辞めることになったジョナサン・アイブの物語とAppleのこれから。

面白かった!今更、Appleとかジョブズとか、アイブとかなに喜んでいるんだと言われそうですが、Apple好きの性なんでしょうかね。ほんとおもしろかった。

はじめの方のジョナサンアイブの生い立ちやら、家庭環境やら、才能あふれる学生時代の話は、ちょっとつまらなかった。

彼の話だからこんなもんだろうとだらだら読んでいた。そしたら、Appleにジョブズが現れて、俄然面白くなった。それから止まらず一気に読んでしまいました。

ジョブズに率いられたAppleは、企業としてはかなり癖のある異端企業。自分の気に入った人間を徹底的に優遇して、社内の人間関係や経営から隔離し、仕事に完全に集中させるのですから。

それに、有名な完全秘密主義の徹底ぶり。隣の人が何をやっているかもわからないように管理しています。それどころか、同じ製品をそれぞれの方向で作らせ、激しい競争関係を作り競わせていたのですから。

凡庸な経営者なら、あちらこちらで不満が爆発して、完全に空中分解する組織作り。

ただし、こんな話だけなら、やっぱり凄いのはスティーブジョブズとなってしまいますが、これは、ジョナサンアイブとそのデザインチームの話。支柱として重石としてジョブズが居たAppleの中で、飛躍的で革新的な、それどころか、革命的な製品を作り出した物語です。

ジョブズが居なかったら、アイブが居なかったら、革命が起きなかった、それが分かる物語。

Apple製品の出現と、その後の世の中の変化を、リアルタイムで体験し興奮した。ことを、読み進むにつれて思い出します。カラフルでキュートなiMac、くるくる廻る操作ホイールに魅了されたiPod、シルバーに輝く圧倒的な美しさで物欲が抑えきれなかったMacBook Pro。

そして、iPhone。正直慧眼が無いせいか大したことはないなあと思っていましたが。僕の美意識の欠如を実感させてくれる成功を収めました。

アイブが語っていますこの本の中で。利益や経営は全く興味がない。素晴らしい製品を作ることだけしか考えていない。と。

事実、膨大なテストを行い。膨大な試作品を作る。試作品を作る企業が心配するほど。ボタン一つをあらゆるパターンで考え、取り付け箇所、形、色を幾度もテストしたのです。

単純に外形デザインではなく、シンプルで機能的、その結果美しい製品を作り上げるために、素材から研究して、世界中のパーツメーカーを探し回り、採算を度外視し、時間を浪費して製品開発に打ち込んだ。

少し残念なのが、台湾や中国のメーカーのことはよく出てきますが、日本メーカーの名はあまり出てきませんでした。Appleの考えられない無理な要求に台湾や中国のメーカーは、まず、「出来ます」と答えAppleの信頼を勝ち取りました。

ジョブズが絶妙なバランスでAppleを保ち、アイブに権力と資産を徹底して投入し、集中して、宇宙をひっくり返すほどの革命的な製品を作ることのできる環境を与え。それに、見事に応えた。成功の物語です。Apple製品で僕たちは体感しています。

はじめにも書きましたが、普通の大企業では、こんな組織作りは出来ないでしょうね。

もっと、効率よく効果的に資源を分散し、人事も各部署が平坦になるように調整していくはず。企業を安定して存続するのなら、それが一番無難です。それに、経営者も全体を導くなんて大それたことをいちいち考えなくていい。

この本、出版されたのがジョブズが亡くなってすぐ後。本の中に何度かアイブがいる限りジョブズの精神、最高の製品を作る思考は消えない。これからも、アイブを中心に成長していくと書かれていました。

今回、ジョナサンアイブが正式にAppleから退社することになりました。

この本は、ジョブズとアイブが築いた一つの時代の物語。これからの物語が新たに始まります。彼らが築いたものを育むのか、別の方向に進むのか。

いたいどうなるのでしょうね?

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