私たちのカラダへ備わっている感覚的機能である。
そのカラダの感覚的機能をフェルトセンスという。
日本語では、「意味ある感覚」と訳すことが多い。
このフォーカシングという方法は、日常の中で誰でも気軽に実践することができる、こころの整理法である。
それも1人で、セルフでやることができる。
例えば、仕事や家庭で何か気分がイライラしたり、落ち込んだり、行き詰まった時、このフォーカシングという方法を使えば、5分程度の短時間でその気持ちを整理したり、軽減することが可能だ。
このフォーカシングという方法は、そのやり方さえ学んでしまえば、簡単に誰でも実践できる。
フォーカシングのやり方としての6つのステップを理解すれば誰でも日常で簡単に実戦できる。
そのやり方、6つのステップを以下に紹介したい。
そして、フォーカシングを実践する前に、自分のカラダに意識を向けられるように、誰にも邪魔されない静かな環境(場所)を選んでもらいたい。
1.自分の気になっていること(気がかり)を明確化する。
私たちは、自分の気持ちに蓋をしてしまうことが多々ある。そして、その気がかりを無視することで、やり過ごそうとする。
しかし、このやり方は一時的には気持ちが収まるかもしれないが、すぐにまた気持ちがモヤモヤしたり、感情が沸き上がったりしてくるものだ。
私が提案するこの方法は、その気がかりを1つずつ明確にして、その気がかりと私が適当な距離を取る方法だ。
まず、自分のカラダの胸からお腹辺りに意識を向けてみよう。そして、「今私にはどんな気がかりがあるだろうか」とカラダに尋ねてみる。
そして、気がかりが出てきたら、自分自身がわかるように「〇〇なこと」というような見出しをつけてみよう。
例えば、「今朝の子供との言い争いのこと」と言ったように。
次に、その気がかりについて、あなたが置いておきたい場所をイメージし、その場所にイメージの中でその気がかりを置いてみる。
例えば、「今朝の子供との言い争いのこと」について、置きたい場所をイメージしてみた時、「遠くに見える山の頂」が浮かんできたなら、その場所をイメージして、「今朝の子供との言い争いのこと」をその場所に置いてみる。
そして、同じようにあなたのカラダに意識を向けて、「他にはどんな気がかりがあるだろう」と尋ねてみる。
同じように、気がかりが出てきたら、その気がかりをイメージの中で少し自分と距離を取れる場所に置いてみる。
これを気がかりが思い浮かばなくなるまで繰り返しやってみる。
2.フェルトセンスを探して、感じる。
あなたが気がかりをすべて適当な場所に置いたなら、次にフェルトセンスを探して、感じてみる。
フェルトセンスとは、言葉では表現することが難しい、まだ言葉にならない漠としたカラダの感じのことを言う。
例えば、モヤモヤした感じとか、ギュッと詰まった感じとか、ずっしりとした重たい感じとか、カラダの感覚としては何となく感じられるが、それが何かわからない感覚だ。
それは、既に言葉として表現されるような、怒りや悲しみ、怖さなどの苦痛を伴う情動ではない。
何か感じはあるが、まだはっきりとしないようなカラダの感じのことを言う。
そして、そんな感じがあなたのカラダに感じられたなら、少しその感じと一緒に居てみる。
「あぁ、今私のカラダには〇〇な感じがあるんだな」というように。ただ、その感じを感じてみる。
そして、その感じを「なぜそんな感じがあるんだろう」とか、「この感じは〇〇なことと繋がっているんだろう」とか、頭の中で解釈してはいけない。
ただ、その感じと共に居て、感じてみる。
3.フェルトセンスにハンドルを付ける。
ハンドルとは、カラダに感じられたフェルトセンスを言葉で表現してみることを言う。
例えば、「モヤモヤした感じ」とか、「ざわざわした感じ」とか、「ずっしりと重たい感じ」とか、そういったものだ。
4.フェルトセンスをカラダと照合(共鳴)する。
あなたがフェルトセンスについて表現した言葉をカラダに伝えてみる。
そして、その言葉がピッタリ(しっくり)くるのかどうかをカラダに聴いてみる。
すると、カラダから「その言葉で今の私のカラダの感じはピッタリだ」とか、「今の私のカラダの感じは〇〇というよりは〇〇な感じがピッタリだ」というような声が聴こえてくるだろう。
例えば、フェルトセンスからハンドルとして、「モヤモヤした感じ」が言葉として浮かび上がったとしよう。
そして、その「モヤモヤした感じ」という言葉をカラダと照合(共鳴)してみる。
すると、「今の私のカラダの感じは「モヤモヤした感じ」という表現でピッタリする」とか、あるいは、「今の私のカラダの感じは「モヤモヤした感じ」というより、「霧の中で彷徨っている」という表現がピッタリだ」といったようなことだ。
5.フェルトセンスに尋ねてみる。
言葉として表現されたフェルトセンスを感じながら、そのフェルトセンスへ尋ねてみる。
尋ねる方法はいくつもあるが、「霧の中で彷徨っている」というフェルトセンスの表現を例に、基本的な表現を並べてみる。
•その「霧の中で彷徨っている」状況は、日常のどんなことと繋がっているのだろう。
•あなたの何が「霧の中で彷徨っている」のだろう。
•「霧の中で彷徨っている」という言葉からどんなことが浮かぶのだろう。
•この問題の全体が「霧の中で彷徨っている」と感じさせるのはいったい何なのだろう。
•私のすべてについて、一番「霧の中で彷徨っている」のは何だろう。
•「霧の中で彷徨っている」私の状況はどんな感じなのだろう。
6.フェルトセンスから出てきた感じを受け取る。
5のステップ(尋ねる)により、往々にして、フェルトセンスがあなたへ何かを伝えてくれる。
その伝えられたものをただ受け取る。
そのことに賛成する必要も、従う必要もなく、ただ、その出てきたありのままを受け取ることが大切となる。
例えば、「「霧の中で彷徨っている」私は未来に対して不安なんだ」という感じが浮かんできたなら、ただ、「私の未来に対して不安なんだ」という、その感覚をありのままに受け取る。
「あぁ、そうかそうか、今の私は私の未来についての不安があるんだな」というように。
そして、その感じを感じられるような少しの時間(1-2分程度)を取る。
この6つのステップにより、あなたのカラダの感じは、フォーカシングをやる以前とは違う感じに変化しているはずだ。
そして、これでフォーカシングを終了することもできる。
もう少しフォーカシングを続けたいのなら、3のステップから続けることができる。
何故なら、あなたは既に新しいフェルトセンスを感じているだろうから。
もし、新しいフェルトセンスが感じられないなら2のステップから始めると良いだろう。
以上が6ステップを使ったフォーカシングの一連の流れとなる。
そして、一つだけ注意したいことは、
この6ステップの順番に縛られてはいけないというこだ。
よくありがちなこととして、6ステップの順番に囚われるがあまり、「フェルトセンスを感じる」という一番大切なことを忘れてしまう。
例えば、2のステップにおいて、フェルトセンスをカラダに感じているだけで、カラダの感じが変化することもある。また、新しいフェルトセンスを感じられることもある。
2のステップから5のステップ→6のステップへと進むこともある。
あくまで、ステップの順番は基本的なものであり、あなたがフォーカシングをやりながら進めてもらいたい。
一番大切なことは、「フェルトセンス」を感じ、その感じと一緒に居るということであるのだから。
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