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民間企業と協力して消費者権利を考える新しい消費者団体の形

デジタル化が進んだ社会では、新たな消費者問題がデジタル空間で生まれるケースが増えてきています。

今回は消費者団体Euroconsumersで訴訟や学術部門を率いるマルコさんに、これからの消費者団体の在り方とデジタル関連法に関して、お伺いしていきたいと思います。

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Kohei:皆様。今回もプライバシートークにお越し頂きありがとうございます。本日はイタリアからマルコさんに参加いただいております。

本日はインタビューにお越し頂きありがとうございます。今日お話しできることを楽しみにしていました。

Marco:ご招待頂きありがとうございます。

Kohei:ありがとうございます。始めに、マルコさんの紹介をしたいと思います。

マルコ・シャルドネさんは弁護士であり、欧州大学ローマ校ではデジタルコンテンツとサービスに関する法律とマネジメントに関する授業の非常勤教授を務めています。

大学ではロースクールコース”人工知能・新技術の法律と倫理” の副コーディネーターを務めています。2018年にはイタリア政府から人工知能に関する専門家グループに任命され、2019年にはイタリアの著作権に関するアドバイザーに任命されています

現在はベルギーのTest-Aankoop / Test-Achats 、イタリアのAltroconsumo (Italy)、ポルトガルのDECOProteste (Portugal)、スペインのOCU (Spain)、ブラジルのProtests (Brazil)で構成される国際的な消費者団体グループのEuroconsumersで訴訟分野と学術分野のアウトリーチのトップを務めています。

改めまして、本日はお時間を頂きありがとうございます。

Marco:ありがとうございます。

テクノロジーによって変化する法律の役割

Kohei:ありがとうございます。早速本日のトピックに移っていきたいと思います。これまでにマルコさんの取り組みをお伺いさせて頂いて、Euroconsumersでの活動にもとても関心があります。

他の活動と合わせて、なぜ Euroconsumersに関わることになったのか経緯を教えて頂けますか?

Marco:勿論です。ありがとうございます。昔から法律と新しいテクノロジーが関連する分野に関心がありました。私が大学生だったころに、論文を見てくださっていたレナートボルッソ教授から、"テクノロジーによってこれまでの法体系が変わっていくようになるよ" と指導頂いていたことも私が関心を持つようになった理由の一つですね。

図:テクノロジーによって法体系が変化する

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テクノロジーが先に社会に広がり、その後、法律がテクノロジーの発展についてくるため、私たち法律の専門家は常に考え方を変えていくことが必要だと。そういった背景もあって、テクノロジーと法律が交わる分野にとても関心を持つようになり、学問としても面白いと感じたので取り組むことに決めました。

ここまでの話は私がEuroconsumersに関わり始めた理由につながっています。私がEuroconsumersでどう言った活動をしているかお話しする前に、Euroconsumersとは何をする組織なのかをお伝えしますね。

複数の団体が集まって生まれた消費者団体

Euroconsumersは4つの欧州加盟国と1つの南アメリカの消費者団体が集団で、欧州ではベルギー、スペイン、イタリア、ポルトガル、南アメリカからはブラジルの消費者団体が参画しています。

私たちは各国の150万人を代表した組織で、消費者団体としての活動だけでなく、出版事業も行っています。

私たちが発行する雑誌は誕生してから50年間、欧州4ヶ国で購読されプロダクトやサービスの検査に関する内容を紹介しています。Euroconsumersは消費者団体としての活動だけでなく、様々な取り組みを推進しています。

Kohei:ありがとうございます。マルコさんはEuroconsumersで複数のプロジェクトに関わっていると思うのですが、Euroconsumersで働くことになったきっかけは何ですか?

