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イスラエルで改正される新たなプライバシー制度

※このインタビューは2024年8月5日に収録されました

各国でプライバシー法の見直しが広がりつつある中で、サイバー空間での争いとデータ保護も重要なテーマになってきています。

今回はイスラエルの弁護士事務所Erdinast, Ben Nathan, Toledano & Coでデータ保護に取り組むリオアさんに、これからのデータ保護制度のあり方と対策についてお伺いしました。

Kohei: 皆さんこんにちは。本日もプライバシートークにお越しいただきありがとうございます。本日はイスラエルからリオアさんに参加いただいています。リオアさんは長年イスラエルでデータ保護とプライバシーに精通した法律家として活動されてきました。

リオアさん。本日はお越しいただきありがとうございます。

Lior: インタビューに招待いただきありがとうございます。

Kohei: では、リオアさんのプロフィールを紹介したいと思います。

リオアさんは欧州GDPRやイスラエルのプライバシー法の専門家で、ビジネス上での情報ガバナンス対策に広く知見があります。

コンプライアンス対策のアドバイスに加えて、企業取引やプライバシーに関連した商法契約、内部ポリシーや組織評価、ベンダー対策や第三者利用者への対策等をライフサイエンスやオンライン企業に対して知見を提供しています。

リオアさんは企業や証券、商法関連のアドバイスも提供し、テクノロジーやライフサイエンススタートアップを始め、起業家等の多様なビジネス取引に関わっています。公の企業に関連した国際取引にも関わり、主に米国での証券や組織ガバナンスに知見を提供しています。

改めて、本日は宜しくお願いいたします。

データ保護分野で法務支援を始めた理由

Lior: ご招待いただきありがとうございます。先程ご紹介いただきましたが、私はテルアビブを拠点に活動する法律事務所Erdinast, Ben Nathan, Toledano & Coでデータ保護とプライバシー対策のトップとして活動しています。

この法律事務所自体が私のスタートアップで、広く設立に関わっています。プライバシーに関連した分野はイスラエルのコミュニティでも盛り上がりつつある領域なので、詳しいことは後ほどお話しできればと思います。

特にここ最近イスラエルのプライバシー法の大規模な見直しが実施されるということもあり、私自身ワクワクしています。現在の役職に就くまでには、商業法の法律家として、最先端の技術や買収案件、セキュリティ部門に関わっていました。

前の仕事も非常に楽しかったのですが、GDPRが施行されることになり、イスラエルでも大きな変化がありました。市場全体もそうですが、特にテクノロジー業界の動きは初期段階から変化が生まれていました。

私が現在プライバシーに注目しているのはこういった背景があるからです。イスラエルの企業が実施するコンプライアンス対策に日々関わり、データの取り扱いや周辺対策に加えて、イスラエル内でのサイバーセキュリティインシデントや複数のプライバシー保護監督局への報告等の支援も行っています。

勿論、IT領域での合意を取り付ける仕事もありますが、日々の仕事の中ではデータ利活用で検討すべきことがより複雑になってきています。M&A取引やテクノロジー企業への投資を検討する際にもプライバシー対策のデューデリジェンスは欠かせません。

これも私たちの仕事の一部ですね。現在関わっている仕事の多くはデータ保護やプライバシーコンプライアンスに関わるものです。

Kohei: 新しい動きですね。先程リオアさんの自己紹介で、スタートアップに対するリーガルアドバイスも実施されていると聞きました。リオアさんが法律の専門家としての道を進んで行こうと思った理由についてもお伺いしても良いでしょうか?

スタートアップを始めとした新興企業への支援を行うようになった背景についてもお伺いできると嬉しいです。

Lior: そうですね。先程ご紹介した通り、元々は商業法に関連するような組織法務の専門家として活動していました。そこからプライバシーやデータ保護の分野に関わるようになったのですが、より商業法を強固にしたものであるという意味でも相性が良かったです。

訴訟や紛争についても、プライバシー分野で関わっている方はいらっしゃいますが、これまでに私が関わってきた領域とは少し異なるアプローチを採用しています。結局はプライバシーカウンシルのような特別知見を持った方が関わることになります。

私たちの役割はデータを活用して、取引を商業化させることにあります。データを適切に活用し、マネタイズしていくことも私たちの役割としては求められることになります。そのためにはプライバシーに関する権利や情報を提供する方々の権利についても考える必要があります。まさに、後援者の役割を担っています。

イスラエルへビジネスを展開する上での弁護士事務所の役割

Kohei: ありがとうございます。データ保護を実現するために、法的な動きを把握することは非常に重要だと思います。自己紹介の際に説明いただいたように、リオアさんの所属する法律事務所では広く法的な実務面を含めた支援を実施していると思います。

ここからは所属されている法律事務所の独自性やクライアントへの提供価値についてもお伺いしてよろしいでしょうか?

