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スタートアップ大国インドの見据える新しい産業

※このインタビューは2022年9月7日に収録されました

インドでは新しいプライバシー保護に向けた動きが始まっています。

今回はインドの法律事務所の代表でスタートアップや海外投資をサポートするアナンドさんに、インドでのプライバシー保護に関する動きをお伺いしました。

Kohei: 皆さん。プライバシートークへお越し頂き有難う御座います。本日はインドからアナンド・クマーさんにお越し頂いております。今日も色々とお話しできることを楽しみにしています。

Anand: 宏平さん。有難う御座います。

Kohei: アナンドさんは法律の専門家で、今日はインドのプライバシーに関するお話をしていきたいと思います。早速アナンドさんのプロフィールを紹介したいと思います。

アナンドさんはインドのデリーにある法律事務所PierCounselでマネージングディレクターを務めていて、顧客向けの革新的なサービス支援を幅広く行っています。

PierCounselの活動は国際的に評価されており、アナンドさんはプライベートエクイティ、ベンチャー投資、M&Aから国際取引、知的財産や会社法まで幅広く携わられています。

これまで20年間クライアント事業に関わるとともに、学術分野ではインドの法科大学院に招待され、学生向けの活動も行っています。

スタートアップやIT、ソーシャルメディア、ゲーム、インターネットボット、AI、AR/VR、オンラインコマース、金融技術、デジタル技術、モバイルアプリを始めとしたサービス企業向けのメンターとして、戦略や成長のアドバイスを行っています。クライアントの戦略構築や新しいスタートアップビジネス展開支援を行っています。

Anand: 宏平さん。ご紹介頂き有難う御座います。今日はお話しできて光栄です。今日お話しさせて頂く内容は、インドだけでなく全世界に関係する内容だと思います。ぜひ気になった質問にお答えさせて頂きたいと思います。

Kohei: 有難う御座います。では早速始めのトピックに移っていきたいと思います。アナンドさんはこれまでにインドで法律関連のお仕事をされてきていると思います。なぜインドで法律事務所を立ち上げ、法律のお仕事をしようと思ったのでしょうか?

インドで新たに法律事務所を立ち上げた理由とは

Anand: 元々は大手の法律事務所で働いていて、いくつかのチームを率いながら大手クライアントの案件に携わっていました。その経験を経て、独立しようと思ったのです。

当時はインドで新しいテクノロジーに関する動きが活発化するタイミングでもあり、シリコンバレーで生まれたイノベーションやリスク思考等の起業家精神が育ってきた時期でした。

90年代は法規制の影響もあり、スタートアップのエコシステムが育ちづらい状況でした。そこから、テクノロジーのエコシステムが生まれ、新しいビジネス機会が誕生するようになりました。

スタートアップ等の小規模事業を新しくスタートする際に、法律家が担う役割はとても重要になります。ビジネスを成長させるためには、資金調達等を迅速に行うことも必要です。

当時は、小規模なスタートアップの要望に答えることができる法律事務所が少なかったこともあり、新しいテクノロジー領域での法的な支援が必要になると考えました。面白いことに、法律家はリスク回避を考える人が多いのです。

そのため資本力のある大手と異なり、新しいイノベーションに取り組む企業を支援する先が非常に限られていたこともあり、2006年に法律事務所を立ち上げることになりました。

立ち上げ時には、これまでに私が培った訴訟や企業法務の経験が生きる部分もありましたが、それ以外に新しい取り組みを支援できるスピードや正確性も求められるようになりました。

図:スタートアップに寄り添った法務支援の必要性

新しく事務所を立ち上げてから、起業家精神の育成や支援を行うことができるようになったことは、とても幸せでしたね。自ら事務所を立ち上げることは、経営に必要な要素を自ら見出し、取り組むということです。

ただ、事務所を立ち上げて見て面白いと感じたことがあります。それはクライアントの要求に対して、法律家としてだけでなく、ビジネスオーナーやリーダーとして関わる必要があるということです。”法務”と”ビジネス法”の間を上手く行き来することが必要であるということですね。

時間と共に、クライアントとの取引もより複雑になっていき、特にビジネス上での越境取引対応は重要なテーマになりました。そこから派生しコンピューターゲームやメディア、医療や金融テクノロジーサービス(モバイルウォレットやペイメントソリューション等)、ボットやAI自動化システムプラットフォームからSaaSまで、新しいジャンルのサービスが広く生まれてきています。

新しい動きを進めていくために、シリコンバレーの企業や市場の機会拡大を見据えてインドのテクノロジーに投資しているベンチャーファンドとも越境で取引を行っています。

初期のタイミングからしっかりと事前の計画を練って進めていくことがとても重要になります。私たちのチームは精力的にそういった活動を行っています。私たちの組織が180日間キャッシュフローが良好なのも、そういった背景があります。

私たちの事務所では単なる取引案件に関しては全てを引き受けることはありませんし、事務所のメンバーは案件に全力で関わります。それぞれが独立して素晴らしいメンバーとして活躍してくれています。

