【#13】エースと呼ばれる人は何をしているのか
この本を読もうと思ったきっかけ -懐かしの古書店街にて-
2020年10月の半ば、僕は教員免許書類のやり取りのために卒業以来の大学へ行った。今回の本はそこで見つけた本だ。
高田馬場駅から早稲田大学までの大通り、「早稲田通り」は道の両側に古書店が並ぶ。大学時代には歴史を専攻していたこともあり、翌古本屋によっては色々な本を買っていた。
今回もそこで目に留まった本を7冊ほど買って帰ってきたのだが、そのうちの一つが夏まゆみ『エースと呼ばれる人は何をしているのか』だ。
今いる会社で「エース」と呼ばれる存在になりたくて、相模原ボーイズにとっての「エース」になりたくて、「エース」という言葉の響きが何だかカッコよくて手に取った本だ。
また、本の帯には「AKB48やモーニング娘の育て親」と書かれている。教室という狭い空間ではあれど、人に見られる職業につくものとして、アイドルから学ぶべきものは多いだろうと思っていた僕は、自然と本を手に取り支払いを済ませていた。
「エース」と「センター」は違う
野球をやっている人なら「ん?」となる表現だが、これはアイドルグループの話だ。AKBのエースと言えば、やはり「あっちゃん」こと前田敦子だろうか。そして不動のセンターもやはり前田敦子だという認識がある。
しかし、センターは文字通り、ステージ上の真ん中の立ち位置、そしてそこに立つ選ばれた人のことだ。AKBでは一時話題になった総選挙でその座が決まっていた。
ただ、エースというのはポジションのことではない。生き方のようなものだ。本の言葉を借りると、エースとは「①自己を確立し、②自信をもって、③前にすすむ」ことのできる人だ。
ではここから、本の中で心に残った部分を上の三つに分けながら紹介しようと思う。
自己確立
群れない時間を作る
エースと呼ばれる人の特徴として、一人の時間を作っているというのが共通点だという。前田敦子はダンスレッスンの休憩時間に、周りの子がおしゃべりをして過ごす中、一人座って黙っている時間があったという。
その時間で自分を見つめ直し、やるべきことを整理することができていたからこそ、あそこまで成長したのではないかと著者の夏先生は述べている。
チームワークももちろん大事だが、本当に強い集団は強い「個」の集まりだ。ただ、それぞれが点でバラバラでよいということではない。チームである以上、目的は必ず共有しているはずなのだ。
アイドルグループであれば、客を喜ばせるという目的は一致している。そのために協力することが必要なのであれば、団結することができる。
仲間とはなれ合う存在ではなく、同じ目的に向かって切磋琢磨できる存在なのだろう。また何かに全力で取り組むときに、指導者の目を気にするのはもってのほかだが、仲間からの評価を気にしてしまうのももっと良くない。
集団でいるということは、目的達成のために集団の方が良いということであって、そこに人が集まっているのは何らかの意味がある。決して一人で生きている方がよいということではないが、一匹狼的な側面も必要だということだろう。
嫌なことがあったら Why で置き換える
何か嫌なことがあったら「なぜ?」と問うてみる。できれば三回繰り返してみる。就職活動の自己分析と同じだ。
そのとき、自分に対する質問の作り方も大事になる。
例えば、トイレ掃除を命じられたとする。
「なんでトイレ掃除をしなければいけないのだろう?」
「なんでトイレ掃除をするのだろう?」
同じように自分になぜを問いかけているが、始めからネガティブに「なぜ」を考えるのと、隠されたポジティブを見つけようとして「なぜ」を考えるのとでは、その後の成長度合いが全く違う。
なぜを考えるということは少なからず、対象に興味を持つということだ。必ず、現状よりは状況は良くなる。
良いプライドと悪いプライド
良いプライドは自分を美しく、悪いプライドは自分を醜くする。
エースと呼ばれる人の持つ良いプライドとは、自分に対する期待とそこに対する責任。そして、描く理想の自分像と現状との間にある茫漠たるギャップに対する危機感の言い換えだ。
対して、悪いプライドとは自分を守るためのプライドのことだ。
○自分に対しての批判に耳を傾けられるか
○今より成長するための努力をしているか
