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【絵本日記】280文字の郵便屋さん

ある森に、一羽のまっしろなハトさんがいた。
そのハトさんは、郵便屋さんだった。
世界中の空をとびまわり、たくさんの小さな小さなお手紙をとどけるのが、お仕事。

「郵便だよ。クルック〜」
「ありがとう。素敵なお手紙だぁ」

「郵便だよ。クルック〜」
「だれから?」
「なまえのない、世界中のみんなから」
「わぁ!うれしいなぁ」

みんな、みんな、うれしそうに、お手紙をキュッとだきしめた。
でも、時に悲しそうに、泣きだしながら、お手紙をやぶりすてられちゃうこともあった。

「郵便だよ。クルック〜」
「ふざけんな!!なんなんだ!これは!
  こんな手紙、やりかえしてやる!」

やぶりすてられ、傷つくことばのお手紙をとどけるたび、ハトさんのつばさもボロボロにきずついていく。

「クルック……。もうお手紙とどけたくないよ」

ハトさんは、ある日かなしくて、かなしくて、お部屋にとじこもってしまった。
世界中のお手紙がとまった。

「お手紙がとどけられないよー!」
「お礼がいいたいのにー!」
「すてきな景色をみたのに、わかちあえないなんて!」

お手紙がとどかないじかんに、だいこんらん。

トントン。

いっぴきのフクロウさんが杖をつきながら、ハトさんのお家にやってきた。

「ハトさん、どうしたんだい?」
「ボク、お手紙いやになっちゃった」
「そうかそうか。まぁ、ワシも昔はそんなことがあったなぁ。とどけたくないなら、無理してとどける、ひつようもないさ」

ふと、フクロウさんのかたてに、ちいさなお手紙がにぎられているのに、気がついた。


「フクロウさん。それ、どうしたの?」
「これから、孫にお手紙をとどけるんだよ。
  今日、たんじょうびなんだ」
「そうなの!おめでとう!!
 でも、杖ついて行くのたいへんじゃなぁい?」
「まぁ、ゆっくり、ゆっくり行くさ」

ハトさんは、しばらく考え言った。

「じゃぁ、ボクが代わりにとどけてあげる!」
「そりゃぁ、ありがたいけど……。
 でも、おまえさん、いいのかい?」
「だいすきなフクロウさんのためだもの。
 いいよ!」

ハトはフクロウさんのお手紙をくちばしにくわえ、とびたった。
しばらく行くと、フクロウのあかちゃんが、
今か今かと空をみあげているのが、みえた。

「おまたせ!クルック〜」
「わぁい!おじいちゃんからのお手紙だ!」
「どうぞ」
「ありがとう!ありがとう!ありがとう!」

あかちゃんは、うれしそうに、お手紙をギューっとだきしめた。
強くだきしめすぎたお手紙は、くしゃくしゃ。
それでも、あかちゃんはニコニコとほほをお手紙にすりよせる。

ハトさんは、その姿をみて、なんだか心があったかくなり、おもわず涙がこぼれた。
あかちゃんをギュッとだきしめ言った。

「ボク、おしごとにもどるね。ありがとう」
「ハトさんのこと、みんなまってるよ」
「クルック〜!」

ハトさんは、空にたかくたかくとびたった。

「おまたせ!クルック〜」
「郵便だよ。クルック〜」

「わぁ。よかった!」
「ありがとう」
「たすかるよ!」

世界中のみんなが、笑顔にもどった。
きょうも、ハトさんはたかい空をとびまわってる。


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