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Googleが生活者を中心としたプロジェクトを推進し始めている理由

※このインタビューは2022年7月13日に収録されました

大手テクノロジー企業はプライバシー対策を行うために、社内ガバナンスに限らず様々な取り組みを各国で行なっています。

今回はGoogleで南欧地域の公共政策に取り組むアンドレアさんに、Googleのプライバシーに関する取り組みをお伺いしました。

前回の記事から

なぜGoogleは新しいプロジェクトへ参画し、複数のステークホルダーとの対話の場を重要視しているのでしょうか?背景を教えて頂けると嬉しいです

複数のステークホルダーと一緒に学び合う環境とその狙い

Andrea:もちろんです。ご質問ありがとうございます。Consumer Empowerment Projectは消費者団体のEuroconsumersとGoogleが共同で設立した取り組みです。消費者団体が市民社会や民間企業と連携することは始めての取り組みで、我々は生活者の課題に対して開かれた空間で議論を進めていくことを狙いとして運営しています。

プロジェクトに参画する方々と議論を行うことによって、参加者全員が十分な情報を理解した上で、意思決定を行うことができるようになります。

私たちの取り組みで生活者の方々を議論を通じてデジタル空間への理解を深め、デジタル化や持続可能性への責任を一緒に考えていく後押ししていきたいと思っています。この取り組みは生活者団体や市民団体、民間企業にとっても開かれた場にしていきたいと思っています。

そういった背景から、Consumer Empowerment Projectは生活者の視点をもとに、複数のステークホルダーで議論を行う新しい取り組みです。

プロジェクトの2つのポイントを紹介させてください。一つ目がConsumer Leadership Academyです。

(動画:Consumer Leadership Academy (CLA) | Overview)


Consumer Leadership Academyはルイージ・ボッコーニ商業大学IE ビジネススクールと共同で開発したコースで、生活者の問題に明るい専門家を政策立案やビジネスの視点から誘致し、未来に向けて議論を行うコースです。特にデジタル改革と持続可能性についてのテーマを取り上げて話をしています。

第一回目はルイージ・ボッコーニ商業大学で先月実施され、第二回は来年IE ビジネススクールで実施予定です。ミランのルイージ・ボッコーニ商業大学で実施した3日間のコースは未来の生活者の在り方を中心に様々な角度から議論を行い、非常にが盛り上がりました。

第一回の参加者からは非常に貴重な知見を共有頂き、デジタル改革と持続可能性に向けて有意義な議論を行うことができました。

生活者の状況を見える化することによって実現できること

Consumer Empowerment Indexと呼ばれる指数も開発していて、生活者の人たちが容易に情報を理解できるように、デジタル上で必要な情報にアクセスできているかを証拠となるデータをもとに数値化し、数値化したデータをもとに生活者を中心にした政策討論を行う取り組みも始めています。

図:生活者が容易に理解できるような数値化プロジェクト

この指数は誰でも利用可能な公開ツールとしてデータ分析のために活用する計画です。指数をうまく活用し、実施結果を計測することでデジタル空間での生活者体験を測ることができるようになります。

欧州域内で他国の数値を参考にし、各国で実施されている素晴らしい取り組みを域内の国々で共有して生活者体験を改善しながら、欧州全体で生活者中心の動きが広がるように新しい標準指標を設計していきたいと考えています。

私たちのプロジェクトではご紹介した2つのポイントを中心に具体的に取り組んでいきたいと考えています。さらにプロジェクト内でも、次のステップに向けた取り組みを新たなメンバーと議論していく予定です。

Kohei:それは素晴らしいですね。プロジェクトについてもう少し詳しくお伺いさせて頂きたいと思います。実施するプロジェクト内で生活者が参加できる設計を検討されているとお話しされていましたが、なぜ今回のプロジェクトへGoogleも協力することになったのでしょうか?

Googleにとっては他のステークホルダー同様に生活者が重要であるという話がありましたが、なぜConsumer Empowerment Projectに取り組もうと思ったのかを教えて頂けると嬉しいです。

Googleが生活者を中心としたプロジェクトを推進し始めている理由

Andrea:わかりました。プロジェクトに取り組み始めた理由は二つあります。一つは利用者を中心としたプロダクト体験を法規制に準拠しながら進めていく必要性を理解しているからです。利用者体験の向上と利用者保護は、私たちがプロダクトデザインを進めていく上で、とても重要な役割を担っています。

もう一つの理由は利用者の方々と信頼できる関係性を築いていきたいと考えているからです。より信頼できる関係性を築いていくためには、私たちから利用者の方々へ情報を提供していく必要があります。利用者の方々を保護するためのツール等を基本的な権利を守るために提供することも必要です。

この2つの考え方をもとにして公共的な組織だけでなく、消費者団体や他のステークホルダーの方々とも連携を進めています。利用者の権利が大切であることを伝えたり、利用者を保護するツールの研究を進める等、利用者にとって最良の方法を考えていきたいと思っています。

Kohei:素晴らしいですね。私もよくGoogleのサービスを利用させて頂くのですが、プライバシーに配慮した設計がより進んできていると感じています。利用者の安全性を守る観点からもConsumer Empowerment Projectは非常に素晴らしい取り組みであると思います。

このプロジェクトに限らず、アンドレアさんはGoogleで新しい取り組みを始めていると思います。South EU Google Data Governance Chairという名前だとお伺いしたのですが、このプロジェクトについても教えて頂くことはできますか?

