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【絵本日記】みんちゃんとお名前のしらないあの子

ある朝起きると、隣の木であたらしい
ともだちが鳴いていた。

ツクツクボーシ
ツクツクボーシ

みんちゃんは、勇気を出して声をかけてみた。

「おはよう」

ともだちはしばらく鳴きやんだ。
すると

「おはよう!」

と言った。

「きみ、お名前は?」

みんちゃんはもっともっと知りたくて、聞いた。
でもともだちは、「ひみつ」と言った。

ともだちは、朝起きるとかならず横の木にいて、
お昼になるとどこかに飛んでいってしまった。
どうやら、すごく素敵な木が他にあるらしい。

みんちゃんは、知らない場所に行くのは
こわいから、木からは決してはなれない。

毎朝みんちゃんは「おはよう!お名前は?」
と、聞いた。
そのたびにともだちは
「ひみつ」
と言って飛んでいってしまう。

4日経った頃、
みんちゃんはじれったくなって聞いた。

「どうしてお名前を教えてくれないの?」

ともだちは言った。

「だってお名前をしったら悲しくなるから」
「お名前をしらないと悲しくないの?」
「そうだよ。だって、しらないままだもの」

6日経った頃、みんちゃんは
ともだちの声が少しだけ小さくなっていることに
気がついた。
その日は、ともだちはどこにも行かず、
その木で静かに鳴いていた。

「おはよう!」
「……おはよう」
「元気がないの?」
「うん。……今日の夕方ここを出ていくよ」
「突然だね」
「うん。その方が悲しくない」
「そっか」
「……きみのお名前教えて」
「みんちゃんだよ」
「かわいいお名前だね」

7日経った頃、朝起きると
ともだちがどこにもいなかった。

「おはよう!」

呼びかけても、どこにもいない。

ツクツクボーシ
ツクツクボーシ

どこにもいない。

ツクツクボーシ
ツクツクボーシ

みんちゃんは、涙があふれてきた。

ツクツクボーシ
ツクツクボーシ

「嘘つき」

ツクツクボーシ
ツクツクボーシ

「お名前をしらなくたって、
こんなに胸がキューってなるじゃないか」

ツクツクボーシ
ツクツクボーシ

「お名前教えたのに。呼んでくれないの?」

ツクツクボーシ
ツクツクボーシ
ツクツクボーシ
ツクツクボーシ

空は秋模様になりつつある。
みんちゃんはそんな空を見上げて言った。

「早く夏がおわればいいのになぁ」


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