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音の旬

5/13(木)
一日中雨が降っていた。
私の家は中学校(母校)の目の前にあって、毎日学校のチャイムや部活の音を聞きながら生活をしている。学校の近くに住んだことのない人はご存じないだろうが、実は中学の音には”旬”がある。

4~5月はラジオ体操の旬である。5月か10月は行進曲の旬(年によって時期が違う)、秋になるとルパン三世とLove so sweetの旬。ウチから観測できるのは主にこの3つの旬である。
まずラジオ体操の旬だが、この中学では一年の一学期の期末試験で、体育科目はラジオ体操の問題が出る。そのため入学したらまず体育の授業でラジオ体操をやりまくるのである。4月~5月は一時間の授業で2~3回は流れる。期末試験が終わると徐々に一年生も上級生と同様、体育係の「いーちにーさーんし」の手抜き準備運動に移行していくため、ラジオ体操の音は4~5月が旬となる。
5月か10月は体育祭の時期である。母校の体育祭は吹奏楽部の演奏するオリジナル行進曲に合わせて全校生徒が行進をする伝統がある。この曲は校歌をアレンジしていてなかなかかっこいい。体育祭の一ヶ月程前になるとどの学年も体育の時間にラジカセでこの曲をかけながら行進の練習をし始めるため、ラジオ体操の時よりも頻繁に聞こえてくるようになる。しかも放課後は吹奏楽部がマーチングバンドの練習をするため、本当に朝から夕方まで聞こえてくるのである。この行進曲の旬は期間としては一ヶ月ほどと短いが、聞こえてくる回数はどの旬よりも多い。
そして秋から冬にかけては、吹奏楽部が放課後練習で見事な演奏をするようになってくる。やはり新入生が入ったばかりの春~夏は音階を奏でるだけの基礎練習が多い印象だが、秋~冬になるとかなり上達し、壮大な曲を演奏するまで成長している。そして何故かこの中学の吹奏楽部は毎年ルパン三世のテーマと嵐のLove so sweetを練習している。多分他にも色々演奏しているとは思うのだが、何故か私の耳にはずっとその二曲が聞こえてくるのだ。その時期になると、私も母も無意識にその二曲を口ずさんでしまう。
そしてまた春になるとラジオ体操が聞こえ始める。1年の経過は早い。

今日はそんなことをぼんやりと考えていた。
なんでそんなことを考えていたかと言うと、雨の日って上履きがキュッキュって鳴ってたな、でももう一生上履きを履くことってないんだな、と雨を見て中学時代に思いを馳せていたからである。
全然眠くないのに机に伏していた中学時代に戻りたい、「園芸部の部長ってなんだよ、いらねえだろ」と小馬鹿にしていたあの頃に、夏に友達と外の水道で水浴びをしてびちょびちょのまま数学の授業を受けたあの頃に、吹奏楽部だけ「ゴールド金賞」という謎の表彰をされていたあの頃に、自分が見たいからという理由で勝手に友達の机に学食の献立を貼ったらみんなが見るようになったあの頃に、剣道部の副部長だったのに練習をしたくなさすぎて床にすわりこんで駄々をこねていたあの頃に、何故か肩にタオルをかけて生活するのが流行っていたあの頃に、戻りたい。


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