Marco:そうですね。2021年4月からEuroconsumersで訴訟と学術部門のアウトリーチのチームを率いているのですが、主に二つのプロジェクトに関わっています。

一つ目は従来からの消費者団体としての活動で、欧州国内の企業と消費者の間で問題が起きた際に、域内の複数の組織と協力して集団訴訟を行っています。

図:消費者を守るための集団訴訟

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具体例を挙げると、Appleが販売するデバイスの計画的陳腐化に対する集団訴訟を欧州で実施しています。Apple以外にはフォルクスワーゲンに対しての集団訴訟も行っています。過去にはFacebookに対してケンブリッジアナリティカのケースで集団訴訟も行い、昨年和解しました。

ここまでが従来からの消費者団体として行っている活動です。私たちはその活動に加えて、学術的な取り組みも行っています。

民間企業と協力して消費者権利を考える新しい消費者団体の形

大学や研究センター等と関係性を築くだけでなく、Consumer Empowerment Projectプロジェクトという独自のプロジェクトを民間企業と連携して運営し、消費者権利の考え方を普及するように務めています。

ご紹介した二つの活動を中心に行っています。時々、それぞれの活動が矛盾して見える時がありますが、私たちの組織では一つの企業に対抗するものではないことを念頭に置いて活動しています。

企業活動の問題点への指摘を行いますが、企業とは対話を行います。裁判所でも企業に対してではなく、消費者利益のために問題点の指摘を行っています。

Kohei:ありがとうございます。Euroconsumersの活動はとても革新的だと思います。消費者団体の中には、従来からの活動を継続して行っている団体もあると思います。

マルコさんがEuroconsumersで行っている活動に”My Data is Mine Award”があると思うのですが、Awardの詳しい内容を教えて頂けませんか?

Marco:わかりました。2017年にMy Data is Mine推進委員会が立ち上がり、My Data is Mine宣言が出されました。宣言の中で、新しい技術発展するためにデータ保護へどのように対応していくべきか目標を定めています。

ビジネスの創造性と同時に、都市や消費者の権利を考え新しい技術発展に寄与することが重要であると紹介しています。

(動画:Euroconsumers at Web Summit 2021 with My Data Is Mine Award)

新たな雇用を生み出し、先進的な経済発展につなげていくためにはデータが本質的な価値を持つので、経済的な価値と基本的な権利を前提に物事を検討することが必要であると考えています。

勿論、データ利用によって消費者保護に反してはいけないので、私たちは消費者や市民がデータ経済の中心になるために、必要な保護を求めています。

こういった背景をきっかけにMy Data is Mine宣言が誕生し、すでに5年が経ちました。2020年にはデータ保護研究を行う若い研究者を支援するために、アワードをスタートしています。

このアワードでは、欧州で最も有名なイベントの一つである “Web Summit” へ受賞者を招待しています。最も素晴らしい内容を提出してくださった若い研究者の方に、イベントへの招待機会を提供しています。

数週間前から、2022年のアワードに向けた公募を始めています。今年はMy Data is Mine宣言から5年経ち、新たな試みを実施する予定です。具体的には、学術会や研究者からも募った結果を取りまとめて、本を出版しようと考えています。今年はこれまでの歩みを形にするとても重要な年なので、宣言を新たに発展させることを考えています。

デバイスが発信するデータは一体誰のものかを考える

欧州で新しく議論が始まっている規制案にも検討すべきタイミングだと思っています。既にデータは私たちの日々の活動に密着しており、私のデータである "My data is Mine" というこれまでの考えから、私たちが日々利用するデバイスデータも私たちのものである "My Devices My in" のような考え方が広がっていくことも必要です。

図:デバイスが発信するデータは誰のものか

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私たちの個人データへと関心を向けるだけでなく、デバイスから発信されるデータを含めて、私たちの生活で生まれる新たな対象物にも目を向ける必要があると思います。

Kohei:そうですね。若い研究者や学生の人たちにAwardの門戸が開かれているのはとても素晴らしいと思います。”Web Summit” のような大規模なイベントに参加できる機会も素晴らしいと思いますし、私も内容に関心があります。

次に消費者団体活動の変化についてお伺いしたいと思います。この質問はプライバシーやデータ保護に関連した内容です。

現在、多くの消費者団体がデータ保護を推進する活動を始めていると思います。消費者自身もの個人データに対してより関心を持つようになってきていると思います。データ保護法が制定されてからは欧州域内で消費者団体の活動にどう言った変化が起きているのでしょうか?

〈最後までご覧いただき、ありがとうございました。続きの中編は、次回お届けします。〉

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Interviewer, Translation and Edit 栗原宏平
Headline Image template author  山下夏姫


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