Andrea:わかりました。プロジェクト内容について質問頂きありがとうございます。 The Google Data Governance Chairは2012年にスペインのマドリッドにあるCEU サン・パブロ大学で立ち上がった欧州で初めての取り組みになります。

The Google Data Governance Chairが目指しているのは、プライバシー社会とイノベーションが共存し、今後10年間で法律の側面から個人データを取り扱う技術イノベーションをどのように研究していけば良いのか方向性を見出すことを目標として取り組んでいます。

プライバシー社会で求められる技術要素と新しい研究の形

Chairではプライバシー分野での知識開発の発展をミッションに掲げていて、私たちの社会の中で実現するデータ保護やプライバシーに必要な技術イノベーションに取り組む場の設計を進めています。

Chairはプライバシー権を保護することを中心に掲げ、ソーシャルメディアやビッグデータ、データを活用したイノベーションを始め、スマートフォンや位置情報技術、人工知能等が我々が生活する社会に与える影響を分析し、効果を検証しています。

図:プライバシー分野での新たな知識開発の場

ここ数年間にChairではサイバー空間での正当性や国際的なデータ取得の問題を始め、サイバーセキュリティとオンライン販売における生活者の権利について研究しています。

これから研究が必要な課題は、プライバシーやセキュリティ、そしてイノベーションを両立し、デジタル経済に向けた規制のフレームワークを念頭に置きつつ、ビッグデータについての取り組みや忘れられる権利等のバランスがテーマになります。

Chairを始めてから新しい技術とプライバシーについての権威組織として、我々のセンターが機能し始めていて情報交換のフォーラムとしての機能も持ち始めています。

Chairは政府代表との連携も進めており、データ保護関連の機関や欧州データ保護監察機関、国際的な研究機関や欧州域内及び全世界の専門家との連携も進めています。

2021年6月にSouth EU Google Data Governance Chairを立ち上げたのですが、初期のボードメンバーはトップにホセ・ルイス・ピニャール・マニャス教授、ポルトガルのノバ法科大学のマリア・デ・グラシャ・カント・モニス教授、アテネ大学のジョルジオ・ヤノポロス教授、 ローマ第三大学のヴィンセント・ゼノ・ゼンコビッチ教授が就任しました。

South European Data Governance Chairでは南欧諸国や欧州諸国のデータガバナンスによる科学的な影響についての調査も行っています。調査を通じてデータガバナンスについて学術的に独立した権威として欧州や世界中の組織と連携して研究を行い、デジタル技術とイノベーション開発において求められるデータ保護の課題について取り組んでいきたいと考えています。

Kohei:ありがとうございます。アンドレアさんの活動は複数のステークホルダーが連携して、知識や経験を共有し、新しい価値を想像するために必要な活動であると思います。アンドレアさんのこれまでのご経験から、大手のテクノロジー企業とステークホルダーはどのように連携していくことが望ましいと思いますか?

既に大手テクノロジー企業の役割は、一企業としての役割を越えて社会インフラとしての役割も求められつつあると思います。

テクノロジー大手企業の責任とマルチステークホルダーの考え方が目指すところ

私の場合はビジネスでも、生活者としてもGoogleが提供するサービスの利用者なのですが、これからは検索に止まらず利用する場面はより一層増えていきそうな気がしています。これまで以上に激しい環境の中で、ステークホルダーの方々とどのように連携を進めていくことを計画しているのでしょうか?

Andrea:ありがとうございます。Googleは情報を整理し、私たちの生活をより良くするための革新的なプロダクトやサービスを利用者の方々へお届けしていくために、業界を牽引する企業として多くのステークホルダーの皆さんと連携する動きを進めていきたいと思っています。

図:マルチステークホルダーでの連携

連携先としては、公共機関からNGO等の組織、そして消費者団体や大学等の専門的な知識を有している方々とも連携を進めて、これからのデジタル空間全体で求められる知見や要素を整理していきたいと思っています。

私は複数のステークホルダーと連携したアプローチというのが、今後より重要になっていくと考えています。今後は、欧州全域のステークホルダーと連携しながら、プロジェクト推進を強化していきたいと考えています。

これまでに2つのケースを紹介してきましたが、これ以外にも私たちは世界中で様々な取り組みも進めています。先程紹介した目標に向けて革新的なプロダクトやサービス開発を進めていくとともに、現在の法規制に準拠したオンライン、オフラインで活用できる技術的なツールの導入も推進しています。

Kohei:なるほど。これからの活動にも期待が集まりますね。最後に視聴者の方に向けてメッセージをお願いできますか?

アンドレアさんのご経験はGoogleでの活動以外でも非常に参考になる点が多く、本日は技術分野だけでなく政府や大学連携等もお伺い致しました。そういった経験も含めて、メッセージを頂けると幸いです。

Andrea:私たちは知識を深めていくことが大切だと思います。生活者をエンパワーメントし、投資家やステークホルダーの方々とも連携しながら教育や規制への対応に取り組んでいます。

デジタルのエコシステムが発展していくとともに、異なる背景を持ったプレイヤー同士が連携して、お互いに学び合うことが必要です。お互いに学び合いながら、サービス提供者が開発する安全なツールを選択して、エコシステム全体を活性化させていきたいですね。

Kohei:素敵なメッセージをありがとうございます。今日はインタビューを通じて色々なお話しをお伺いすることができ非常に光栄でした。

アンドレアさんのこれまでの経験から色々と学べる示唆があり、これからは様々なステークホルダーの方々とも連携していきながらプライバシーが保護される安全な環境を作っていきたいですね。

改めて本日はお話し頂きありがとうございました。

Andrea:ありがとうございました。

Kohei:ありがとうございました。

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Interviewer, Translation and Edit 栗原宏平
Headline Image template author  山下夏姫

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