私たちが担当する領域は幅広く、取引に関する内容や投資家サイド等のスタートアップに関する対応も行っています。

ここまで紹介した活動は、私たちが2006年に事務所を立ち上げてから15年間で取り組んできたことです。私自身はPier Counselでの15年間を加えて、合計で23年間ほどこの法律領域で活動してきています。

Kohei: 素晴らしい実績ですね。スタートアップ企業にとっては、テクノロジーを理解する法律事務所からの支援は非常に有益だと思います。インドに展開している日本のスタートアップとも関係があると以前にお伺いしました。

事務所で取り扱っている業務に関して、もう少し詳しく教えていただけませんか?主に取り扱っている分野や、クライアント向けのサービス内容に関しても教えてもらえると嬉しいです。

Pier Councilが取り組む法的な支援領域

Anand: 先程少し紹介しましたが、FDI(海外直接投資)の観点からインドに投資したい外国投資家のクライアントに対してアドバイスを行っています。それ以外には、海外への直接投資のアドバイスも行っていて、インド国外への投資の支援を行っています。

インド国外への投資には、越境での取引も含まれることになります。サービス企業が抱える懸念点を解消するために、企業法務に加えて訴訟関連についても関わっています。

私たちが提供するサービスは企業のアドバイザリーだけでなく、取引訴訟や知的財産権に関連した法令対応も含まれます。加えて、積極的にアクセラレーター支援や国内のエンジェル投資にも関わっています。

実際のところは、複数のコーポレートベンチャーファンドにも関わっています。あと、オルタナティブ投資ファンド(AIF)も私たちの業務の一つです。私たちのサービスでは、クライアントへ包括的な支援を行っており、取引の際に必要な様々なドキュメント支援も行っています。

海外クライアントを含めた海外直接投資に関する取引が発生する場合は、クライアントが対策すべきインド国内の金融制度や他の規制へのコンプライアンス対応を支援しています。

これが私たちの活動における一つの側面です。先に話したように、私たちは知的財産に関する問題も取り扱っています。例えば、ドメインネームに関する問題があります。ドメインネームに関する紛争が発生した場合に、どのように知的財産権を保護すれば良いでしょうか。

私たちはこのような案件についても、クライアントの支援を行っています。加えて、同意書の作成や法的なオピニオン等の対応も行っています。私たちの事務所がテクノロジーを開発するのではなく、テクノロジーにまつわる周辺領域の支援を行っています。

ただ、私たちが業務を成功させるためには、テクノロジーに詳しい創業者と円滑にコミュニケーションする必要があるので、法律家であってもテクノロジーの知見を学ぶことが重要であると考えています。

図:法律家がテクノロジーの知見を理解することが必要な理由

日本企業のクライアントとも積極的に活動しています。日本企業と長年の付き合いがあるため、日本文化についても詳しくなりました。私が学んだことの一つに、日本人の期日に対する考え方があります。彼らは期日というと希望日時ではなく、厳密に設定した締切日であるということです。

日本のクライアントと仕事をする際には、計画にスケジュールを盛り込んでおくことが必要になります。10年近く付き合いがあると、より良好な関係性を構築することができるようになってきました。

スタートアップ大国インドの見据える新しい産業

Kohei: 素晴らしいですね。数年前にインドに渡航する機会があったのですが、非常に素晴らしい体験でした。多くの若者がテクノロジー開発に取り組み、今後の経済にも非常に期待が持てる地域だと思います。

国を越えた取引を推進していくことは、海外企業がインドへ進出する意味でも非常に重要なことであると思います。

Anand: はい。まさにそうだと思います。多くのグローバルスタートアップ企業がインドに進出し、スキルを持った若い世代の人たちのタレントプールになっています。

インドでは素晴らしい機会が次々に誕生していて、私たちの生活環境を改善していくアイデアが次々に生まれています。食や旅行、通勤等のサービスは私たちの世代がこれまでに思い付かなかった様々な切り口で課題解決に取り組んでいる有望な動きです。

今では、スマートフォンが当たり前になったこともあり、モバイルを中心としたビジネスが数多く見られるようになってきています。

インドでは現在7万2000のスタートアップがあり、100以上のスタートアップがユニコーンと呼ばれる規模で活躍しています。インターネットの世界はグローバルなので、オフシェア等のビジネスモデルはインドの一大産業として成長してきました。インド国内を軸にした産業育成によって、スタートアップエコシステムの構築にもつながっています。

Kohei: 素晴らしいですね。インドでビジネスを成功させるためにも、インドの事情を知ることが非常に重要だと思います。ここからは、インド国内のコンプライアンス事情について伺っていきたいと思います。アナンドさんは法律の専門家として、インド国内のデータ保護に関する活動も行っていると思います。

インド国内のプライバシー制度に関する話を伺ったのですが、インドではこれまでに議論されていた法案が、今回は棄却されたと伺いました。インド国内で行われているデータ保護と法制度について詳しく教えて頂けますか?

〈最後までご覧いただき、ありがとうございました。続きの中編は、次回お届けします。〉

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Interviewer, Translation and Edit 栗原宏平
Headline Image template author  山下夏姫

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