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LEONE #38 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第7話 2/3


クソ都市。

クソッタレ町だ。本当に。

都市の保安官まで狩猟に加わった瞬間、彼らの獲物であるセロン・レオネは、ある馬小屋の中で荒い息をしていた。

セロンはよろめきながら、馬小屋の壁に背をもたれかけた。ゆっくり滑るように座って、目元を包み込んだ。

誰だ。

いったい誰が僕に懸賞金をかけた……。

いあ、それはわかりきったことか。

セロンは首を揺るがせた。

どうせ、ルチアーノの他に、こんなことをする人も、できる人もいなかった。だから、今自分が質問すべきことは『誰』ではなく『どこ』からだった。

果たして、どこから自分がここにいるという情報が漏れたのか。

不可能なことなのに……。

常識的に考えれば、ルチアーノはセロンの行方どころか、生死さえも分からないはずだ。沈没する巨大戦艦から、カッセル・プライム級の小型飛行艇ひとつが抜け出すことに気づくのは容易なことではないだろう。さらにその時、その一帯は『SIS艦隊』と『第三艦隊』の衝突で大騒ぎだったのではないか。

しかし、ルチアーノはわずか1日で自分の、セロン・レオネの生死を把握した。それだけでなく、正確な位置を確認し、さらに写真まで手に入れた。写真の中の自分もこの笑えないメイド服姿だったから、『ペイV』に到着した後の写真だということになる。

いったい、どうやって…。

その時だった。

「おいおい、それ本当か?」

セロンは慌てて自分の口を封じた。

背中合せの壁の反対側。馬小屋のすぐ外から声が聞こえていた。

「確かだって。ジェニーがこの周辺で、見慣れてない小娘がほっつき歩いてるのを見たんだって」

「その、何だ。もしかしたらどこかの娼婦でも見間違えたんじゃないの?」

「お前、バカか? この町の娼婦なら『カウボーイの夜』に出歩くことなんて死んでも考えないさ。体に穴をもう一つ空けるつもりでなければ」

「その……まあ、いい。みんなばらばらになってもう少し探してみよう」

すぐ散らばる足音が響いた。

東へ、西へ、北へ、南へ、四方に散る足音だった。足音はすべてだんだん遠ざかっていたが、セロンはしばらくして、ようやく口を覆った手を離した。

クソ!

彼女は項垂れ肩を落とした。まるで浮浪児の少女のように、かわいそうな姿で身を縮めた。

この状況から抜け出す方法がどうしても思い浮かばなかった。

ある意味では、ブラディ·レイブンで組織員に囲まれたときの方がまだましだった。少なくとも、あの時のやつらは、やつらが相手をしているのがセロン・レオネだと知っていたから、だから脅しが通用した。

しかし今、あの外を埋めている賞金稼ぎたちは、自分を単なる弱い小娘としか見てないだろう。いや、もし自分がセロン・レオネだと知ったら、もっと嬉しがるかも知れない。『アニキラシオン』のボスにかかった懸賞金なら、2億GDさえもはした金だと思うくらいだから。

そしてなによりも、今はビル・クライドの助けが期待できなかった。

「思えば、昨日はありえないくらいの幸運だったな」

セロンは体をさらに縮めた。抱えているカバンのせいで冷たい冷気が伝わってきたけど、構わなかった。彼女は引きつけたカバンを見下ろして、苦々しくつぶやいた。

「捕獲時2億GD即時払いか……それがこの金を言っているのか、それとも追加の支払なのかは知らないが……どちらにしても奪われるのは同じだろう。給料をなくして残念だね。ビル・クライド」

むしろお金をもっと上乗せしてでも、ビル・クライドとの契約をもっと維持した方が良かったかも知れなかったと、セロンは遅れた後悔をした。

よりによって賞金稼ぎの巣窟に足を踏み入れなかったら。少なくとも、とんでもない理由でビル・クライドが保安官たちに連れて行かなかったら。

そうしていたら、お金を引き出すのがこんなに遅くなったりはしなかっただろうし、無事に今日中にこの惑星から離れることができたかも知れない。そう考えると、結局すべての問題の発端は、銀行を探すのにあまりにも時間がかかったからだ。銀行で……。

銀行……?

「……銀行?」

呆然とした声で、セロンは再び同じ言葉を繰り返した。

いや、既に知っていた可能性だった。しかし、無意識のうちに否定してしまった可能性でもあった。それだけ不可能なことだ。しかし、それ以外の可能性は考えにくい。
セロンはカバンをにらんでいた。

細く震える声で、頭の中をかすった可能性を振り返る。

「口座を……追跡された?」

不可能だ。

おもわず言葉を出すと同時に、セロンはもう一度否定した。

断じて不可能なことだった。レオネ家の秘密を知ることができるその口座は、一日二日で気まぐれに作られたものでなかった。『アニキラシオン』が組織された当時から、セロンの父である先代のカルロ・レオネから、徹底的に秘密裏に作られたものだった。

レオネ家以外の人は、たとえ『アニキラシオン』の幹部でもその口座の存在さえ知っていない。ルチアーノはもちろん、十二艦隊の誰でも同じだった。レオネは、部下の上に君臨し彼らにえさを与えるだけで、決して彼らを信頼していないからだ。

そもそも、それ程度の確信を持っていなかったなら、自分がその口座に手を出すことはなかっただんだ。

「……そんなはずない」

セロンは固唾とともに疑惑を飲み込んだ。もう一度考えてみても不可能なことだった。レオネ家の人だけが、その口座を知っている。そして自分、セロン・レオネは生き残った唯一のレオネだ。

セロンは首を振りながら、カバンを抱えていた腕から力を抜いた。カバンから彼女の膝の上にお金が散らばった。

その瞬間、彼女の目に何かが入ってきた。

セロンはゆっくりカバンの中へ手を伸ばした。指先に何か小さなもの当たり、彼女はためらうことなくそれを取り出した。

小型発信機が暗闇の中で、赤い光をちらつかせていた。


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著者プロフィール チャン(CHYANG)。1990年、韓国、ソウル生まれ。大学在学中にこの作品を執筆。韓国ネット小説界で話題になる。
「公演、展示、フォーラムなど…忙しい人生を送りながら、暇を見つけて書いたのが『LEONE 〜どうか、レオネとお呼びください〜』です。私好みの想像の世界がこの中に込められています。読んでいただける皆様にも、どうか楽しい旅の時間にできたら嬉しいです。ありがとうございます」

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