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小豆餅80's - 何かに助けられた話(実話怪談)

その日私は藤枝のおばあちゃん家に家族で遊びに来ていた。多分小学校6年生くらいだったと思う。中学生も見え始めた頃なので、親族の団欒にも飽き始めていたのだろう。私は旅行中にも関わらず一人で家を飛び出して、近所を散歩していた。

藤枝の葵という場所だったが、そこに川がある。川といっても浅く、ドブ川に毛が生えたような川だ。川の水は道路から10メートルは下にある。コンクリートで作られたような、目黒川とか、そんな感じの川であった。

一人で歩いていた私は、何故かはわからないが、川のヘリに立ち、しばらく川の底を眺めたあと、川を背に立って、ヘリから落ちる自分を想像していた。そしてそのうち、目を瞑ったまま、立って体を斜めにしていく、手をクルクルと回して、「川に落ちそうになるゴッコ」を始めた。一体私は何をしていたのだろうと、今になっては不思議な気持ちになる。まさか自殺しようとしていたわけでは無いと思う。

何回か落ちそうになった後、事件は起こる。バランスを崩した私は、完全に頭から落ちていくまで、自分を斜めにしてしまったのである。川に落ちていく瞬間、スローモーションになったのを覚えている。倒れていって、頭が地面と同じくらいの高さまで行ってしまったその時、急にフワッと体が浮いたような感覚に囚われた。パッと目を開けると、私は川のヘリに尻餅をついて座っていた。

わたしはご先祖様の霊に助けられた、そんな気持ちが湧いてきた。とても変な気持ちになり、おばあちゃんの家に戻り、仏壇に座って線香をあげた。親戚の誰にもその事は言わずにいた。あれは一体なんだったのだろう。

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