【投資ノウハウ】節分天井・彼岸底って本当? 今年は買い場なの?
3月も下旬に差し掛かり、桜の便りももうそこまで来ています。
以前、米国の株式投資の格言に「Sell in May・・・」というものがあるという話をしましたが、日本の相場格言にも、いまの季節にぴったりの「節分天井・彼岸底」というものがあります。
今回は、この相場格言をはじめ、いくつかのアノマリーをみていきましょう。
節分天井・彼岸底とは?
まず、「節分天井・彼岸底」という相場格言の意味ですが、節分の近辺で相場が天井(高値)を付けて、その後、下落し、お彼岸のあたりで底(安値)を付けるというものです。
この格言が生まれた背景には諸説ありますが、一般的には、新年になり投資資金が市場に流入し新春相場が節分ごろまで続き、その後、3月の決算期に向けてポジションを調整する動きから売りが優勢になるためと言われています。
ただ、この格言、個人的には、以前からちょっと腑に落ちないところがありました。そこで、実際はどうなのかを検証してみたいと思います。
検証方法としては、過去25年の日経平均株価を使い、まずは節分の日の終値(休場の場合はその前営業日)と、彼岸の日として春分の日の前営業日の終値を比較してみようと思います。格言通りなら、節分の終値がお彼岸の終値より高い傾向がみられるはずです。
しかし、結果は、過去25年間のうち、節分の株価がお彼岸より高かったのは12回、お彼岸の株価が高かったのは13回となりました。ほぼ互角ということで、この格言は現在ではあまり有効ではないようです。
この格言が有効でなくなった要因の一つとして考えられるのは、日本株が米国株の影響を以前より強く受けるようになったことです。米国株は、11月から翌年4月にかけて上昇する傾向が強く、日本株もこれに追随することが多いです。
また、年度末相場の特徴を書いた際にも述べましたが、日本企業は3月決算が多く、配当金や株主優待の権利を得ることができる権利付き最終取引日に向けて買いが入る傾向があります。このため、昨今は、3月も買いが入りやすくなっていると推測できます。事実、2000年以降の3月の月足をみると、陽線が12本、陰線が10本となっています。
では、なぜ「節分天井・彼岸底」という相場格言が生まれたのでしょうか。私がこの世界に入った当時、大先輩の方から聞いた話なのですが、この格言はもともと米相場から発しているそうです。
また、ここで言っている「彼岸」とは春ではなく、もともとは秋の彼岸を意味していると仰っていました。秋の彼岸だとするなら秋分の日、9月23日ころになります。お米の収穫期です。新米が取れて、需給が緩み、相場が底を付けるということなら、腑に落ちます。
寅、千里を走る
「節分天井・彼岸底」は、いまの株式相場にはあまり整合していないようなので、次に、十二支を使った相場格言をみてみたいと思います。
今年は寅年ですが、相場の世界では、「寅、千里を走る」という格言があります。この格言は、寅の強さを示す「(寅は)千里を行き、千里を無事帰る」という中国の故事からきています。
相場も強くなりそうなイメージですが、ポイントは、「行き」と「帰る」。要するに「往って来い」です。つまり、相場は動きますが、終わってみればもとの位置に戻っているということです。
下の表は日経平均株価の1950年から2021年までの干支ごとの年間陰陽と騰落率です。
これをみると、寅年は過去6回で1勝5敗と十二支の中でもっとも勝率が低い干支になります。
また、過去の寅年の出来事を調べてみると、1950年に朝鮮動乱、1962年にキューバ危機、1974年はウォーターゲート事件、田中角栄首相の辞職、1986年に米国リビア空爆、チェルノブイリ原子力発電所事故、1998年にロシア金融危機、2010年に尖閣諸島中国漁船衝突事件などが起きています。今年の状況と類似する点もあり、気になるところです。
ただ、十二支の相場格言を来年、再来年に進めていくと、「卯(う)跳ねる、辰巳天井」となっています。これは、卯年は相場が上昇し、辰年、巳年に相場が天井を付けるという意味です。
1950年以降の卯、辰、巳の各干支の陰陽はすべて4勝2敗、過去6回の年間騰落率は、16.4%、28.0%、13.4%と高い上昇率を示しています。十二支の相場格言は比較的当たっていると言えそうです。
これを元に長期で投資戦略を捉えるなら、今年、相場が崩れるようなことがあれば、そこは買い場となり、来年の卯年から2025年の巳年に向けて、今年の買いが報われる時がくるということになります。
干支は12年に一回しか同じにならないので、サンプル数が少ないのが気になりますが、相場の基本が「安く買って、高く売る」であることを考えると、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げなどから、相場が大きく崩れた時こそ、買い場なのかもしれませんね。
記事作成:2022年3月16日
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ライター:佐藤 隆司(プロフィールはこちら)
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