Lior: 勿論です。まず我々の法律事務所はイスラエル国内では広く知られていて、イスラエルの多くの企業と取引があります。それ以外に、国際的な企業や他国の法律事務所との連携も進めていて、投資家や大中小問わず新しい分野の企業ともイスラエル国内で広く連携しています。

活動の中心はイスラエル国内の法制度についての支援になるので、イスラエル市場への展開が中心となります。外国企業がイスラエルの企業へ投資する場合や、イスラエルへ進出する場合、そしてイスラエル企業を買収するケースも対象になります。

イスラエル発のテクノロジー企業は、約90%の企業が国外への展開を目指すことになるので、私がアドバイスする際には欧州のGDPRやその他関連標準を参考に、クライアントが対象とする市場展開を支援することになります。 

画像:イスラエル発で世界中に展開するネットワーク

私たちの事務所が持っている強みは、クライアントが抱える法的な課題に対して広くソリューションを提供できる点にあります。勿論、他の分野からソリューションを見つけてくることもあります。

私たちは自らを、「イネーブラー」と位置付けていて、ビジネスに必要な法律事項をまとめ、提供するようにしています。

法律事務所内でも、部門を越えた連携を積極的に進めていて、一人でプロジェクトを進めることなくパートナーと連携しながらプロジェクトに当たっています。

例えば、労働法に関する課題解決が出てきた場合には内部の専門チームに確認しますし、競争法での課題が出てきた場合も内部で専門的に取り組んでいる人たちに意見をもらうようにしています。

このように、部門を越えて広く時間を共有することによってお互いの相乗効果につながっていきます。これも私たちが取り組んでいる強みです。

イスラエルで改正される新たなプライバシー制度

Kohei: ビジネスを始めようと考えている企業にとって、広く法的なサポートを受けられるというのは良い機会ですね。イスラエル国内への展開だけでなく、イスラエル国内の企業と連携する場合にも重要な役割を担われていると思います。

次の質問はイスラエル国内のプライバシー法に関する動向についてお伺いできればと思います。リオアさんがLinkedInで投稿されているポストを拝見したのですが、ここ10年間の議論を経てイスラエル国内でプライバシー法の改正が行われるという内容を拝見しました。

ここからはイスラエル国内でプライバシー法についてどのような議論が行われ、改正することになったのか教えていただけませんか?

Lior: ご質問ありがとうございます。まさに、イスラエルではプライバシー法の改正が進んでおり、非常に面白い展開になってきています。イスラエルのプライバシー法、データ保護法は1981年に制定されて以来、何度か改正が行われてきました。ただ、ここ10年以上は大きな改正が行われていなかったのです。

ただ、今回法律の改正が行われることになり、1981年に制定されてからこれまで引き継がれていた古い規定を見直し、新しい基準を作っていくことになります。

画像:1981年から引き継いでいたものを2024年に改定

改正にあたり、いくつかマーケットの要請に答えたボトムアップ的な内容も含んでいます。まずは欧州のGDPRを参考に、必要な要素を整理しながら標準的な項目を整理し、世界各国で求められる要素をイスラエル国内の法にも適用していくことになります。勿論、イスラエルのデータ保護監督局からのガイダンスを要素として含んでいます。

イスラエルは欧州委員会との十分性を2011年に締結していましたが、時代の変化とともにいくつか見直しが必要な箇所があったため、今回の改正で新たな基準に適合し、市場の要請に答えた形になります。

今後の法解釈については、ガイダンスや市場での実施内容に頼ることになります。現場での実運用も兼ねた上で、テキストに落としていくことになりますね。さらに、イスラエルではGDPRと同じ2018年5月に情報セキュリティに関する規制が施行されています。

このような重要規制が生まれてきているのですが、まだ十分な制度設計には至っていません。そこで、今回の13条はプライバシー法の改正を検討する上でも重要な意味を持っています。

現時点で記載がないものについてもいくつか存在していますが、非常に重要な問題については既に提起されています。改正の中で重要なポイントとして、政府機関がより強い権限を持ち執行にあたることができるよう明記されています。特に金融関連の制裁については、これまでに明記されていなかった点も今回は加わりました。

〈最後までご覧いただき、ありがとうございました。続きの中編は、次回お届けします。〉

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Interviewer, Translation and Edit 栗原宏平
Headline Image template author  山下夏姫

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