○成長できなければ先はないという危機感を持っているか
この三つに一つでも「NO」が付いた人は要注意だそうだ。是非参考までに。自戒を込めて。
使命感を持つ
夢を持つのは、とてもいいことだ。だが、夢を持つこと以上に意志を強くしてくれるのが使命感だ。
自分がやっていることは社会にとって必要だ。
誰かに必要なことをやっている。
こういった実感が使命感だ。そう考えると自分は確固として使命感は持っていないかも知れない。もっと深堀りして自分を見つめて、使命感を見つけたい。
自信創出
スキルで内面も磨かれる
ある社長の話で、その人は人前で話すのが下手だった。スピーチ力不足を改善するために、徹底的に話すスピードや視線などのスキル面を磨いたという。
すると、普段の立ち振る舞いまで社長という立派な肩書にふさわしいものになったそうだ。おそらくスキルアップが自信につながったのだろう。
これは、自分にあてはめてみても同じことが何度となくあった。たいていのことはスキルでなんとかなる。センスは生まれ持ったものだが、スキルは努力次第でなんとかなる。ならば徹底的にスキルに向き合おう。
不言実行
有言実行ではないのか?実はエースと呼ばれるには不言実行の側面も必要なのだ。もちろん夢や達成したいことは有言実行で、どんどん発言した方が良い。その方が自分にプレッシャーもかかる。
だが、その過程で「自分がこれだけ努力している」というのを口にするのは格好悪い。エースと呼ばれる人たちはそんなことはしない。
じぶんが取り組んだこと、その事実が確実に自分の力になることは間違いない。だが、そのことを周りに言うのは少し違う。
ちなみに僕は会社やチームで言わない代わりに不特定多数相手のSNSで頑張ってるアピールのようなことはします。誰かに見てもらっている感覚がないとダメなんです…
前進する
人のふり見て我が振り学べ
人の振り見て我が振り直せだとなんだか上からに聞こえる。我が振りを他人から全力で学びに行くのだ。盗むと言ってもいいかもしれない。
仕事をしていても、普通に生活していても、娯楽をしていても、誰かを見る機会は常にある。四六時中自分の成長につなげようと思って過ごしていると窮屈になってしまうが、人を見るときに何か学べることはないかと思いながら見ることは大切だ。
誰かをぼーっと見る時間が多いという人は意識してみると良いかも知れない。
全ての原因は自分にある
誰かと何かで揉めた。うまくいかない。
そんな時に考えなければならないのは、原因はすべて自分にあるということ。誰かのせいにするのは楽だ。環境のせいにするのは楽だ。できることなら自分は悪くないと思いたい。
だが、本当に前に進みたかったらすべての原因を自分の元に戻して努力することだ。
まとめ
たまたまであったこの本だが、始めから終わりまですべてが学びになる内容だった。「エース」とは生き方、資格なので立ち位置は関係ない。
自己を確立して、自信をもって、前にすすめる人はみんなエースなのだ。今回は少しでも成長したい自分のために、アイドルグループのオーディションを受けに来た少女のようなチャレンジャーの気持ちでこの本を読んだ。
今度は、そんな10代をプロに育てる夏まゆみ先生から指導者として必要なことを学ぶべく、違う視点から読み直してみたい本だと思った。
著者について
夏まゆみ
ダンスプロデューサー/指導者。
1962年神奈川県生まれ。1980年渡英以降、南米、北米、欧州、アジア、ミクロネシア諸国を訪れオールジャンルのダンスを学ぶ。1993年には日本人で初めてソロダンサーとしてニューヨークのアポロ・シアターに出演し、絶賛を浴びる。1998年、冬季長野オリンピック閉会式で老若男女数万人が一度に踊るための振り付けを考案・指揮する。NHK紅白歌合戦では17年以上ステージングを継続。吉本印天然素材、ジャニーズ、モーニング娘。、宝塚歌劇団、AKB48、マッスルミュージカル等、団体から個人にいたるまで、手がけたアーティストは300組におよぶコリオグラフィの第一人者。独自の教育法による人材育成、ならびに飛躍に導くその手腕から、近年、「ヒトが本来持つ道徳観に基づいた人間力向上」の指導者としても注目を集めている。
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